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the Tiger自主企画「トラのひ Live vol.1」@代官山・晴れたら空に豆まいて

2024年6月19日(水)

代官山「晴れたら空に豆まいて」で、the Tiger自主企画「トラのひ Live vol.1」。出演は、スクナシとthe Tiger。

the Tiger自主企画の3ヵ月連続2マンライブ、そのvol.1。ゲストはEMILANDが予定されていたのだが、ギターのボブが流行り病にかかって出演不可に。よってヴォーカル&ギターの衣美さんとドラムの茜さんが解散したズクナシ時代の曲を演奏するデュオ、スクナシの出演に変更となった。

3ヵ月連続ライブvol.1のゲストは、スクナシ

そのスクナシが先攻。茜さんのドラムは力強くも豊かな響きがあり、衣美さんのギター&ヴォーカルと息がぴったり。ふたりだけでも「少なし」の感はなく、十分すぎるパワーを有していた。自分がズクナシのナンバーを聴くのは、渋谷クアトロにおけるズクナシの長尺解散ライブ(2019年2月)以来。バンドはなくなってもいい曲は残っているわけで、それを自身で演奏して継いでいくのはよきことだなとも思えた。

ふたりでしばらくやったあと、中盤のファンク曲でEMILANDのベース、ネバーダイが参加。さらに終盤では三宅伸治&The Red RocksのメンバーでもあるサックスのMONKYも加わり、変形EMILANDとも言える4人による厚みありの演奏が聴けたのは結果ラッキーなことでもあった。

セットチェンジを挿んで、後攻、the Tiger。僕が観るのは同じ晴れ豆での7インチ・リリース記念ワンマン以来なので、2ヵ月ぶりだった。

1曲目「火を消すな」が始まった瞬間、空気が変わった。そこから「ラスト・トレイン」「金町」と続いた頭3曲の爆発力がいきなり凄まじかった。晴れ豆という同じステージである故に尚更強く感じたのかもしれないが、特にりんとたいがは4月のあのときと明らかに気迫が違う。臨む気の持ち方が違う。僕にはそう見えた。

例えばシモキタのQueとかと違って、席ありでもあるし、晴れ豆はゆったり聴くのに向いたハコのような気がしていた。前回の晴れ豆のライブを観ていてそう感じた。だからドカーンと弾ける激しめのロックライブは、アーティストにとってはやりにくいのかもしれない。そんな気がしながらも観に行ったのだが、全然そんなことはなかった。やはりやる側の気の入れようひとつで変わるのだ。4月の晴れ豆ライブの、よくない意味でのリラックス感はこの日はなく、のっけから「やってやる!」の意気が、りんのヴォーカルのパワーと全身をつかっての動き、たいがのプレイに満ちていた。りんは(晴れ豆だけに)豆をまく動きをしてもいた。

「大好きだった人が亡くなっちゃったので」とたいがが言い、4曲目はその人……花岡献治さんの在籍した憂歌団の「おそうじオバチャン」。これもまたいつにも増して強度のある演奏とヴォーカルに感じられた。

日本語詞カバー「All Your Love」に続けたのは「夏~思い出せないメロディー~」で、歌もののこの曲はライブ全体のいいアクセントになっていた。ライブアレンジもとてもいい。そして次の幸せのルールがなんとかかんとかと歌われる曲は新曲だろうか。the Tigerらしいロックンロールで、これもよかった。

次の「二日酔い」は前奏がやけに長く、りんが何やらアドリブで歌い、途中で「歌詞なんだっけ?」みたいなことをたいがに聞きながら歌った。さんざん歌ってきた曲だというのに、歌い出しの歌詞が出て来なくなったのだ。が、それでも慌てる様を見せず、テキトーにでも歌って動き続けるりんがむしろ頼もしい。ハプニングではあるがそう感じさせずに続けるあたりに、その道で長く続けている歌い手としての気概が見えた。とはいえ、その歌詞の内容が「朝まで飲んで記憶とばして」「何も覚えてない」というものだったから、さすがに笑っちゃったけど。結果、場が和むことにもなったナイス・ハプニング(笑)

「晴れ豆に相応しい曲を」と言って演奏したのは、木村&有山のカヴァー「陽よ昇れ」。そこから「Travelin'」「どこ吹く風」とロック曲を続けたあたりで、後ろのほうでは席を立ってノリだす人が数人。実際そうせずにはいられないノリというかグルーブが演奏にあった。そしてバラード「働き者の歌」をじっくり聴かせたあとは、本編のラストスパート。りんが「立って楽しみたい人は立ってもいいし。自由に」と前方で座ってうずうずしている客たちに自然に声をかけ、アレサの「リスペクト」で総立ちとなって、そのままハコの温度は「我慢できない」で沸点に達したのだった。

アンコールは、スクナシのふたりとMONKY氏を混ぜてのロッキンソウル・セッション。オーティスの「Hard To Handle」、そして「この曲、絶対に衣美さんと歌いたかった」とりんが言い、キャロル・キング曲でアレサがカヴァーした「ナチュラル・ウーマン」を最後に。Superflyもライブでカヴァーしたことがあるが、りんにもいつかカヴァーしてほしいと思っていた僕は、早くもその願いが叶って「おおっ!!」となったのだった。りん&衣美の(そこにMONKYのサックスものっての)「ナチュラル・ウーマン」は素晴らしかったし、とりわけ最後のりんの思いがこもった熱唱はまじで感動的だった。いつかレコーディングしてほしいくらい。

1時間強、この日のthe Tigerは、とにかく間断なく次々に曲を繰り出していくあり方が実によかった。歌ものの「夏~思い出せないメロディー~」やバラードの「働き者の歌」などを入れ込んでアクセントをつけながらも、基本的にはノリのいいロックンロールを矢継ぎ早に繰り出して攻めていく、その勢いと熱量が最高だった。MCは最小限にとどめ、とにかく与えられた時間いっぱい存分に演奏する。これぞロックのライブという感があったし、こういう進め方でこそthe Tigerの魅力が最大限に発揮されるとそう思った。リズム隊の演奏もより引き締まったように感じられた。いやホント、この夜のthe Tigerは凄かった。熱かった。僕はもう一度惚れ直した。

今はまだ年齢層高めのブルーズロック好きのお客さんが多いけど、老若男女広い層の客が彼らのライブを観て自由に踊ったりしている、そういう光景が見れる日を楽しみにしながら応援し続けたい。





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