「梅津和時プチ大仕事 2019~D.U.B. 片山広明に捧ぐ」@新宿ピットイン

2019年2月16日(土)

新宿ピットインで「梅津和時プチ大仕事 2019~D.U.B. 片山広明に捧ぐ」。
出演: D.U.B.=梅津和時、早川岳晴、菊池隆。ゲスト:仲井戸麗市。

知らずに観に行ったのだ。これが「片山広明に捧ぐ」ライブだということを。終わって見てみたら、チケットにもピットインのフライヤーにも「D.U.B. 片山広明に捧ぐ」とちゃんと書いてあったが、僕はそれに気づかず、ただ「今年もプチ大仕事にチャボが出るんだな、よし行こう」とチケットをとっただけだったのだ(一緒に行った友達もまた、これがそういうライブだと知らなかった)。

なので、どうやらこれは片山さんの追悼ライブ的なものなのだなと気づいたのは梅津さんが片山さんの名前を出して話しだしてからだったんだが、それでもまだそのときは全編がそういうものになるとは思っていなかった。だから、観ながら僕はちょっと驚いていたのだ。こんなに明確に片山広明さんを追悼するライブが行われていることに。チャボもそれをあんなにストレートにやってることに。

1部はD.U.B.の3人で。梅津さんは片山さんが吹いていたところも自分が二役するつもりで吹いたというようなことを話していたが、実際、片山さんばりにブバボボボボとぶっとい音を鳴らす場面があった。その音ははっきりと片山さんを意識しながら吹かれた音だった。それがまず凄かったし、早川さんのベースもいつもチャボのライブで聴いてるときよりも音がゴリゴリしているというか太いというか、なにしろ何か特別な熱を感じた。D.U.B.の演奏は凄まじかった。

1部が終わって休憩用に設けられた時間には、梅津さん所蔵の片山さんとの数々の思い出写真がスクリーンに映し出され、これはどこどこのツアーのときのもの、右に写ってるのは清志郎ですね、などと梅津さんが一枚一枚短く説明。若き日の片山さんや梅津さんや清志郎たちはそれぞれにチャーミングだったりもして、悲しいムードではなく笑いありのあたたかな空気が会場を満たした。

そして2部でチャボがステージに。はじめのうちこそ休憩時の楽しくもあたたかなムードのまま進んでいったが、チャボが片山さんとのエピソードを話したり、梅津さんと早川さんと3人で片山さんとの思い出を話しだしたりしたあたりから、やはりそれだけではない感情がそれぞれの演奏にも発する空気にも目に見えて含まれるようになっていった。

まず、D.U.B.の演奏に乗せて片山さんのソロアルバムのためにチャボが書いたライナーノーツを朗読するというその場面で、チャボが片山さんへの気持ちをかなりダイレクトに解き放った。予め書かれたものを読んでいるわけだが、読んでるというよりは途中から叫びになった。そうは言ってないが、聴こえてんのか片山ばかやろー、というような、そんな叫びにも感じられた。

「ハレルヤ」では、とりわけ早川さんの歌とベースがエモーショナルだった。ほかのライブであまり見たことのない早川さんがそこにいた。そして、それに続く「帰り道」という曲。副題が「あいつのブルース Song for H.K.」であることをつぶやいてチャボは歌い出した。チャボは片山さんのお通夜から帰るときに車で片山さんを思ってこれを作ったと話していたが、RCの「甲州街道はもう秋なのさ」も途中で歌い込まれたこの曲が、あからさまに悲しい曲調ではないだけに心に沁みた。「ハレルヤ」~「帰り道」。この2曲がこの夜もっとも深く自分の胸に刻まれたのだった。

それから「いい事ばかりはありゃしない」「雨上がりの夜空に」とRC曲を続け、アンコールは「ガルシアの風」。「雨上がり~」は木曜日に川崎チッタでも聴いたばかりだが、のんシガレッツのみんなと演奏で掛け合ったりハグし合ったりしてた2日前の「雨上がり~」の聴こえ方とは全然違って、本来そこにいるはずの二人の不在を強く思い、さすがに切なくなった。けど、アンコールの「ガルシアの風」がこの日はレゲエ調のアレンジで、それはなんというか救いのようにも感じられ……。音楽はやはり救いであり、これから続いていく(続けていく)ためになくてはならないものであり、D.U.B.とチャボはそういうこともこのステージで表現したかったんじゃないかな、などと僕は思ったりした。

終わってから友達と飲んで、熱く話してたら終電を逃した。タクシーで下北に帰る途中、車のなかで片山さんのことを考えて「帰り道」を書いたというチャボのことを、酔っ払いながらもぼんやり思った。


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