なにわブルースフェスティバル2019「続 少しだけ石田長生展&道頓堀でブルース&ソウルナイト」@なんばHatch

画像1

2019年9月14日(土)

大坂・なんばHatchで、なつかしい×あたらしい なにわブルースフェスティバル2019「続 少しだけ石田長生展&道頓堀でブルース&ソウルナイト」。

なにわブルースフェスの2日目。前日が明確に「石田長生トリビュート」というテーマを打ち出していたのに対し、2日目となるこの日は「少しだけ石田長生展」とタイトルにある通り、含ませながらもそれを全面に表わすわけではない……というあり方。よって石やん関連の曲を演奏したバンドもしなかったバンドもあったが、やはり石やんのことを感じないではいられない場面はちょいちょいあったのだった。

確固たるテーマがあっただけに1日目は一貫性があった、それがよかったと前回書いたが、2日目はハードロッキンブルースもあれば歌謡ショー的なものもあり、あれやこれやと賑やかな幕の内弁当的なあり方。後半はちょっとだけとっちらかった印象もなくはなかったが、こういうイベントだからこそ見ることのできたものが多く、やはり大阪で観ることができてよかったなとまたしても思った。

この日の幕開けを飾ったのは、三宅伸治&the spoonful。その1曲目にいきなりサプライズであのひとが登場したのには驚かされた。Mr.Oshokuこと甲本ヒロトだ。いつものあの感じで飛び出してきたその瞬間に着火。曲はもちろん、『SONGS OF Ishiyan』でとりあげた「汚職」。翌日「木村充揮ロックンロールフェスティバル」でも観ることのできたクロマニヨンズのライブは、基本的に明るくて楽しい種類のものだが、この曲でのヒロトはブルースハープを吹きながら怒りの表情で歌い、なんというか鬼気迫る感じだ。こういうヒロトはいい。石やんが「もっとも好きな日本のブルースハープ・プレイヤー」として名前を挙げていただけあって、その吹奏も迫力あり。「最後まで楽しんでってください!」と一言だけ残して嵐のように去っていった。

と、三宅伸治は間髪入れずに続いてのゲストを呼び込む。中村耕一だ。曲はソー・バッド・レビューの「最後の本音」で、ここでthe spoonfulのメンバーでもあるKOTEZもステージに。中村の迫力のシャウトがこの曲に合っている(歌詞もまた…)。中村が一旦去ると、三宅伸治のヴォーカルで「ベートーベンをぶっとばせ」と「JUMP」。三宅はギター弾きながら客席におり、そのまま客席後方に進んだり、椅子の上に立って弾き倒したり。複数出演のイベントではサポートに徹することも多い三宅だが、ここではオレが主役といわんばかりの大熱演で、惹き込まれまくったし、胸が熱くもなった。the spoonfulも最高だ。僕はこのバンドでのライブをこの日初めて観たのだが、高橋"Jr."知治(b)、KOTEZ(hca)、茜(ds)という3人と、そのフロントに立つ三宅というのがなんとも絵的にかっこいい。KOTEZは「JUMP」で曲名通り、ヒロトに負けてないジャンプを見せ、元ズクナシの茜はこんなにパワフルでこんなにロック的なドラマーだったのかと驚いてしまうほどの叩きっぷり。おキレイだし、ずっと笑顔で叩いてるし、いやあ、ステキですねぇ、姉さん。というのもあって、バンドとして華があるんだな、the spoonfulは。

続いてのバンドはOSAKA ROOTS。大阪で活動する若手(82年生まれのギター・久米治樹を中心にした主に30代のバンドなので、ブルースの世界では若手と言っていいでしょう)ブルース・バンドで、自分がライブを観るのはこれが初めて。ぶっとんだ。ふてぶてしい顔つきで演奏する久米はバディ・ガイあたりの影響を受けているのか、日本ではちょっと珍しいくらいゴリゴリにギターを弾きまくる。まさにゴリゴリ。洗練なんか知ったことかといった感じで、剥き出しなのだ。南あやこのサックスもパワフルな上に個性がある。かなりアクの強いバンドだが、あんなふうにハードブルースを叩きつけるバンドはそうそういないし、東京じゃなかなかライブを観れなさそうなので、このイベントで観ることができてよかった。そして、再び中村耕一が登場し、OSAKA ROOTSをバックにサム・クック「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」などを熱唱。

続いて、この日も幕間でナオユキ。拍手と歓声がものすごい。ブルースフェスになくてはならない存在であることを改めて実感した。そして、さあ、早くもザ・たこさんのオンステージだ。

ザ・たこさん。少し久しぶりに観たら、安藤登場タイミングでの曲が変わっていた。おっ、新鮮。そして、ソー・バッド・レビューのデビューアルバムから「お母ちゃん俺もう出かけるで」と「おおきにブルース」の2曲をザ・たこさん流解釈でカヴァー。これはレアだ。ソー・バッド・レビューを聴いたことのないひとはポカンとなってたようだが、「石田長生追悼」でこの2曲を選ぶのが実にザ・たこさんらしい。完全にこの日のために用意した曲だろうから、聴けたのはラッキーだった。で、「お豆ポンポンポン」。これはまあいつものお豆だが、あとで登場する大黒摩季が楽屋でこれを聴いて衝撃を受けたよう。大黒は自身のステージで「あれを聴いて、まだまだ私の歌詞は甘いなと思った」と話していた(笑)。そんな、大黒摩季に衝撃を与えた我らがザ・たこさんは、最後は「突撃!となりの女風呂(On A Blow)」のショートヴァージョンで締め。20分はあっという間にすぎたが、この日だけのセットリスト、この日だけのザ・たこさんを観れたのがよかった。

で、ここからはブルースギターのあれこれをとことん味わう時間に。ichiro、原田喧太、住友俊洋の3人は、原田のヴォーカルでファニカンの「スウィートホーム大阪」などを聴かせ、続いての永井ホトケ隆、山岸潤史、松本照夫、清水興という、ほぼほぼウエストロードブルースバンドは、「First Time I Met The Blues」での山岸とホトケさんの弾き合いの生々しさとハードさがすごくて、やられた。

そんな濃いめのブルースの時間に続いて、幕間で桜川春子の弾き語り。前日は泥沼恵美子としての登場だったが、この日はマリリン・モンローに扮して「ライク・ア・うどん」など。ある意味シュール。前日以上にぽかーんとしてるひとが多数いたが、僕的にはやはりツボに入って、くっくっく。

続いての近藤房之助トリオ(宮川剛、柳原旭)は、ジャジーなあり方で「ストーミー・マンデー」など。この感じはライブハウスで改めてじっくり味わいたいもの。そしてそのあとは木村充揮と有山じゅんじの出番。ふたりは仲良く手を繋いでステージに出てきたのだった。かわいい…。

木村さんと有山さんはふたりでまず「あなたも私もブルースが好き」を。これぞまさしく阿吽の呼吸。そして、金子マリが呼び込まれる。木村さんと有山さんの駄洒落の応酬に困り果てるマリさん(笑)。歌われたのはマリさんが作詞して木村さんが作曲した名バラードの「ラリル」だ。そのときの木村さんのギターの音色の美しさたるや。さらに近藤房之助も加わって、木村さんの「出稼ぎブルース」をみんなで。名人たちの楽しそうな揃い歌。来てよかったと実感した数分間だった。

再び、幕間でナオユキ。ここではナオユキが初めて石やんと会ったときのエピソードもあって、聞いてたみんなが「おおっ」と声をあげた。

大黒摩季。彼女目当てで来てたファンの方が前のほうには多くいて、ペンライトを持って一斉に立ち上がる。原田喧太と山岸潤史がギターを弾き、ストーンズ「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」などを歌う大黒摩季の声量はなるほど豊か。ここは私のステージよとばかりに自分ペースで動いて聴かせて進めるそのあり方を見ていて、女版・矢沢なんてふうにもチラと思った。山岸が薦めたというトレイシー・チャップマン曲なども歌い、最後は近藤房之助と永井ホトケ隆も加わって、ヒット曲の「ら・ら・ら」を。実は房之介さんとホトケさん、この曲のレコーディングにもコーラスで参加していたのだそうだ。大黒摩季が真ん中でコーラスするよう引っ張るも、照れてステージの隅から動こうとしないふたりが(こう言っちゃなんだが)かわいかった。で、多くのひとがここで立ち上がって一緒に「ら~ら~、らら~ら~」と歌ったり。え? これってなんのフェスだっけ? と一瞬思いもしたが、とにかく「ら・ら・ら」パワー、恐るべし。

トリは、上田正樹。ギターが有山じゅんじ、鍵盤が堺敦生、コーラスがYoshie.Nだ。1曲目から「悲しい色やね」。石やんの代表曲「Brothers & Sisters」では、“Where are You?  元気かい?”、そして“Can you hear me 石田~”とも歌っていた。最後は「僕の本当のブラザーが来てます」と言ってドラムのケニー・モズレーを呼び込み、「ウイ・アー・ザ・ワールド」を。なんでいまここで「ウイ・アー・ザ・ワールド」なのかはよくわからんが、それはともかく、僕は有山さんの、キー坊の立て方、そのサポートぶりのステキさにグッときていたのだった。

アンコールではキー坊と有山さんを中心にして、出演者のほぼ全員がステージに。曲は「あこがれの北新地」と「梅田からナンバまで」。これぞ大阪。かくして「なにわブルースフェスティバル2019」、1日目は東京のCharが最後をまとめ、2日目は大阪の上田正樹がまとめる形で、いい着地を見せたのだった。

因みにこの日は前日をさらに上回って、約5時間40分。2日間がっつり観ての感想は……こりゃ、東京じゃ成立しないよな、やっぱ大阪だからこそだよな、と。出演者のみなさま、スタッフのみなさま、お客さん。お疲れ様でした。繰り返すけど、大阪まで観に行って本当によかった!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?