見出し画像

『エルヴィス』感想。

2022年7月2日(土)

『エルヴィス』をグランドサンシャイン池袋のIMAXにて。

エルヴィスの映画ってことでマーベルの新作を観るのと同じくらい胸踊らせて観に行ったら、これが期待以上。個人的には今年のベスト5に入るだろうってくらい、よかった。

ずっと聴き続けてる超・大ファンというわけではないけれど、エルヴィスは10代の頃によく聴いた。80年代初頭に公開された『ジス・イズ・エルヴィス』は劇場に観に行ってサントラ盤を繰り返し聴いていた。映画の内容はあんまり覚えてないけど、そのドキュメンタリーもエルヴィスの生涯を追ったもの。だが、それと今回の『エルヴィス』では当然ながらも切り取り方がまったく違っていて、そうかぁ、そうだったのかぁ、ここまで波乱に満ちた生涯だったんだなぁと改めて感じ、胸が苦しくなりもした。しかし、ライブシーンでは純粋に「くぅ~、やっぱエルヴィス、超かっけえ~」と興奮。上映時間を知らずに観た自分は、あとで2時間39分あったとわかって、「え? そんなに長かった?」と思ったくらいに引き込まれて観た。4時間のバージョンもあるそうだが、それを観てみたい。つまりもっと観たいということだ。

まずエルヴィスを演じるオースティン・バトラーがいい。若い時代は自分の知るエルヴィスと少し印象が違う気もしたが、時が進んで年齢を重ねるほどに(体重が増えるほどに)エルヴィスへの憑依度がどんどん増していってた。声も、動きも。因みに所作指導のポリー・ベネットは『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックにフレディの所作を叩きこんだ人らしく、なるほどねえ、と。

脇では、シスター・ロゼッタ・サーブ役のヨラも、B.B.キング役のケルヴィン・ハリソン・Jr.もよかったが、なんといってもリトル・リチャードを演じたアルトン・メイソンが色っぽく、バネみたいなカラダの動きにグルーヴがあって、よくぞ彼をキャスティングしてくれました!と思った。

ほかにもビッグ・ママ・ソーントン、アーサー”ビッグ・ボーイ”クルーダップほか黒人音楽の偉人たちがエルヴィスにどんな影響を与えたかもわかって興味深かった。さらにファッツ・ドミノ、マヘリア・ジャクソン、ストーンズ(オルタモントの悲劇)、ビートルズ、ジャクソン5などへの言及もあり、エルヴィスを通して音楽史の移り変わり~栄枯盛衰が見えてくるのも面白かった。

役者たちもみんないいが(トム・ハンクスはマジで大嫌いになるくらい上手い)、この映画、なんといっても編集が巧い。あの人物を使ってあんなセリフを言わせるか、とか、あの曲の歌詞の一節を使ってそのときのエルヴィスの状態・心情をこう表現するか、とか、いろいろ気がきいている。⁡この曲をここでこんなふうに使うかぁ…とか感心しながら泣いちゃったりもした。⁡⁡また、前半はテンポが早すぎるだろと思ったけど、中盤からテンポ感がまったく変わって、それも後半に説得力を持たせるためだったんだなと納得&感心。

⁡⁡50~70年代のアメリカを見せるだけでなく、スターの孤独、人種問題、親問題、薬物、不当な長時間労働と搾取などなど今に通じるいろんな問題を盛り込んで見せるのも2020年代的だ。

エルヴィスとその音楽のよさは、例えばビートルズみたいには若い人に語り継がれていない。なので「ここでこの曲きたー!」みたいな興奮は僕くらいの世代とそれより上の世代じゃないと得られないかもしれない。けど、ギラギラしたロックンロールってやっぱいいわ、気持ち上がるわ、ぐらいの感覚は、知らない人にもちゃんと伝わるんじゃないかと思うんだが、どうだろう。ロックンロールはこの時代になってもまだ有効だし最高なものなんやで。ってことを、今をときめくマネスキンに託して伝えてくるあたりもいいじゃないですか!!

あ、あと、リサ・マリーが歌手デビューした際にインタビューさせてもらった自分としては、幼少時代の彼女を見ながらその後の人生を思い、ちょっと苦しくなったりも(でも彼女はこの映画をとても好意的に受け止めて観たそうなので、そこは少しホッとしましたけど)。

IMAXで観ること、おすすめします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?