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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(感想)。

2023年3月4日(土)

TOHOシネマズ新宿で、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。

イシュー、テンコ盛り。それを深刻にではなく、マルチバースSF×カンフーアクションの形式で見せ、ドタバタギャグもモリモリで伝えてくる映画。と、端的に言えばそうなる。

ある人は自身のメンタルヘルスの状況と重ねて共感するだろうし、ある人は出自、ある人は年齢、ある人は性自認に関しての面で共感するだろう。実際、自分のことのようで泣いてしまったというような感想をSNSで多く目にした。

また、年頃の娘を持つ母親の理解/問題(または母親に対しての娘の理解/問題)もリアルに描かれ、同じかまたは似た状況にある人たちに刺さりまくっている。

それともうひとつ、LGBTQがフィーチャーされた物語でもあるが、とりわけ「L」以上に「Q」(クエスチョニング)にとっての切実な気持ちが描かれ、その面でまさに自分のこととしてぶっ刺さっている人も少なくないようだ。

僕はというと、キー・ホイ・クァンが演じる頼りない夫……頼りなさを自覚した上でそれでも妻に寄り添い支える夫のあり方(トクシックマスキュリティの真逆ですね)に共感した。すごくいいんだよね、大村崑似のキー・ホイ・クァンさんが。

と、そのように観る人それぞれがそれぞれの事情で誰かに共感できる作品であり、よくぞそれをこのドタバタのエンタメの形式に落とし込めたもんだなと感心させられる。その点において、評価が高く、話題になっていることも理解できる。

できるがしかし、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』『アントマン&ワスプ:クアントマニア』『ブラッシュアップライフ』ときて、マルチバースに食傷気味の今の自分的にはいまひとつノレなかったのだった。

(僕は見てないが)『東京リベンジャーズ』なんかも含めて、なんなんですか、昨今のこのマルチバース(及びタイムリープ)の便利使い状況は。最早それ、SFにおける理論的なアレコレ関係なく、単に生き直しを表現するための便利なツールみたいになっている。なので、昔はマルチバースやタイムリープが出てくるお話にワクワクできた自分が、今はもう「またか…」「安易に使っとるなぁ」としか反応できなくなっていて。それがノレなかった理由のひとつ。

それと、ドタバタと悪趣味、ギャグのセンスが自分には合わなかったというのもある。悪趣味が嫌いなわけじゃ全然ないんですよ。この悪趣味がたまんなく好みっていう映画や漫画もいくつもあるわけだし。けど、この映画のギャグはまるで笑えなかったし、犬をぶん回してる描写は不愉快ですらあったし、端的に言って面白くなかった。

このカオス感が最高なんじゃん! と言う人がいるのもわかるが、残念、僕にはフィットしなかったな。といった意味で、好き嫌い、ノレるノレないのハッキリ分かれる映画かと。

関係ないけど、あの岩、フジロックのゴンちゃんみたいだよね。


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