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『エゴイスト』感想。

2023年2月25日(土)

テアトル新宿で『エゴイスト』。

満席。前評判が高く、いい作品なのだろうとは思っていたが、予想を遥かに越える素晴らしさで、後半は涙がとめどなく溢れてしまった。

ゲイの愛を深く丁寧に描いた作品という程度の認識で観たら、中盤から予想とまったく異なる展開に。とはいえそこに不自然さはなく、(詳しく書くとネタバレになってしまうが)とりわけ鈴木亮平演じる浩輔の孤独や葛藤のようなものが後半で……といったあたりは、前半の描き方があってこそと強く思えた。

話の展開にドラマすぎるといった違和感を持った人もいるだろうが、これが実話ベースだとわかれば、納得がいくはずだ。

鈴木亮平の生々しい演技が凄い。完全にその人物になりきることの凄さだ。宮沢氷魚はどピュアなようでどこか魔性。故に、ほんとはどっちなんだ? 騙してんのか本当にここまで純粋なのか?としばらくは疑いながら観てしまったところもあった(ときどきブームのミヤの若い頃の面影も。ブームが生んだ最大のヒットは「島唄」でも「風になりたい」でもなく「氷魚」なのでは、なんて思ったりも)。そのふたりに加えて、演技経験のほとんどない阿川佐和子が助演女優賞ものの素晴らしだった。

総じて描写が細やかで丁寧。言葉のやりとりのひとつひとつと、その間(ま)がリアル。カメラは終始手持ちで「寄り」。ドキュメンタリー的とも言える手法だが、それだけにずっと引き込まれ続けるし、感情の揺れがダイレクトに伝わる。

監督の松永大司さんはほかにどんな作品を撮られるているのかとググッたら、ずいぶん前に劇場で観てその年のベストに選んだくらい気持ちをもっていかれたドキュメンタリー作『ピュ~ぴる』を撮った方だった。なんか納得。

ちょっとやそっとじゃ感想をまとめきれないが、とりあえず観終えたときに純粋に強く思ったのは、生きてる限り母をもっともっと大事にしなきゃということ。

そして、一緒に観た妻と感想をたくさん交わし、1日経ってまだ考えているのは、愛とは何かということ以上に、エゴとは何かということ。

頭のなかに流れているのは、もちろんちあきなおみの「夜へ急ぐ人」(詞曲は友川カズキ)。♪燃える恋ほど、脆い恋~~


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