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トム・ヨーク@立川ステージガーデン
2024年11月15日(金)
立川ステージガーデンで、トム・ヨーク。
トム・ヨーク「EVERYTHING PLAYING WORK SOLO FROM ACROSS HIS CAREER」と題されたツアーの東京初日。
タイトルの通り彼のキャリアを横断する初のソロ来日ツアー。ソロ曲、サントラ曲、レディオヘッド曲、ザ・スマイル曲(この日は1曲のみだったが)と、まさしくトムの「EVERYTHING」をひとりきりで表現するというものだった。
多種の機材に囲まれる形で、トム・ヨークが曲毎に楽器をかえ、いくつかは彼特有のダンス(?)をしながら歌っていく。アコギ、ピアノ、ベース、シンセ、ドラムマシン。1曲1曲使う楽器は異なれど、準備に時間はかからず、1曲終えるとすぐに別の楽器にかえて(動いて)次の曲を始める。MCは一切なく、ときどき「ドウモ」とか「アリガト」と言うくらい。とにかく次々に曲を繰り出していく。所謂シンガー・ソングライターのライブとはまずこの点が異なる。
ステージを端から端まで広く使わず、中央のあたりに機材と楽器がトムを囲むよう配置されているので、どこか実験室のよう。そのなかでトムが音を「操っている」のだが、しかし合わせて歌ったり踊ったりすることでそれが肉体的な表現になる。音と映像で実験を繰り返す化学者のようでありながら、しかし歌とダンスを含むその総体として伝わってくるのは紛れもなく人間トム・ヨークであり、その感情であるというところが面白い。しかもひとりでの演奏と歌なので、それ故に恐ろしく純度が高い。
映像表現も素晴らしく、音出しと映像出しの完璧な同期がまた見事だった。
レディオヘッドの曲を思いのほか多く演奏した。それはちょっとだけ意外だったが、聴きながら「ああ、これもこれもトム・ヨークの個人的な曲なんだな」とヘンに感じ入った。セトリは毎回変えているらしいが、この日は6曲目に「Kid A」をやって、さすがにそれには「おおっ!」となった。
アコギやピアノで歌われるスローも胸にきたが、自分的にはドラムマシーンによるビートが効いた曲に耳とカラダが喜んだし、トムがそこに入り込んで動きが大きくなるほどに昂った。自分の席は幸運にも7列目で、1階前方の人たちはみんな1曲目から立ち上がって観ていたので、僕も最初から最後まで立ってカラダを揺らしながら観ることができたのはよかった。2階席の人はみんな座って観ていたようだが、このライブは立って観るのと座って観るのでけっこう印象が変わるものだったと思う。
齢を重ねた分だけ少しふっくらしたトムは、どこか不機嫌そうで手の届かないところにいる孤高の表現者然とした昔の彼と比べ、親近感というのとは少し違うけれど、でも前よりも存在を近くに感じられる人になったように思った。それは席が近かったという実質的な距離感からくるものだけではないと思う。そしてこの先、もっと齢をとっても、なんなら人々の注目度が低くなろうとも、この人はずっとこんなふうに音楽表現をし続けるのだろうなとも思った。