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May J.@Zepp Diver City

2022年7月18日(日)

Zepp Diver Cityで、May J.「Tour 2022 -EMPOWERMENT-」。

昨年12月、4年ぶりのオリジナルアルバム『Silver Lining』が発表される際に初めてインタビューをし、その縁と、そのアルバムがよかったこともあり、ライブを観に行った。デビュー16周年だそうだが、自分が彼女のライブを観るのは今回が初めて。

新作『Silver Lining』はyahyelの篠田ミルとガッツリ組んで制作された作品で、そこでのエレクトロサウンドと抑制された歌唱法、心の内側を包み隠さず表現したダークな歌詞は、従来のMay J.像を完全に覆すものだった。それはオルタナティブ的でかっこいいと思えるもので、だからインタビューも引き受けた。

そして今回のライブに自分が期待したのも、そのアルバムで示した新たな方向性をライブではどのように表現するのかということだった。「求められているMay J.像から脱却して、本当に自分が表現したいことを表現する。それが初めてできた」のが『Silver Lining』だと彼女はインタビューで話していたので、そのアルバム楽曲が主軸じゃないにしても、その意気を多少なりとも反映させたライブになるんじゃないかと期待して観に行ったわけだ。


開幕早々、その『Silver Lining』から「DRAMA QUEEN」と「Paradise」の2曲が続けて歌われた。それはエレクトロサウンドとバンド生演奏がいい合わさりをし、派手なダンスも付いた見せ方で、ライブバージョンとしていい具合にアップデートされたものではあった。しかし、『Silver Lining』から歌われたのはその2曲のみ。あくまでもこのライブのひとつのピースに過ぎないという扱いだった。

邦楽カヴァー( Official髭男dismの「Cry baby」など)あり、ミュージカル『ボディガード』で歌ったホイットニー・ヒューストン楽曲の日本語カヴァーあり。R&B歌謡あり、ラテン歌謡あり。「Let It Go」などのヒット曲ももちろんあり。カヴァーだろうとなんだろうとザッツ・May J.と言える自分色に染めあげる力はたいしたもので、なにせ初めてライブを観た故、純粋に声の出力の凄さにも驚いた。

バンドの演奏のレベルは非常に高く、May J.が16年間でトライしてきたあれこれを約2時間にギュッと凝縮したような内容でもあったので、ファンの方々は満足したことだろう。

ただ、これはまさしく、彼女自身が取材で言っていた「求められているMay J.像」に応えた作りのライブで、『Silver Lining』で試みたような「そこからの脱却」を見せるものでは全くなかった。今年4月に『Silver Lining』を主体としたスペシャルライブがあり、自分はそれは観に行けなかったが、あのアルバムの方向性はそこで存分にやったので、今回はまた元に戻して……ということなのかもしれない。

彼女のやりたいことはやっぱりこういうものなのか。それとも今回は16周年の記念的ライブなのでそうしたが、新機軸を打ち出すライブもまた今後やろうと考えているのか。そのあたりはわからない。が、『Silver Lining』は紛れもなく彼女がいま本当に表現したいことであった故、そこをもう少しこの本流ライブに反映させてもよかったんじゃないか、とは正直思った。


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