ビッケブランカ@新木場スタジオコースト
2019年6月14日(金)
新木場スタジオコーストで、ビッケブランカ「Voom Voom Room」。
自分は基本的に明るい音楽より暗い音楽のほうが好きだし、元気にハジけた音楽はどちらかといえば苦手なほう。なのにビッケの底抜けに明るくて楽しくて開かれまくったライブを観ていてこんなに晴れ晴れした気持ちになるのはなぜなんだろう。
文句なしに楽しかったし、ビッケも100%楽しんでいたようだった。いつも楽しそうだが、いつも以上に楽しんでいるように見えた。同じ構成で何度かやるツアー以上に、一回切りのことをやる一夜限りのライブのほうがバーンと思い切れる勝負師的な資質が彼にはあるのかもしれない。
なんというかこう、やることも動きもいちいちダイナミックなのだ。ちまちましてない。中途半端さがない。バーンとやる。だから面白い。見ていて爽快感がある。
店に行ってホワイトファルコン(グレッチギターのなかで最も高価で最上位とされる)を試奏すらせず10分で「これください」と即決して購入した…という話をしていたが、要するにそういう思い切りのよさが普通にあって、それがライブ表現にも現れる。そのホワイトファルコンはさすがにいい音がしたし、弾き姿もよかった。
そもそもオープナーに、出たばかりの新曲でありこのライブの目玉になりうるはずの「Ca Va?」を持ってきたことからびっくりした。例えばそれもそういう思い切りだ。そしてその曲は「あとでもう一回やりますから」と早々に明かされ(普通、黙ってるよね)、実際アンコールでもう一度演奏された。しかも2度目のそのときはマイクを客席に向けてシンガロングを煽っていた。フランス語の部分なのに。(え? ここ? と戸惑った人が多かったはずだが、でもちゃんと歌えてたお客さんもたくさんいた!)
バンドはお馴染みのメンバーに加え、今回初めてストリングス……女性ヴァイオリン奏者ふたりがゲストで加わった。初めに中盤の「Bad Boy Love」でひとりが加わり、ライブ後半は「WALK」も「まっしろ」も「Winter Beat」も「Slave of Love」も「ウララ」も2ヴァイオリンが加わった形で演奏された。「まっしろ」がヴァリオリン入りで演奏されたらそりゃ心に沁み渡るに決まってるし(実際とっても沁み入ったし)、「Winter Beat」のイントロもヴァイオリンの音と共に記憶されているので意外性のようなものはないわけだが、「ウララ」のイントロで2ヴァイオリンが鳴ったときはなんか「おおっ!」となった。
因みに個人的にこの日演奏された全曲のなかで一番グッときたのは「WALK」。リリースの順としてはこれのあとに名曲「まっしろ」が出たので、それに比べるとやや存在感が薄いのかもしれないが、聴けば聴くほどいい曲だな、好きだなと思える曲であり、ヴァイオリン入りの昨夜のそれは名演と呼びたくなるものであった。
本編ラストの「THUNDERBOLT」は言わばアンセムであって、こういう曲はハコが大きければ大きいほど曲の持ち味が出るわけで、そういう意味でスタジオコーストの締めに相応しかったが、これがちょうどいいというよりはもっと大きなところでこれを歌って会場がひとつになっている絵が聴きながらイメージできた。
先にも書いた通りやることも動きもいちいちダイナミックなビッケであるゆえ、スタジオコーストがとりたてて大きなハコのようには思えず、ライブハウスでやるくらいの感覚で彼は楽しんでいるように見えたのだった。大昔、RCサクセションが初めて武道館でやったときに清志郎が「ちっちぇえライブハウスだな」と言っていて、実際ライブハウスでやってるのと同じ感じに思えたものだったが、例えばビッケが来年だか再来年だかに武道館でやることになったとしてもそんなふうに思えるんじゃないかと思ったし、野外フェスでもいまよりもっと大きいステージが映えるんじゃないかと改めてそう思えた。いやぁ、楽しいねえ、ビッケのライブは。
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