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UA@LINE CUBE SHIBUYA

2022年1月22日(土)

LINE CUBE SHIBUYAで、UA。

渋谷公会堂がLINE CUBE SHIBUYAとなり、てっきり名称が変わっただけかと思っていたら、会場入り口が公園通り沿いに移ったほか、建物自体が大きく変わっていた。土台は一緒だが、古くない、いまのコンサートホールとして生まれ変わっていたわけだ。

そんな会場で観るUAのライブ。UAはUAのままでありながら、しかしバンドや曲のアレンジが大きく変わって、2022年のありようを強く感じたライブだった。渋谷公会堂がLINE CUBE SHIBUYAとなり、作りは変わっても、もともとの渋谷公会堂らしさを失わずにそこにあったように。

UAのデビューは1995年。本来ならデビュー25周年の記念ライブを2020年に行なうはずだったが、パンデミックによって延期に。昨年はAJICOでの活動があり、今年いよいよソロとしての精力的な活動がここからスタートした。

タイトルは「25th→→→30th anniversary Live!!」。大阪に続いての2公演目だ。

まず驚いたのは、バンドが一新されたことだ。2019年の〈WATASHIAUWA Tour〉時のバンドメンバーは、内橋和久(ギター)、鈴木正人(ベース/キーボード)、山本達久(ドラムス)、コーラスで神田智子とMEG。今回の新しいバンドのメンバーは、鈴木正人(ベース)、西田修大(ギター)、伊吹文裕(ドラムス)、小田朋美(鍵盤)、荒木正比呂(シンセサイザー)、神田智子(コーラス)、イガキアキコ(コーラス、コーラスアレンジ、ヴァイオリン)。全体的に若返りを見せ、UAを含めると8人中4人が女性となった。小田朋美はceroやCROK/LCKSで活動。西田修大は中村佳穂、石若駿、君島大空、角銅真実らのバンドで弾き、荒木正比呂は中村佳穂やドレスコーズに深く関与。バンマスも鈴木正人ではなく西田修大で、つまりUAは2022年型のサウンド、自分にとっても聴き手にとっても新鮮さのあるサウンドを求めたということなのだろう。そういえば2019年に日本橋三井ホールでUAのライブを観たとき、出口付近に中村佳穂から届いた花が飾られていて、そのライブレポートを書いた際、自分は次のように文を締めた。

帰り際、出口付近には中村佳穂から届いた水色の花が飾られてあった。ポップスともジャズとも判然とさせず自由奔放に個性の強い音楽を奏でて楽しそうにしている、中村佳穂はそんな若手シンガーだが、そういうあり方の先にUAがいて、もう24年も好きなように歌い続けている。しかも彼女のなかの表現の自由度はここにきてさらに増しているようにも思えたライヴだった。25周年となる来年の動きがとても楽しみだ。

UAはここにきてさらに自由に泳いでいくために、中村佳穂のサウンドに大きく関与していたメンバーらに声をかけた、とも言えるかもしれない。

新しいバンドによる音は、エレクトロ味(UA曰く、ニューウェイブ)をかなり大きく導入しながらも、ナマ演奏のグルーブを後退させることなくUAの歌声をより引き立てるものになっていた。歌を引き立てる電子音グルーブ、その塩梅が絶妙だった。大阪に続く、これが2度目の公演だったが、ツアーやフェスで度々公演するに連れ、相当とんでもないバンドに進化するだろうことがイメージできた。

周年ライブということで、過去のシングル曲・代表曲がたくさん歌われる。それは予めアナウンスされていたことだ。となれば、ある種の集大成的ライブになるのだろう。そう考えるのが普通である。が、そういうトーンのライブではなかった。「水色」で始まり、「太陽手に月は心の両手に」「情熱」と続く。「スカートの砂」もあったし、中盤には「ミルクティー」も「雲がちぎれる時」もあったし、本編終盤には「リズム」も「甘い運命」もあった。アンコールではデビュー曲「HORIZON」も歌われた。が、そうした90年代の曲が、懐かしい曲として響いてきたわけではなかった。懐かしさを与える役目として演奏されるのではなく、楽曲自体の持つ普遍性を抽出しながら、2022年の耳で聴いて「おっ!」「いい!」となるように(いくつかはだいぶ先鋭的に)アレンジ/演奏されていたからだ。オリジナルの持ち味を崩さずに新しさを持たせたアレンジ/演奏の曲もあったが、「え?  これってあの曲?」と一瞬戸惑うほどのアレンジが施された曲もあった。またUAは今年リリースする新しいアルバムからの曲もいくつかお披露目した。その新曲群と昔の曲とを混ぜての構成だったのだが、その混ざり方に違和感、温度差がなかった。総じて2022年の説得力を持った演奏であり歌唱だった。新曲のみならず、昔の曲でもUAは新しい景色を示して見せてくれたということだ。

周年ライブらしく過去の代表曲をたくさん歌う。が、集大成にするのではなく、過去の曲でも新しい景色を見せて、現在進行形(または進化形)であることを示す。まとめる、ではなく、新章を伝える。ああ、これがUAなんだなと、強くそう思えたライブだった。

そんななかでも、とりわけアンコールの最後に歌われた「プライベートサーファー」が圧巻だった。ご存知のようにオリジナルはゆったりしたレゲエだが、アレンジが激変され、壮大なバラードに。コーラスのあり方はゴスペル的とも言え、UAは祈りを込めるようにエモーショナルに歌っていた。それはもう感動的で、余韻が長く続いた。「ねえ誰か この世界を全部洗って」「もう2度と戻れない今日を 無駄にしないで」「またいつか ここで遭おうよ」「ねえ誰か この世界を全部笑って」。その歌詞は、コロナ禍のこの世界に対しての祈りのようにも思えた。

MCもいつものようなラフさはなく、周年ライブとあっときちんといまの思い、ここまでやってことの思いを伝えていたUA。「いろんな旅をしてきましたが、いままた改めて東京と出会い直して、東京にインスパイアされている。新作もそういうもの」「これまで愛を学ぶために歌ってきた。これからも愛を学ぶために歌っていきます」。正確ではないが、そんなニュアンスのことをアンコールで話していた。「愛を学ぶための旅」。今年はその様子を見る(聴く)ことのできる機会が多くなりそうで、ワクワクする。





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