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亜無亜危異@新宿LOFT

2024年3月24日(日)

新宿LOFTで、亜無亜危異「活動禁止GIG」。

昨年、活動休止がSNSで発表されたときは激しくショックを受けた。2018年の不完全復活から約6年。還暦を過ぎても少しもパワーの落ちるのことのなかった……それどころかさらにアンサンブルが強化された印象すらあった亜無亜危異は、少しくらい休むことはあったとしても、この先ずっとバンドであり続けるのだろうと信じて疑わなかったからだ。

「活動禁止」とつけて亜無亜危異の活動を終える、その理由は発表されていない。僕は知らない。とにかくその事実だけがそこにあり、そして最後のライブの日がきてしまった。

新宿LOFT。バンドはそこを最後のライブの舞台に選んだ。ライブの後半、茂さんが、まだLOFTが新宿西口の小滝橋通りにあった当時、アナーキーとARBとルースターズが動員記録を争っていたと振り返り、また小滝橋通りのLOFTでマリが事件を犯したこともあったけど、そのLOFTでこのライブをやれているのだからマリも喜んでいるはずだと話していて、そんなふうに彼らの歴史とは切っても切り離せない場所だから、そこが選ばれたのだろう。

当然のようにチケットは完売で、会場満杯。もちろん地方からも親衛隊の方々がたくさん来られていたようだった。

「馬鹿とハサミは使いYO!」で始まったこのライブは、本編25曲、アンコール3曲と再アンコール1曲を合わせて計29曲が演奏された。いや、途中でサンハウス/シナロケの「ビールスカプセル」も1番だけ演奏されたので、それを含めると計30曲。数年前のリキッドルームで28曲演奏されたことがあったが、それよりも多い(とはいえ、短い曲が多いので、それでも2時間を超えてないのだけど)。因みに「ビールスカプセル」は伸一さんがそのリフをアドリブで弾き出したのだが、茂さんもそれに合わせてしっかり歌い、そして療養中の菊さんに早くよくなってくれとエールを送ったのだった。

セトリ的には、初期曲はもちろんだが、不完全復活以降の作品『パンクロックの奴隷』と『パンク修理』からもけっこう多く選曲されていた。パンクロックから粘りのあるブルーズロックへと移行した時期の「今昔物語」も選ばれていた。さすがにTHE ROCK BAND期の曲やデジロックをやっていた時代の曲はなかったが、初期と不完全復活以降の曲を合わせただけではない、いつもよりも幅のあるセトリになっていた。故にラストでありながら、特に中盤あたりは流れの新鮮さもあった。

「”530”」は、この曲が演奏されたこれまでのライブのなかで、もっとも重みをもって響いてきた。オレたち、精いっぱい、突っ走ってきたけど、たぶんこれからもずっと、走っていくのさ。オレたち、いろんなものに突っ張ってきたけど、たぶんこれからもずっと 突っ張っていくのさ。2ndアルバムにこの曲が入った当時、僕はこんなことをバラードに乗せて歌うのはまだ早すぎるだろと思ったんだが、歌というのは時が経てば響き方が変わるもの。まるでこのラストライブで歌われるべく書かれたんじゃないかと、そんなはずはないのにそんなふうにも思えてしまって、めちゃくちゃグッときた。

その次の「平和の裏側」は、これはマリさんが書いたからだろう、茂さんはマリさんの着ていたナッパ服を抱きしめてそれを歌った。この日・3月24日はマリさんの誕生日でもあった。

また2度目のアンコール(そもそもこのバンドがアンコールに2度応えること自体が珍しい…というかかつてないことだったんじゃないか)では、茂さんがケーキを持ち、ロウソクの火を観客に吹き消させながら「ハッピーバースデイ、マリ!」と叫んで、そこから最後の「心の銃」が演奏された。そこでもう、ブワッと涙が溢れ出てきてしまった。まさか亜無亜危異のライブを観ながら泣くときがくるとは思わなかった。

ライブが終わっても、すぐにはその場を去ることができなかった。そこに集まったみんながそうで、ずいぶん長い間みんながその場に残っていたし、放心状態になっている人もいたし、号泣している人もいた。そりゃあどうしたってそうなる……けれども、バンドはと言えば感傷的なムードをこれっぽっちもライブに持ち込まなかった。それが美意識であり、それが最高にかっこよかった。

演奏の強度、ヴォーカルの強度、曲の並び、終わり方……。なにもかもが素晴らしくてかっこよくて、さびしいとか言ってちゃダメなんだと思った。亜無亜危異のライブを観ることが、亜無亜危異が活動しているということが、どれだけ自分の力になっていたか。本当に計り知れない。

最高の上の上の上の上の上を行くライブだった。好きでいてよかった。ありがとうありがとうありがとうと何度も心のなかでつぶやいた。青臭いなんて考えずにこう締めるよ。心の銃を使って、戦っていくのさ。これからもずっと。


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