なにわブルースフェスティバル2019「石田長生展2019 SONGS OF Ishiyan」@なんばHatch

画像1

2019年9月14日(土)

大坂・なんばHatchで、なつかしい×あたらしい なにわブルースフェスティバル2019「石田長生展2019 SONGS OF Ishiyan」。

2016年に始まった「なにわブルースフェスティバル」も今年で4回目。今年は2日間ともチケットが早々に完売し、追加で出た立見席もあっという間に売り切れたそうだ。

ずっと気になっていたフェスだったのだが、自分が観るのは今回が初めて。結論から書くと、それはもう実に素晴らしい内容で、大阪まで観に来てよかった、大阪で観ることができてよかったと、心底思った。

過去3回との大きな違いは、この日は明確なテーマが設けられての開催だったこと。それは「石田長生展2019 SONGS OF Ishiyan」というタイトルが示す通り、石やんこと石田長生の楽曲のよさを出演者と観客みんなで共有するというものだ。よって(幕間担当以外の)出演者はみな、少なくとも1曲は石やんの作った曲を歌った。つまり、不在でありながらもみんなが初めから終わりまでずっと石やんのこと(ソングライター/コンポーザーとしての才能と人柄)を思ったり感じたりしないではいられないイベントであり、その意味で一貫性があった。それがよかった。17時開演で、終わったのは22時近く。5時間の長丁場ではあったが、ダレる時間が少しもなかったのは、そのためだ。

また基本的には1アーティストにつき3曲ずつくらいで進んでいったのだが、歌い慣れている自身の曲だけじゃなく先述した通り必ず石やんの曲を1曲は歌うという決め事があったゆえ、みんな楽しみながらもほどよい緊張感というか、ある種ピリっとしたところが演奏にあったようにも感じられた。「楽屋は同窓会状態」とチャボが言っていたように、それぞれに縦や横の繋がりのある(“仲間“と呼べる関係にある)アーティストたちだが、だからといって酔っ払った状態で出てくるひとはおらず、悪い意味で慣れ合った感じを見せるひともおらず、それぞれが集中し、非常に思いのこもった歌と演奏を聴かせていた。ただでさえすごいアーティストたちが集中して気持ちをここまで込めてやると、こんなにもすごい。改めてそう思わされたイベントだった。

そこに悲しみのトーンは、ほとんどなかった。基本的には出演者みんなの笑顔が満ち溢れていた。笑ってしまった場面もたくさんあった。けれどもチャボだけはやはりチャボらしくそこで石やんとの思い出を語り、「石やんと最後に一緒にプレイさせてもらったのは4年前、ちょうどこのイベントが始まった年の1月だったね。今日、ここに一番いるべき男なんだ、石やんは。そう思わない?   なんで石やんがここにいないんだって…」。清志郎の「ロックン・ロール・ショー」でもそうだったが、こんなふうに本当は誰もが思ってることを真っすぐ言葉にするのがチャボであり、そのときばかりはやっぱりどうしたって哀しい・さびしいといった気持ちが一瞬きてしまうのだった。

出演は順に、ヨモギ→リクオとウルフルケイスケ(3曲目にヨモギとCharが参加)→大西ユカリと三宅伸治(3曲目にヨモギが参加)→三宅伸治と山岸潤史→ナオユキ(幕間)→大塚まさじと竹田一彦→桑名晴子とChar→泥沼恵美子こと桜川春子と八戸ノ里和夫こと安藤八主博と山口しんじ(幕間)→木村充揮→金子マリと三宅伸治→有山じゅんじとUnity Jey(ギターで山口しんじ、ドラムで正木五郎が参加)→仲井戸麗市(2曲目・3曲目は有山じゅんじと。4曲目はリクオも参加)→ナオユキ(幕間)→Char(ドラムは正木五郎)。アンコールは出演者全員。

また今年はベースの清水興、ドラムのロジャー高橋、鍵盤のフラッシュ金子(米米CLUB)と堀田幸祐がハウスバンドとなり、特にバンマスの清水興はほとんど全編出ずっぱり。このようにハウスバンドあっての約5時間だったことも流れのよさ~ダレることのなさに繋がっていたし、その演奏(特に清水とロジャーのずっしりくるリズム)の強力さ故、各アーティストの通常のライブで聴き慣れていた曲もやけに新鮮に響いてきた。それもよかったところだ。

最若手のヨモギのふたりを除けば、みな40代以上。50代・60代のベテランがこんなに揃って、70代以上も何人かいらっしゃる。しかしロックミュージックやラップミュージックと違ってブルースともなれば歳とキャリアを重ねるほどに味わいや色気が出てくるもの。チャボやCharのかっこよさは改めて書くまでもないが、大塚まさじさんの歌声も実に艶があったし、その後ろで弾いていた竹田一彦さん(83歳)のギターからは気品のようなものも感じられた。テレビの音楽番組によく出てくるような若いポップミュージックのひとたちにはどうしたって出すことのできない深み・奥行き・いい塩梅の力の抜け加減。そういうものを存分に感じることができた。

全編、名場面ばかり。というか、いまふうの言う方をするなら名場面「しかなかった」約5時間だった。その全てを書き残したいところだが、長くなるので、特に印象に残った場面を簡単に記しておこう。

初っ端はヨモギ。ふたりだけで石やん楽曲「Ballad#5」と石やん訳詞のビートルズ楽曲「HELP」を。ヨモギのふたりはこのあともリクオ&ウルフルケイスケ、大西ユカリ、三宅伸治、Charのステージにコーラスで度々参加。Charが「HAPPINESS」を歌った際には、はせがわかおりが「BAHOのある日のライブにおける石やんの“歌ラップ”完全再現」を見事にやってのけ、やんややんやの歓声が。ヨモギ、大活躍の巻。

リクオとウルフルケイスケ。初っ端、塩次伸二、砂川正和、桑名正博、ムッシュかまやつ、チャー坊、山口冨士夫、シーナ、藤井裕、忌野清志郎、それに石田長生と、亡くなった先輩ミュージシャンたちの名前を呼んだ上で「ブルースは続いていくよ。ロックンロールは続いてくよ。音楽最高!」と言って「オマージュ-ブルーハーツが聴こえる」を演奏し始めたリクオ。イベントはまだ始まったばかりだというのに、ここで早くもグッときたうえウルっともきてしまった。そしてBAHOの定番曲「アミーゴ」で登場したCharと向きあってギターを弾くケイヤンの、いつにも増して幸せそうな笑顔といったら!

大西ユカリと三宅伸治。一瞬でそこを自分の舞台にしてしまう大西ユカリのエンターテイナーっぷり!。笑い、とるなー。「スカートも短め、スピーチも短め」という名言は、チャボが気に入ってあとで例に出していたほど。名曲「That Lucky Old the Sun」に続いての「アンコール」では、“きっといま、涙流さず歌えるよ きみの前で“という歌詞が石やんに歌っているかのようにも思えてグッときた。そして「Everybody毎度!On The Street」での中森明菜か金井克子か志村けんかといったような振りがまた最高。それ、コーラスのヨモギ(大西に合わせて豹柄衣装)も観客もみんな揃って一緒にやることに(笑)

三宅伸治と山岸潤史の共演による「青洟小僧」はこれぞブルーズ。先にもチラと書いたようにこの日の出演者は石やん絡みの曲を1曲は歌うということになっていて、その多くはアルバム『SONGS OF Ishiyan』のためにレコーディングもされた曲だったのだが、ライブともなればCD以上に熱量が高くなるもので、わけてもこの三宅with山岸の「青洟小僧」はジリジリと焼けるほどの熱さだった。歌う前に伸ちゃん、「ちゃんこ鍋をよくご馳走してくれた石田さんと、お好み焼きをよくご馳走してくれた砂川さん、ふたりに歌います」とも。

この日2回、翌日2回と、今年のこのイベントの幕間に計4回登場したナオユキは、集まった音楽好き、ブルーズ好きたちに、かなり強い印象を残したはずだ。ほかのお笑いのひとでこの場にしっくり馴染む人はなかなか思い浮かばないが、ナオユキの笑いにはブルーズの成分が相当量入っているので、このうえなく馴染む。その話芸はとても音楽的でもあるので、好きな歌に何度でも引き込まれるのと同じように、知ってるネタであってもまた引き込まれて笑ってしまう。2日間で4回も観ることができてラッキー!

大塚まさじは、竹田一彦と共に2曲。「アフリカの月」と「プカプカ」。これまでいろんなひとが歌ってきた「プカプカ」だが、やはり作者の西岡恭三さんか、大塚まさじさんのそれを越えるものはないなと実感。節回しから醸しだされる、その気分がもうまさにプカプカ。

桑名晴子はまずウクレレで「What's Going On/どないなってまんねん」。僕は何十年ぶりかってくらい久しぶりに晴子さんのナマ歌を聴いたんだが、さすがの歌唱力に惚れ惚れ。なんてソウルフル! 途中でCharがスッと登場してアコギでサポート。石やんとよく一緒に歌ったという「Boninの島」では、その頃のことを思い出したのだろう、涙をぬぐいながら歌う晴子さん。終わってCharが抱きしめ、「泣くなよ」と言って頭にキス。こういうとこもいちいちかっこいいんだ、Charは。

そんなしっとりめの雰囲気から一転、そのあとの幕間に登場したのは泥沼恵美子こと桜川春子と、八戸ノ里和夫こと安藤八主博。ギターは山口しんじだ。で、あうんさん・すうじぃ詞曲の「大阪ホンキートンクブルース」を夫婦デュエット。ぽかーんとなってたひとも少なくなかったようだが(笑)、春子さんの恵美子っぷりとか、僕的にはかなりツボでした。

続いての木村充揮は、レゲエにアレンジした憂歌団楽曲「16t」からスタート。ロジャー高橋の重いドラムの響きと、めちゃめちゃ強度のある木村さんの声の合わさりがすごい。ボブ・マーリィが好きだった木村さんに、実はレゲエは意外と合うのだ。また「サマータイム」に続いての石やん楽曲「ねえ、神様」が最高だった。バンドでロックンロールアレンジとなったこういう曲を歌うときの木村さんは本当にかっこいい。因みに数ヵ月前に木村さんにインタビューした際、石やんについてのことを訊いたら、こんなふうに言っていたものだ。

「石やんが亡くなってから石やんの曲聴いたら、ええ歌詞、ええ曲書くなぁ思うてね。生きてるときはなんで思わなかったんやろ。ぐははは。いつも一緒におったから近所すぎてわからんかったんやな。石やんは頑張り屋。僕はすぐにぶれてまうところがあって……。石やんにはいつも好きなこと言うてたな。石やんは昔から僕の話をものすごい聞いてくれんねん」

「ねえ、神様」は、「前に何回かこの曲を石やんとやったことがあって、ええ感じやな思うとったので」レコーディングしたのだそうな。

続いての金子マリは、今年出した新作『Mari & Bux Bunny シーズン2』にも収録されていた「幸せの足音」「Still Stands」の2曲と、息子ふたりが小さい頃に「“ママと海”を歌って」とせがんだという石やん楽曲「Mother's Song」(歌詞の“Mama Told Me“が“ママと海“に聴こえてたらしい)を。優しく包み込むようなバラード3曲。沁みた。

次の有山じゅんじは、ザ・たこさんの山口しんじをギターに迎えてポップな「Boat Club Road」を。一緒にステージに立って歌っていたのは、この曲の作者でもあるUnity Jeyだ。「このギターは40年前に石田長生から2万円で買ったもので」と、有山さん。ここで正木五郎が入ってロジャーとのツインドラムに。山岸潤史も加わってオーティスっぽさありの「ぐるぐるぐる」。インストの「Little R」では有山と山岸のギターのやり合いに惹きつけられた。

「去年はバンドで呼んでもらったんだけど、今年は独り立ちしました」と、続いて登場したチャボはそんな入りで話し始め、「なるべく喋らないようにするけど、言わないと眠れないからさ」と言って先に紹介した石やんへの思いなどを長く語った。因みにチャボが石やんと初めて会ったのは「70年代だったか80年代だったかの晴海」だそうで、「(金子)マリちゃんが“石田くんよ”“チャボさんよ“って、とりもってくれました!」と言ってたが、「そのとき、Charも出てたんだ」とも言ってたから、これは恐らく僕も観に行った1980年6月の晴海オールナイトロックフェスのことだと思われる。が、だとしたら石やんは何で出てたのだろう?   80年だからThe Voice&Rhythm?   出てたっけ?   覚えてないな……。

チャボが話したことのなかでは、次の言葉も印象的だった。正確じゃないが大意としてはこんなようなこと。ある時期までは自分やCharのような東京のミュージシャンは、関西のミュージシャンと距離があり、どう思われてるんだろう、かっこつけてるみたいに思われてるんじゃないか、と思ったりもしていた。でも……。(そのあとの言葉はハッキリ覚えてるのでそのまま書いておこう)「BAHOがあったじゃねえかよ。あれで(関東と関西の)国境を越えたんだ!」

そんな話のあと、まずソロで1曲。波の音にかぶさるように「石田は何を思って(この歌詞を)書いたんだろ?」と言って、「誰のためでもない舟」を。CD『SONGS OF Ishiyan』の曲解説にも書いたことだが、この曲を選んだそのこと自体にチャボの思いが強く込められているよう。“君がそばにいても 遠く離れていても たとえそばにいても 遠く離れていても“。そう、チャボは間違いなく、石やんに歌っていた。ちょっと泣けた。が、そのあと「ソウルマン!   有山じゅんじ!」と叫んで有山を呼んでからは、「木村みたいな声じゃないのが悔しいんだけど」とか言いながらガツンとブルースを。一部日本語にしての「ユー・ガッタ・ムーヴ」だ。終わってチャボは「マイ・ギター・ヒーロー、有山じゅんじ!」と紹介。そして「もうひとり呼んじゃおうか。リクオ!」。そして有山とチャボでメールをやりとりしながら日本語詞をつけたというトム・ウェイツの曲「Ol' 55」を、鍵盤のリクオを交えて演奏。これまたまさしく石やんに歌っているようにしか聞こえなかったのだった。

このあと、ナオユキ再び。ネタを書くのはさすがにアレなのでもちろん書かないが、最後にやったソレが見事にキマり、観客から「おお~っ」という感嘆の声と大きな拍手が。そしてそのあとのCharはといえば、そのナオユキの最後のネタを自分でもつぶやきながら登場したのだった(因みにCharはこのイベントで初めてナオユキのステージを観て惚れ込んでしまったそうだ)。

そんなCharは「石やんの話は長くなるから割愛するわ」と言い、「でも(石やんがいたことで)大阪と東京が合体したんだと思う」とも言って、「ラジカセ」を。石やんの歌う「ラジカセ」もいいが、Charの歌う「ラジカセ」も最高だ。というか、石やんの曲を歌うCharは最高なのだ。もれなくそこに石やんもいるみたいだからだ。そして石やんが“天国のドアをノックする前に、朝メシ前“で書いたCharへのラブ(?)ソング「ニッポンChar,Char,Char」。続いてヨモギが加わっての「HAPPINESS」。いし~だおさむにHAPPINESS!

出演者全員がステージに出てのアンコールの2曲は感動的だった。ザ・バンドの「ザ・ウェイト」(日本語詞は石やん)と、ドクター・ジョンのバージョンなどで親しまれている「アイコ・アイコ」。大人数出演のイベントの最後にわさわさとみんなが出てきて…というのはまあよくあるものだが、何がよかったって、ここではきっちりそれぞれのソロ回しが順にあり、そこでもそれぞれの個性が見えたこと。「ザ・ウェイト」ではリクオ→Char→大塚まさじ→木村充揮→チャボと三宅伸治というふうに回され、次の「アイコ・アイコ」は女性陣を前のほうに立てる形で演奏。ソロは大西ユカリ(歌)→ヨモギ(歌)→ウルフルケイスケ→山岸潤史→リクオ→三宅伸治→山口しんじ→Char→桑名晴子(歌)→金子マリ(歌)と回されていった。あと、ここはあれですね、個人的にはザ・たこさんの山口しんじがこの錚々たるメンツに混ざって伸び伸びとギターソロ弾いてたのがなんたって胸あつでしたね。しんじと伸治のダブルしんじとか、Charと横並びの弾き姿とか見て、ぼかぁ、嬉しかったよ。ほんとによかったね、山しん。なんかもう、おめでとう。あ、あと、安藤さんも楽しそうにちょいちょい合いの手シャウトを挿んどりました。

でもって、Char。天井のほうを指さしながら「石やん、おるで~。裕ちゃんもおるで~」と。うん、おった。確かに、おった。石やんの書く曲のよさと、人柄と。改めてそれを実感させられた約5時間の「石田長生展」(大阪編)。とこ~ろかまわずHAPPINESS。石やん、おおきに。

(2日目の「続 少しだけ石田長生展」へと続く)


画像2

2枚組CD『SONGS OF Ishiyan』絶賛発売中。ともだちのライター・染野氏と共に、楽曲解説担当しました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?