「石田長生展2019 SONGS Of Ishiyan」@恵比寿ザ・ガーデンホール

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2019年9月22日(日)

恵比寿ザ・ガーデンホールで「石田長生展2019 SONGS Of Ishiyan」。

前の週の大阪編が約5時間の長丁場だったのに対し、東京編はその半分の時間でコンパクトに。大阪はひとり3曲くらいずつだったが、ここでは1曲ずつということで、出演者も観てる我々もあったまりかけたところでまた次の歌手にバトンタッチ……といった感じなので、なかなかグルーブのようなものは生まれない。「ああ、このひとの歌、もう1~2曲聴きたいのに」という気持ちになるところも多かった。がしかし、その分、それぞれがその1曲に思いを込めて歌ったり演奏したりしていたとは思う。

それぞれが歌ったのは、どれもCD『SONGS OF Ishiyan』のためにレコーディングされた石やんの曲。

出演は順に、上田正樹→松永希→ヨモギ→Leyonaと三宅伸治→押尾コータロー→桑名晴子とChar→山崎まさよしとChar→中村耕一と三宅伸治→有山じゅんじと山岸潤史→リクオ(Charとヨモギが参加)→大西ユカリ(ヨモギ参加)→木村充揮→三宅伸治と山岸潤史と近藤達郎→金子マリ→Char。アンコールは(上田正樹を除いて)出演者全員で。

「石田長生展といいますが、展示物はいっさいございません」といったCharのアナウンスで始まり、「はりきってどーぞ」の声があって登場したトップバッターは、なんといきなり上田正樹。何度か天を指しながら「Brothers&Sisters」を歌った。「石田とは、今日ここにいてるひとのなかで一番古い」と言いながら、石やんと出会った当時のエピソードを披露し、「石田といろんな仕事をしました。おおきに、石田。聞いてるか、石田。もうすぐそっち行くから。もうちょい待っててな」と言うキー坊。抑えめで歌っても抜きんでた歌唱技術が伝わってきた。

続く松永希は、ウクレレの今井忍、マンドリンのロケットマツ、クラリネットのアンドウケンジロウと一緒に「タマナの木の下で」。歌声はもちろん、マンドリンやクラリネットの音色が優しい。「明日もここで逢えるかな」という歌詞にちょっと切なくなった。

ヨモギはパーカッションのマック清水と3人で「Ballad#5」を。Leyonaは「伸ちゃんがいてくれるだけで安心です」と言い、三宅伸治のギターに乗せながら気持ちを込めて「星空」を歌った。そして押尾コータロー(ダブル清水ことマック清水と清水興のサポートもあって実にいい響き)、桑名晴子とCharと続き、Charがそのまま残って山崎まさよしを迎えると「今日は飲んでる?    酔っ払ってないとホントにつまんないやつで。よかった、飲んでて」などといじりながら「真夜中の歌姫」を。石やんがマリさんをイメージして書いたと言われている曲だが、山崎まさよしの歌は原曲とはまったく別物で、それが面白い。

中村耕一と三宅伸治、有山じゅんじと山岸潤史と続いたが、観客はまだおとなしくじっと観ているという感じだった。そこが大阪とは違うところ。ちょっとおとなしすぎるようにも思えた。が、続いてのリクオが空気を変えた。Charとヨモギも参加しての「アミーゴ」は、その楽しい曲調もあって大いに盛り上がった。ようやく明るく楽しい雰囲気になったところで、そこに大西ユカリが続いた。大西ユカリは出てきた途端に「宴もたけなわプリンスホテルやで」とかまし、「今日はCDに入ってる曲だけ。だーれも自分の曲、歌わへん」と続けて笑わせるあたり、さすがのエンターテイナーっぷり。大西に合わせて豹柄衣装を着たヨモギも混ざっての「Everybody毎度!On The Street」で金井克子ミーツ志村けんといったフリを見せるも観客が誰もそれをやらないでいると、「なんで東京のひとはこれもできへんのかな。大阪は石やんのためにみんなやっとったで」と煽り、そうしてみんなにそのフリをやらせたりも。さすがでした。

続く木村充揮もやはり素晴らしかった。出てきて「おじゃまします」と一言いえば、そこには木村特有の時間がユル~っと流れることに。で、観客にも「ユル~」が伝染しそうになったところで、ガツンとかました「ねえ、神様」。その緩急のつけ方がずば抜けているのだ。それにしてもいい曲、いい歌詞。何度聴いてもグッとくる。続いての三宅伸治と山岸潤史と近藤達郎(リズムは清水興とロジャー高橋)による「青洟小僧」も熱が入っていた。わけても三宅と山岸のブルースギターのかけ合いは惹き込み力がすごく、さすがにこの日一番の拍手が起きていた。

金子マリの包み込むような「Mother's Song」に続いて、トリはもちろんChar。みんな1曲ずつだが、Charだけは「ラジカセ」と「ニッポン Char, Char, Char」の2曲を演奏。そしてアンコールでは上田正樹を除いた全員がステージに再登場して「Happiness」と「ザ・ウェイト」の2曲を。「Happiness」では大西ユカリ、Leyona、金子マリ、桑名晴子と女性たちが真ん中に集まって歌い、わけてもマリさんと晴子さんが声を合わせた場面は個人的に強く印象に残った。そのなかでCharは仕切り役となって、その場でそれぞれに出番をふったりも。ある意味、無茶ぶりというやつだが、それに対応できるかできないかはその人の度量とセンスにかかってくるわけで…。いや、みなさん、さすがでしたね。で、ここでも木村さんがセンスを発揮。また「ザ・ウェイト」はリクオから歌い始め、山崎→三宅→Char&木村→中村というふうにリレーで歌をまわしていったのもよかったところだった。

とまあ、そんなこんなの約2時間半。自分的には、喋りの面白さで会場の空気を一瞬で変えてみせた大西ユカリ、歌唱の強度が群を抜いていた木村充揮、ホストとして大人数の出演者たちをひとつにまとめたCharのステージが特に印象に残った。ひとり1曲ずつの物足りなさがあったのも正直なところだが、なんにせよ改めて石田長生が残した楽曲群の幅の広さと素晴らしさを実感できた、そんな(大阪・東京、2ヵ所の)「石田長生展」だった。

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↑『SONGS OF Ishiyan』絶賛発売中。愛と魂のこもった2枚組だと思います。

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