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『レ・ミゼラブル』

2020年3月1日(日)

新宿武蔵野館で『レ・ミゼラブル』。

『1917』『スウィング・キッズ』と衝撃度数の高い映画を続けて観たが、これもまた相当の衝撃で、すぐには席を立てなかった。

舞台となるパリ郊外のモンフェルメイユ出身で現在もそこに暮らしているというラジ・リ監督の堂々たる長編デビュー作。ドキュメンタリー出身の監督だそうで、確かにカメラワークがドキュメンタリー的とも言えるが、ずっと続く独特の緊張感、脳裏に焼き付く子供の表情の捉え方、静と動の切り替えのタイミングやそれを印象づける画角など、観ればこの監督の並外れた実力がわかるはず。いや、まじで凄いぞ、ラジ・リ監督。これからこのひとの作品は必ず観ることに決めた。自分的には『ケンとカズ』で小路紘史という若き天才監督と出会ったときの感触に近いものあり。

現代フランスの多民族社会を描いた作品だが、かつての移民問題を取り上げた作品などに比べて今は社会構造が複雑になっている分、いろんな層がややこしく入り組んでいる。あっち側とこっち側、外側と内側という単純な対立構造じゃなく、内側にも内側の対立があるわけで、何が正しく何が悪で一体誰の側に共感すべきなのか……っていう。

また、この街に暮らしている限り子供たちは結局ああいう大人へと育っていくのだと考えると「子供は希望」などと明るく捉えるのも難しいわけで、つまりそこには果てしなき無限ループの世界が……。ぅぅぅ、ひたすら息苦しい! でもこれが現実。なので小説の“レミゼ”のあの言葉が頭んなかグルグル。ずしんと重たい傑作です。

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