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『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

2020年3月24日(火)

TOHOシネマズ シャンテで、『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』。

めちゃめちゃ面白かった。キャッチコピーの通り、まさしく「圧倒的 熱量を、体感。」。

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言葉と言葉の殴り合い。フリースタイルダンジョンに例えるなら三島は「最強のモンスター」ということになるが、場は1000人以上の学生たちが集まる言わば完全アウェーなわけだし、楯の会の数人が潜伏してたとはいえ壇上で東大全共闘と相対するのは最初から最後まで三島ひとりだし、チャレンジャー対モンスターという図式も当てはまらないし、そもそもこれはゲームじゃない。

何よりラップゲームと違うのは三島の姿勢で、氏は相手を論破しようとなどしない。相手がいかに挑発してこようとも三島は感情的になることなく、誠実に、真摯に(ときにユーモアも混ぜながら)、相手の話をきちんと聞いたうえで話をする。カメラが向けられればそれを意識しての表情をするが、ときおり浮かべる笑顔はなんともチャーミングで、そのバランスはロックスターさながらに魅力的だ。

一方のモンスター、芥正彦もまたキャラ立ちがえらく際立ってて惹きつけられる。赤ちゃんを抱っこして現れたり、急に声を荒げたり、もういいや帰るわみたいな感じでそこを去ったりと、演劇人だけあってパフォーマンス的とも言えるけど、細い目と髪型はフォーク期のキヨシローっぽくもありソフトオンデマンドのルミナックスっぽくもあり、ひとたらしだったんだろうなとも思えたり。

映画としての構成もしっかりしていてこの時代とそのひとたちへの知識が足らずとも入りやすく、三島を論じる文化人…わけても平野啓一郎さんの言葉がわかりやすくていろいろ腑に落ちるし、プロデューサーと監督がこの作品を2020年のいま世に問うた意義もよくわかる。

顔も知らない人間がクソリプとかいう悪意だけの言葉をいきなり飛ばして、はいオレの勝ちー、オレが正義ー、みたいに満足して生きてる、そんないまとは違って、この映画のなかにいるひとたちは正々堂々と言葉で闘っている。聞いて、話す。つまり「会話」するってことの大事さを、突き詰めれば監督は三島を通して伝えたかったんじゃないかと僕は受け取りましたです。

「熱と敬意と言葉」。自分はそれ、どれだけ持てているか。頭は悪いけどそのみっつなら持ってるぜって、本当に心底言えるのかどうか。突きつけられちゃったなー。


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