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『ロボット ドリームズ』(感想)

2024年11月28日(木)

新宿武蔵野館で『ロボット ドリームズ』。

先に観ていた妻から「絶対好きなやつ(僕が好きになる種類の映画)だから早く観て!」と言われていたのだが、まさに!  本当に好きになる要素だらけでたまらなくよかった。

音楽使いのなんと見事なこと。ブッカーTやウィリアム・ベルなど既存曲の使い方がセンス抜群。とりわけ主題曲と言ってもいいアースウインド&ファイアーの「セプテンバー」はハマってるなんていう次元じゃなく、この曲を元にこの物語が生まれたんじゃないかなんて思ってしまうくらい(しかもそのまま使うだけでなくロボットの口笛にしたり音量を変化させたりでいちいち効いてくる)。「our hearts were ringing in the key that our souls singing」…ってことですよ。

この曲をこういうふうに用いた監督もすごいけど、この歌詞を書いたモーリス・ホワイトもやっぱすごい…なんて改めて思っちゃったな。もうこれからは涙なくして聴けないよ、セプテンバー。加えてアルフォンソ・デ・ビラヨンガという人によるジャズ的な劇伴もめっちゃ洒落てて素敵だった。

それからそもそも絵が好み。いまどきの日本のアニメは、話はよくても絵が生理的に苦手で…っていうのが僕は多いのだけど、この作品のロボットやドッグのシンプルなのに豊かな表情(まん丸の目の中の黒点と細い線一本の口の動きだけでそれを表現するっていう)はとても愛らしく、対して背景は相当緻密に描かれていて、この画集とかポストカードとかあったら買うのにな、ってくらい好きだった。

舞台は80年代のニューヨーク。ってことで、20代で初めてニューヨークに行ったときの感じを思い出したりもした。多人種混ざり合うあの頃の街の雑踏もだけど、とりわけコニーアイランド。ロボットが動けなくなってしまったあのビーチ。映画『ウォリアーズ』とルー・リード(コニー・アイランド・ベイビー)の影響で20代だった僕はコニーアイランドにふらっと行ってみたのだけど、あのときもあんな夕陽だったなぁ……なんて。あの観覧車って今もまだあるんですかね?

台詞がないだけに受け取り方も想像もいろいろ広がって。ドッグとロボットの関係性は、友達ともとれるし、恋人ともとれるし、SNSで目にした感想のなかには親としての子離れに重なったというのもあった。ああ、なるほど。

終盤数分間の圧倒的な素晴らしさはもちろんのこと、自分的には鳥の親子のエピソードも好きでした。

過去の映画オマージュなどで気づけなかったところもたくさんあったっぽいので、もう一度観に行こう。


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