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ビッケブランカ@東京ガーデンシアター

2022年10月30日(日)

有明・東京ガーデンシアターで、ビッケブランカ。

初めて行った東京ガーデンシアターは、ステージ向かって客席が半円状で、3階バルコニー席からもステージが近くに感じられる構造。椅子の座り心地もよかったし、なんたって音響がよかった。(家からの遠さを除けば)なかなかいい会場だ。キャパは8000人だそうで、ゼップ東京やスタジオコーストがなくなった今、相当の需要がありそう。

自分的には昨年3月の中野サンプラザ以来約1年半ぶりに観るビッケブランカのライブ。「RAINBOWROAD ー軌ー」と題された今回は、新たな主宰イベント「RAINBOWROAD」の第1弾であり、「メジャーデビュー5周年のファイナル」かつ「6年目のスタート」公演でもあるものだ。

レパートリーも増え、メジャーデビュー5周年とあってかインディーズ時代の代表曲は今回は歌われなかったが、「ココラムウ」「Natural Woman」など2016年(メジャーデビュー当時)の、最早ちょっと懐かしく思える曲も久しぶりに歌われ、その頃からのファンも満足させるセットリストになっていたように思う。が、今を生きるビッケであるからして、やはり新曲群がここぞというところに置かれていて、例えば「魔法のアト」はバラード連続タイムの要であったし、「This Kiss」は終盤の盛り上がりタイムのやはり要であったし、「Changes」はアンコールの1曲目といういい場所で歌われた。

タイトなバンド演奏の強度も光った動きのある前半に続き、初めて設けられた花道で丁寧に歌われた中盤のバラード群がライブ全体を通しても印象的だった。「Divided」「まっしろ」「魔法のアト」「北斗七星」。ビッケはバラードをとても丁寧に、グッと感情を込めて歌う。ぶっとんだ曲や爽やかなポップ曲を作るのを楽しむ一方、こうした王道的なバラードもちゃんと大事にし続ける。普通、これだけいろんなタイプの曲を書いて歌えるシンガーなら4曲もバラードを続けないものだが、4曲続けて聴いても1ミリも退屈しないし、1曲1曲に気持ちが入る。彼はそういうバラードが書けるソングライターでもあるからだ。

「Winter Beat」から「Slave of Love」「This Kiss」「Ca Va?」「ウララ」と続いた終盤の盛り上がりタイムは怒涛とも言える流れ。とりわけ「This Kiss」で会場全体がひとつになったことに、音源を聴く限りではそういう曲だと思わなかった故、この楽曲の持つポテンシャルに改めて気づかされた思いがした。そして爆発的な「Ca Va?」(この曲も完全にライブの場で育った1曲と言える)に続いて、「ウララ」でアリーナの全員が腕を高くあげて横に大きく振っているのを上から見たときには、さすがにグっときてしまった。数千人が今、完全にひとつになっている。インディーズ時代にキャパ200人の渋谷のライブハウス(TAKE OFF 7)で観て以来度々ビッケのライブを観てきたファンのひとりとして、それは感慨深い光景だった。客の自分がそうなのだから、当のビッケにしたら尚更だろう。

その曲で、ビッケはダンサーたちとダンスもしながら歌っていた。彼は優れたソングライターであり、ピアノ(またはギター)を弾いて歌うミュージシャン/シンガーであるわけだが、そういうポップアイドル的なところも引け受ける。尊敬するアーティストがミーカであることから考えれば自然だけれど、日本でそういうやり方・進み方をするシンガー・ソングライターはほかにいないので、面白い。

今回もまた「今やりたいことの全部盛り」。でありながら、構成に物語性も感じられ、アンコール最後の「THUNDERBOLT」が「ここまで」と「ここから」のビッケの思いを象徴的に表しているようにも感じられた。確かに「どんな困難も消し飛ぶ」ような力強さに溢れていた。

いろんな意味でビッケらしさを大いに感じられた初のアリーナ公演だった。


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