ジュリアン・ベイカー@ビルボードライブ東京

2019年2月9日(土)

ビルボードライブ東京で、ジュリアン・ベイカー。

前回の渋谷WWW公演が素晴らしかったので、2度目の来日となる今回は1stショーと2ndショーを続けて観た。

1stは一番上の席から見下ろす形で、2ndは1階ほぼ正面の前から2番目のテーブル席で間近に観たのだが、席が違えばやはり見えてくるものも感じられる音も大きく違うものだ。

1stで見下ろしたときにまず驚いたのは、床に並んだエフェクターなど基盤の多さ。ジュリアンを中心に半円を絵描くように敷かれていて、彼女はギターを弾く際にそれを足で(ときどきはしゃがんで手で)操作して音色を作って歌う。ステージ上にいるのはジュリアンとヴァイオリンのアイシャ・バーンズだけで(前回のWWW公演は、ヴァイオリンはレコーディングにも参加した女性のカミーユ・フォークナーだった)、つまり楽器はジュリアンの弾くギターまたはキーボードとアイシャのヴァイオリンのみであるわけだが、そうしたエフェクター類の操作による音色の変化があるので、それでもう十分な広がりが生まれることになる。またジュリアンは歌う際にマイクに近づいたり離れたりしていて、その距離によっても歌に強弱をつける。そうやって技術的に完璧に音響をコントロールしているのだ。

そういう音響効果があることを視覚的に理解できたのが1stショーだったが、2ndショーではそれを耳とカラダで実感した。間近で観てたら(聴いてたら)その声と音が迫ってくるように響いたり、ときには包まれる感覚になったりもした。彼女は大学時代に音響録音科で学んでいて、前回の来日時にインタビューした際には「(2ndアルバムは)ミキシングにも拘った。ミキシングによって聴く人の音楽体験を変えられることを知っていたから。歌詞の意味を際立たせるためにヴォーカルを近くに感じたり遠くに感じたりするように作った」と言っていたが、つまりそうした音響効果をライブにも持ち込んで「聴く人の音楽体験を変える」ことをしているわけだ。

そうした技術面の完璧さが体感的によく理解できたのは会場がビルボードライブだったからで、恐らくWWWのようなハコだったらそれはここまで明確にならなかっただろう。という意味で、今回ビルボードライブで観ることができて本当によかった。

と、技術的なことを先に書いたが、それより何より凄いのはやはり彼女の歌唱そのものだ。まさしく全身全霊。1曲1曲、歌に魂がこもっている。2ndショーは間近の席だったので、歌う表情、口の開き方(ものすごく広く開ける!)、目線なども当然凝視して見てたわけだが、そのひとつひとつに引き込まれ、彼女が歌にどれだけのものを込めているのか、どんな気持ちで歌っているのか、そこにまで思いが及んだら、なんか涙が出てきてしまった。

セトリは1stショーと2ndショー、ほぼ一緒。ほんの少し変えたのと、あと1stショーのほうだけ予想外のアンコールがあった。それと最後に後ろの幕が開くのだが、1stではそのときジュリアンが一瞬外を見てたのが妙に印象的だった(吹雪が舞ってたりしたらもっとドラマチックだったかもしれない)。それからアイシャ・バーンズのサポートっぷりも実に素晴らしかった。

2ショーともハイライトは「Turn Out The Light」だろう。始まりのほうで鳴らされた多重の声のような音がさながらゴスペルのようで、震えた。祈りだな、あれは。

いやぁ、よかった。2ndでは終わってしばらく呆然としてしまったくらい。やはり自分はヴォーカルが圧倒的な人のライブに最も感動する。歌声の力が全て。とか乱暴に言いたくなるくらい、歌の力が圧倒的なアーティストが好きなのだ。

あと、ほとんど笑わないんだけど、ほんとにちょっとだけ一瞬笑顔を見せるとチョーかわいいんです、ジュリアンは。この人に出会えてよかったと心底思える歌手のひとり。

↓こちら、取材時のコメントを多めに使った今回公演の紹介文です。



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