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シーナ&ロケッツ@新宿ロフト

2023年11月23日(木・祝)

新宿ロフトで、シーナ&ロケッツ「SHEENA's BIRTHDAY&46th Anniversary LIVE」。

開場は18時で、開演は19時。その1時間、シナロケの過去のライブ映像やライブ前のインタビュー映像がスクリーンに映し出されていた。80年代や90年代のレア映像が多く、画像はクリアじゃないし手振れしているものもあったが、新宿ロフトの爆音でかかっている故、YouTubeとかでそれを見るのとは大違いの迫力。立ったまま開演を待つのが少しも苦じゃなく、そのあとのライブに対する期待感が大いに高まった。

川嶋さん、奈良さん、澄田さんの3人がまずステージに登場。オープナーは言うまでもなく「BATMAN THEME」。すげぇ爆音だ。3人とも上下黒系統の服で、なかにはそれぞれ絵柄の異なるシナロケTを着用していた。そして2曲目のイントロ……「ビールスカプセル」。誰がヴォーカルをとるんだろうと思ったら、なんと奈良さんだった。拳を突き上げたり、ベースの先を(ウィルコ・ジョンソンがやるみたいに)銃のようにかまえて客に向けたり。しかも気合が入りすぎてるということもなく、自然に自分らしく歌っておられる。かっこいい。鮎川さんの歌とはまた違う味がある。澄田さんは鮎川さんの愛機だったブラックビューティーを弾く。その音は、紛れもなく”あの”音だ。ほかのギターじゃ鳴らないあの音。怪獣のようなあの音。そして3曲目「SWEET INSPIRATION」でルーシー・ミラーが笑顔でステージに飛び出してくる。この曲と続く「HAPPY HOUSE」はシナロケのポップ感が最高に出ている曲なので、観客も腕を振り上げながらサビをシンガロング。こうやってみんなでシナロケのポップロック・ナンバーを共に楽しむ時間がまたあった、ということの嬉しさを感じる。シーナ&ロケッツだ。シーナさんの姿も鮎川さんの姿もないけど、これはシーナ&ロケッツのライブだ。ここはハッピーハウスだ。そう実感した。

そのまま「ジェットコースター」でグイっと攻めたあと、そこからしばらくはゲストを招いての曲が続いた。ギター・ヴォーカルに首振りDollsのJonny Diamondを迎えた「Rock on Baby」。アキマツネオをギターに迎えてグラムロック味もほのかに加わった「Baby Maybe」。アキマさんが残りつつ、奈良さんを師匠とするPlastic Treeの長谷川正がベースを弾いた「Captain Guiter & Baby Rock」。もう1曲、長谷川正が弾いての「たいくつな世界」。ブラックジーンズとブラックレザーでロッカーっぽくキメた鈴木茂さんは「FRICTION DRIVE」と「どうしても逢いたい」を。そして「ルーシーのことは赤ちゃんの頃から知っている」と話した永井”ホトケ”隆さんは「トレイントレイン」と「ROUGH NECK BLUES」でプレイ。ホトケさんのギターで「ROUGH NECK BLUES」を聴けたのはかなり嬉しかった。因みに下北沢シャングリラで5月に行われた追悼ライブ「音楽葬」のときとは、ゲストがひとりもかぶっていない。あの日来れなかった父の友人たちをこの日は呼びたい。ルーシーたちのそういう思いと配慮あってのことなのだろう。

そのあとは「スーツケース・ブルース」「ふるさとのない人達」「ナマズの歌」とサンハウスの曲が3曲続いた。「スーツケース・ブルース」と「ふるさとのない人達」を歌ったのは奈良さんだ。奈良さんが歌うということ。自分が歌うのだという意志をもたれたということ。そのことにグッとこないではいられない。

「ROKKET RIDEに乗っていこうぜ~」という鮎川さん譲りのルーシーの掛け声で始まった「ROKKET RIDE」、それに「ピンナップ・ベイビー・ブルース」「レイジー・クレイジー・ブルース」「レモンティー」と続いたあと、最後にもうひとりゲストが登場した。シナロケ映画で「いなくなったことはたいしたことじゃない。いたってことがだいじなんだ」というこの上なく最高のキラーワードを放った甲本ヒロトだ。「わたしはいま、夢が叶ったぞ~」とヒロト。そう叫ばずにはいられないくらい、シナロケと一緒にやれることが嬉しかったのだろう。その喜びをこんなにも素直に言葉にするところがヒロトのステキさだ。一緒にやろうと言って始まったのは「アイ ラブ ユー」。ルーシーと一緒に本当に嬉しそうに歌い、鮎川さんに届けとばかりに「アイラヴュー・アイラヴュー・アイラヴュー・アイラヴュー」と何度も凝り返す。この1曲のみでこの夜最大級の風を起こしてステージを去った。

ゲストやみんなに感謝の言葉を述べ、「天国が賑やかになってきたけど、生きてるもんが頑張ってロックせにゃいけんよ」とルーシー。「シーナは天国にいきよったけど、オレたちはこれからも地上でロックします」というシーナさんの葬儀のときの鮎川さんの言葉に呼応するかのような力強いメッセージで、この夜の、このライブの伝えんとすることがその一言に凝縮されていた。そして、これが私の素敵な夢なのだと伝える「ユー・メイ・ドリーム」。アウトロのタンバリンのシャンシャンシャンってところが、ルーシー版「ユー・メイ・ドリーム」って感じで僕は特に好きだ。

アンコールはまずシナロケのデビュー曲で、先頃出た『1979 DEMO』の音源もパンクっぽくてかっこよかった「涙のハイウェイ」を4人で。そしてこの日のゲストたちが(ヒロトを除き)揃って再登場しての「I WANNA BE LOVED」と「ROCK IS ALRIGHT」で賑やかに締め。5月の追悼ライブも最後はみんな揃っての「ROCK IS ALRIGHT」だったが、『ROCK THE ROCK』収録のジョニー・サンダース曲「I WANNA BE LOVED」は僕はライブで聴いた記憶がなかったので、おおっ、これやるか!と熱くなった。しかもここでも奈良さんが多めにヴォーカルをとったのだった。

奈良さん、川嶋さん、ルーシーさん、澄田さん、多くのゲストたち。みんなの思いがひとつであることの伝わるライブだったし、そこに鮎川さんとシーナさんの魂も確かに存在していることのわかるライブだった。次から次へと繰り出されるシナロケ及びサンハウスの曲を聴きながら、改めて本当にライブに映える名曲ばかりだよなと僕は感じていた(そう、もちろん音源もいいのだけど、シナロケの曲はライブで爆音で続けて聴いてこそ、その真価がわかるものなのだ)。

それに5月の下北沢シャングリラが鮎川さんの追悼ライブだったのに対し、この夜はもうその色合いを前面に出すことをしていなかった。バンド結成46周年とシーナの誕生日をみんなで祝う、その喜び、祝福感が会場に満ちた、そういうライブであって、それがよかった。

そういうライブにするべくみんなをリードしていたのは、ヴォーカルのルーシーだ。会場でライブをご覧になっていた土屋昌巳さんが「豪華なゲストが素晴らしいのは言うまでもありませんが、LUCYの素晴らしさが圧巻でした」とツイートされていたが、僕もまったく同感。ポップな曲は明るく笑顔で、ロック度の高い曲はキリッと力強く、(「ピンナップ・ベイビー・ブルース」や「レイジー・クレイジー・ブルース」のように)歌を聴かせる曲では情感を込めて色気も滲ませながら歌う、といったように歌唱の幅がますます広がり、歌のみならず動きや佇まいでもそれを表現するようになった。純粋にヴォーカル・スキル自体もアップしている。それに、これは5月の追悼ライブでも感じたことだけど、ゲスト多数となるとライブの運びがごちゃごちゃっとなってもおかしくないものだが、そうならない。ゲストたちへの心遣いが行き届いていて、だから運びも自ずとスムーズになるのだ。

奈良さんはご自身も歌うことを引き受けた。川嶋さんも意思を強くしてバンドの重心を支えている。澄田さんは鮎川さんのブラックビューティーであの音を鳴らしながらも正確だ。そしてルーシーの歌と意志が頼もしくバンドをまとめている。そのように、ここにきてまたバンドが進化を見せている。それって凄いことだよなと僕は思う。見守っている鮎川さんもきっと誇らしい思いだろう。

物語は続く。続けていく意思がなくならない限り続くのだ。
だから、改めて、祝!!  46周年。


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