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betcover!!@恵比寿リキッドルーム

2022年2月6日(日)

恵比寿リキッドルームで、betcover!!

リキッドルームがほぼ満杯(男性客が7~8割と多かった)。あとで知ったがチケットは完売だったそうだ。アルバム『時間』を2021年の年間ベストに選ぶひと(またはメディア)が少なくなかったからか、あるいはYouTubeにアップされた昨年のライブ映像やリハ映像がたくさん見られたからか。メジャーレーベルを離れて以降、betcover!!はむしろ多くのひとに「発見」されているようだ。

圧巻のライブ。いや、前回のワンマンも前々回もそうで、いつも「圧巻だ」という印象を彼は残すのだが。最高さの更新。観る度に凄まじさが増しているということだ。その凄まじさを的確に伝える言葉がうまく見つからない。何が凄まじいのか。音楽の強度、それもそうだが、全身全霊で音楽/演奏に身を投じるその姿、その切実さみたいなものが「凄まじい」という印象に繋がるのかもしれない。

バンドメンバーの登場のあと、ヤナセジロウは今回サックスを手に現れた。1曲目「失踪」でそれを吹く。サックスありのフリージャズ的な行き方と低めの歌声の合わさりから、よく言われるようにキング・クルールが頭をよぎったりもするが、もっと爆発的な何かがある。この「失踪」から「狐」「幽霊」と続いていく序盤から、拍手をすることすらためらわれるような緊張感。バンドはギター、ベース、ドラム、鍵盤と、ギター弾いて歌う彼含めて5人に(去年からだったか)定着した。betcover!!とはヤナセジロウのことだが、最早この5人バンドのことをそう呼んでいいように思えてくる。つまりひとりとバックメンバーの形ではなく、一体であるということだ。

中盤はしかし、メンバーたちが一旦去って、ヤナセジロウの弾き語りに。「家庭のひかり」「異星人」、そして新曲。新曲を披露する際、「今年中にアルバムを出します」と言っていた。

再びバンド編成になって「セブンティーン」から後半戦。その曲はささやくような歌い方に変えられていて、死ぬほど好きな曲であるだけに涙腺が…。

序盤は前衛ジャズ的(+シューゲーザー的)な行き方、中盤は弾き語り含むスローな歌ものを続け、終盤はビート感もあってカラダが動く曲をと、ざっくりそんな転換もあるにはあるが、しかしライブは境目をあまり感じさせないひとつの川の流れのように進んでいく。それが川であったなら、最後の感動的な「Love and Destroy」に至って川から海へと辿り着いた印象もあった。

どの曲もアレンジはまた変化していた。絶えず実験を試みながら、彼とバンドはひとつの曲を生まれ変わらせていく。曲が変身していく。同じ演奏は2度としない。彼(彼ら)はそうした心積もりでライブに臨んでいる。実験は続き、その日のライブはその過程を見せるものでもある。1回1回のライブがbetcover!!の作品なのだ。と、そう思わされる。

こんなふうに一回一回のライブに向きあっているひとがほかにいるだろうか。これを終えたら死んでもいいという覚悟で彼はライブに向きあっているんじゃないか。故に壮絶。孤高だ。

いつも通りアンコールはなく、自分は会場を出て、恵比寿駅へと歩いて電車に乗る。歩いたり電車に乗ったりはしているもののどこか放心状態が続いた。betcover!!のライブを観たあとはたいていそうだ。


↓夜、集中して見るべき。

↓こちらは昨年夏のワンマンの感想。


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