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上田正樹 R&B BAND×blues.the-butcher-590213@渋谷クラブクアトロ

2023年7月20日(木)

渋谷クラブクアトロで、「"Let The Good Times Roll !!!"  上田正樹 R&B BANDとブルーズ・ザ・ブッチャーの熱い魂と強い魂の夜」。

サウス・トゥ・サウスとウエストロードでの共演以来、キー坊とホトケさんにとって「約半世紀ぶりの対バン」だそうだが、今までなかったのがむしろ不思議なくらいにしっくりくる組み合わせでもある。しかもクアトロで(席ありで)この組み合わせをじっくり観れるというのもいいじゃないか!!  

先攻、blues.the-butcher-590213。永井ホトケ隆 vo/g、沼澤尚 dr、中條卓 b、KOTEZ vo/harp。

4年振りの新作『Feel Like Going Home』を6月に出したばかりなので、そこからの曲を次々に演奏。ホトケさんによるちょっとした曲解説…というか、歌詞のヘンさを指摘しつつ曲に繋げていくのがいい。確かにブルーズの名曲って、歌詞の展開が普通に考えたらおかしいんだけど、その歌手のキャラで強引にもっていくようなのが多いもんな。

ホトケさんが堅実にライブを進行し、KOTEZさんが場を和ませる、フロントふたりのそのバランスが変わらずちょうどよし。ホトケさんや中條さんは定位置でほとんど動かず弾くのに対し、KOTEZさんだけがよく動いたり跳ねたりしながら吹いて躍動感をそこにもたらす。あるいはさりげなく、立ちたがっていた観客を立たせたり。KOTEZさんは観客をよく見ている。このバンドのライブの「楽しさ」部分をKOTEZさんが担っている、という印象は前に観たとき以上に強く、KOTEZさんご自身がその役割に自覚的であるんだなとも思った。

故に中盤、KOTEZさんがヴォーカルをとるリトル・ウォルター曲でさらに温度がグッとあがったし、そこではKOTEZさんがウォルターのどういうところに影響を受けたのかがなんとなくわかった気がしたりもした。一方、ホトケさんの原点=“家に帰った感じ“がとりわけ強く現れていたのは、やはり新作の締め曲でもあったマディ・ウォーターズ「マニッシュ・ボーイ」だっただろう。繰り返されるなかでこちらも次第に高揚して「やぁおっ」とかなんとか言葉にならない言葉を発せずにはいられなくなる。これ、これですよ。

それと、今回前のほうの席(3列目)でかぶりつきで観ていて改めて「やっぱすげえな」と思ったのは、沼澤さん・中條さんの超絶リズム隊によるグルーブ。鉄壁、しかも柔軟。このレベルのリズムセクション、日本にそうそうなく、その支え力あってのバンドという認識をまた強くした。

後攻、上田正樹 R&B BAND。上田正樹 vo/g、有山じゅんじ g/vo、樋沢達彦 b、堺敦生 p/key/cho、Marvin Lenoar dr/cho、Yoshie.N vo/cho。

キー坊がこの編成のバンドで動くようになったのはいつからなのかな。わからないが、自分が(有山さんも参加の)このフル編成のバンドを観たのは今回が初めてだったので、純粋にその高いバンド力に「おおっ」となった。ブルーズ・ザ・ブッチャーの沼澤さん・中條さんのリズム隊も凄いが、このバンドの樋沢達彦さんとMarvin Lenoarの生み出すグルーブもとんでもなくすごい。R&B、ファンク、ディスコの、いわゆる“腰にくる“グルーブ。そこに堺敦生さんの鍵盤音がかぶさると、それはもう完全に国外レベル……なんだが、そこで有山さんのシグニチャーが記されたギターが鳴ってキー坊の歌がのると、やっぱりいい意味で日本のオリジナルのバンド音になるという。因みに有山さんはギター弾きに徹し、アルコールも入れずに味わいある音をしっかり聴かせてくれてました。

演奏されたのは、国外のお馴染みのR&Bスタンダードばかりで、キー坊は国外のバンドに引けを取らない演奏レベルでそうした名曲をしっかり届ける、ということをこの「上田正樹 R&B BAND」でやりたいのだろう。が、自分的にはこのバンドでキー坊のソロ曲であったり、有山さんとの『ぼちぼちいこか』曲だったり、なんならサウスの曲だったりが演奏されたら、それもまた面白いし、バンドの幅にもなっていいんじゃないかと思ったりも。サウス曲はサウスのときに、有山曲は有山とふたりのときに、とか分けないで、このバンドにキー坊のキャリアの全てを吞み込ませる感じでやっていったらいいんじゃないか……そういう時期にキー坊もきてるだろうし、そうやってオリジナルもカバーもなんでもやれるバンドとしてこれを動かしていったらまた新しい段階に入ることになるんじゃないか、と。自分としてはそういう全キャリアから柔軟に曲をセレクトしたキー坊のライブがそろそろ観たいし、このバンドならそれがやれるのに、と思ったりもした。

アンコールでは、両バンド合体のセッションを。キー坊、有山さん、ホトケさん。日本のブルーズ~ソウル~R&Bの開拓者たるこの3人の幸福な絡みを見ながら、まだまだこの先何年もこの感じが続くといいな、ずっとお元気でいてほしいなと思ったわたし。タイトルに偽りなしの「熱い魂と強い魂の夜」でした。

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