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Niia@ビルボードライブ東京。

2022年11月14日(月)

ビルボードライブ東京で、Niia(ナイア)。1stステージ。

L.A.を拠点に活動するジャジーR&B系シンガー・ソングライター、ナイアの初来日公演。表紙を飾った「bbl MAGAZINE」(ビルボードライブの小冊子)11月号に巻頭3Pの紹介記事を書くにあたって改めて過去作を聴き返していたこともあり、楽しみにしていた。(↓こちらから無料で読めます)

1stステージは通常より早い17時半開演。間に合うように家を出たはずが、地震があっての点検で地下鉄がしばらく止まり、10分ちょっと遅れて会場に。着席したときには、ナイアがステージ向かって左側にあるピアノを弾きながら歌っていた。

ステージ上はいつものそこより仄暗く、上からだとメンバーの表情までは見え辛い。が、その仄暗さがナイアのミステリアスなムードと、静かな炎のようなヴォーカルに合っている。暗い中で蝋燭の火のように揺らめくヴォーカル…といった感じだ。サポートミュージシャンはドラムの女性と鍵盤の男性。コーラスはプリセットされたものが鍵盤から出される。このトリオでやるのは今回が初めてだと言っていた。

ステージ上には色がなく、ナイアの衣装も全身黒。クールで正確なビートがドラマーによって刻まれ、ナイアのエレガントなピアノと低体温系の歌が静かに空間に広がっている。たちまちその世界に引き込まれた。曲が終わって「コンバンワ。ナイアデス。アリガトー」と日本語で挨拶する、その声は遠慮がちで小さかった。

次の曲ではピアノから離れてセンターで立って(軽く揺れながら)歌い、次の曲はまたピアノの前に戻り、次の曲ではまたセンターで……と、度々位置を変えて進めていく。ピアノを弾いて歌うのはスローだったりアンビエント風だったりの曲が多く、センターで立って歌うのは1stアルバムや2ndアルバムにあったダンサブルなR&B。その両方の世界観をどっちかに傾きすぎずに繫いでいくというやり方だ。単調にならないのはドラマーの出すリズムが通常のR&B的ではなく、ときどき所謂グラウンドビートっぽいものになったり、アフリカンテイスト強めのものになったりと変化するから。

それに何より、ナイアの歌唱表現力が想像以上。低体温のようでありながら、時々グッとエモさが迸る。コントロール力が抜群なのだ。よく言われるようにシャーデー・アデュの歌唱に近いものはやはりあるが、アメール・ラリューを想起した瞬間もあった。コケティッシュな感じと官能的な感じが曲によって交差するというか。

観客はみなとても静かに着席して観ていたが、自分は何曲か…とりわけジャケットを脱いでセクシーなハイカットで歌いだしてからの官能性とネオソウル味が立ちのぼるダンサブルな「NOBODY」では立ち上がってカラダを揺らしたくもなった。

一方、幼い頃から習っていたというクラシックピアノの腕前を存分にアピールする流麗な曲もあり、アンコールではピアノ弾き語りもあり、というふうに流れも非常によく、引き込まれていたらあっという間に終わってしまった感覚があった(約70分のステージだった)。

クルアンビンやらビッグシーフやらと来日が多い週の月曜日、ましてや17時半開演の回ということもあってか空席が目立ってはいた。が、帰りのエレベーターで「いや、想像以上でしたね。こんなにいいのにあまり知られてないみたいで勿体ない」と話している男性ふたりがいて、自分も同じように思っていた。観た人はきっとみんなそう思ったはずだ。本当にかっこよかった。ナイアがライブの相当いいアーティストであるということが今回観てハッキリした。

17日(木曜)では横浜公演あり。観てほしい。


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