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ぎがもえか、Hedigan's@渋谷WWW
2024年3月6日(水)
渋谷WWWで、ぎがもえか「Into the new horizon」。ゲスト: Hedigan's。
対バン、ではなく、ぎがもえかさんのライブにHedigan'sがゲストとしてお呼ばれした形のもの。
まずはHedigna's。自分は先週の渋谷クアトロ公演で初めて観てライブバンドとしての破格の実力と魅力を感じ、かなり惚れ込んでしまったので、今回もチケットを買って観に行くことにしたのだった。
幕があがると、そこにバンドがいた。センターにYONCEがいて、彼を挿む形でステージ向かって左に祐輔(鍵盤)、右に将治(ギター)の栗田兄弟。後方にサポートで入っている井上真也(ベース)、そして大内岳(ドラム)。大内岳はぎがもえかのバンドでも叩いているドラマーで(ほかにも多数のバンドで叩いている)、この夜の二組を繋げたキーパーソンでもあるとも言える。YONCEはクアトロでは長い髪をときに振り乱しながら歌ったりもしていたが、この夜は髪を結わいていた。
イントロダクション的な役割もあるインストナンバー「夏テリーの物語」(EP未収録曲)でジワっと始まり、1stシングル曲「LOVE(XL)」へ。この曲のスローさ……”ノセる”ではなく“聴き入らせる”その感じがHedigan'sの基調トーンだ。ノッたり騒いだり跳ねたり手ぇあげたりがロックのライブだと思っているような聴き手は戸惑うかもしれないが、奥行きのある演奏とYONCEのヴォーカルにはその深遠な世界観に聴き手をグッと引きずり込む力がある。クアトロ公演の記事にも書いた通り自分はSuchmosの熱心な聴き手ではなかった故に以前との比較はできないが、YONCEの歌声には幅があり、ファルセットも弱まることなくしっかり出る。深みがあって、妖しさもある。こんなにも表現力の高い魅力的なヴォーカリストだったのかと自分は今頃になって気づき、同時にHedigan's楽曲の詞世界から詩人としての彼にも惹かれだしたのだった。
先週のクアトロ公演に比べて短めの持ち時間である故、あの日の中盤に続けてやった新曲はなく、EP『2000JPY』の曲で組まれたセトリ。音源とはアレンジの大きく異なる「説教くさいおっさんのルンバ」と、そこから続いての「敗北の作法」、その流れがやはり圧巻だ。ギターの将治はブタの鳴り物を鳴らし、井上は笛を吹き、鍵盤の祐輔もパーカッションをしゃかしゃかして、YONCEはギターを顔のあたりまであげて反響させながら歌う。サイケとも言えるし、狂気とも言える。「敗北の作法」の終盤はいつ終わるともなく時空の歪むような演奏が長く続き(シューゲイザー的とも言えるか)、観てるこっちもトリップしたような感覚になる。
5人が5人とも自由に演奏しながら、見事にアンサンブルが成り立っている。そこに信頼関係が見て取れる。このバンドの一員であることが、このバンドで演奏することが、楽しくてしょうがない。といった感じが、ステージ上の全員から伝わってくる。楽しいといっても別にニコニコ笑って演奏しているわけではない。わけではないけど、間違いなく5人が自由に音を鳴らして、その重なる様を心で楽しんでいるのがよくわかる。だから僕は引き込まれながらもニヤニヤしてしまう。やばい演奏に入り込んでいると、ニヤけてしまうってこと、あるでしょ? それ。
で、締めはこの曲。
セットチェンジを挿んで、この夜の主役のぎがもえかさん。自分が観るのは初めてだった。
妊娠中(8ヵ月だそうな)ということで、活動休止前の最後のライブ。MCでは、Hedigan'sが「説教くさいおっさんのルンバ」を演奏しているときにお腹の中の子がぐぐぐっと動いて反応したと言っていた。
毛布のように柔らかくあたたかな歌声。その歌声を最大限に活かすキュッとしまったミュージシャンたちの演奏。大内岳さんのドラムは、Hedigan'sのときの体重の乗せ方とはまるきり違い、言葉にするのは難しいが、歌に寄り添うようというか守っているようというか、なんというかそんなニュアンスを感じた。こういうドラムが後ろで鳴っていたら本当に安心した気持ちで歌えるだろうなぁと、そう思えるような。
少し昭和の歌謡的なメロディ感を持った「横に縦に」という曲が特に印象的だった。深夜にAMラジオで偶然流れてきてほしい、そんな曲。
それにしても、あんなにフンワリと優しく大きく心を包み込むような歌声で毎日子守唄を歌ってもらえるんだから、これから生まれてくる彼女のお子さんは幸せ者だな。
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