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T字路s@渋谷・TSUTAYA O-EAST

2020年12月10日(木)

渋谷・TSUTAYA O-EASTで、T字路s。

キネマ倶楽部公演から1年1ヵ月ぶりの東京ワンマンで、自分が観るのもあの日以来だ。

T字路sは正真正銘ライブバンド(ユニットという無機質な言葉が似合わないのであえてバンドと言わせてもらう)で、ふたりもライブが何より好きというひとたち。なので、こんなにもライブができない世の状況がどれだけ辛かったか、想像するとこっちまで胸が苦しくなったし、この前やった取材でも妙子さんは「自分が何者なのかわからない気持ちになることもありました」と話していたものだった。

それ故、今回のツアーにはひとかたならぬ思いがこもっていただろうし、ましてやツアー3公演のうち大阪公演が感染拡大の現状からまたも延期となってしまったこともあって、とりわけこの東京公演(それはふたりにとって2020年最後の公演であるのと同時に、結成10周年の締め括り公演でもあった)に対する思いは強かったことだろう。

そのことがビンビン伝わってきたライブだった。いつにもまして妙子さんは気合いが入っているようだったし、ステージに立って歌える喜びを感じているようだった。言葉でも何度もそれを表わしていた。そして「生き抜こうぜ」とも何度か言った。

こういう状況のなかでのライブなので、1階の席はディスタンスを保たせながら配置され、マスク着用、声を出すのも禁止されていた。現在行われる有観客ライブはみなそういうものになっている。そしてそういう形でもさほど支障のないライブというのもあるわけだが、しかし普段のT字路sのライブは観客が演者に自由に声かけて演者がそれに応えたりもして、そうして互いの熱と熱とで盛り上がっていくもの。であるからして、ジーっと座って静かに観ている観客たちを前に歌うのは、そりゃあ慣れてなんかいないし、やり辛さもあったことだろう。実際、始まりから数曲は、妙子さんの歌がいつもよりカタいように感じられた。ビシっと歌わないとよさが出ない骨格のしっかりした曲が序盤に多かったというのもあったかもしれないが。

でも、「夜明けの唄」を意外と早くに歌い、6曲目「JAGAIMO」、7曲目「涙のナポリタン」と続けたあたりから曲調と相まって徐々に妙子さんもいい感じにほぐれていったようだった。10曲終わって約15分の休憩を挿み、後半戦は前半戦より「らしさ」を取り戻していたように感じられたし、終盤の数曲に至っては2階から観ていた僕にも妙子さんの表情が変わったのがわかった。静かななかにも「白熱」があった。「襟裳岬」~「泪橋」~「T字路sのテーマ」。この流れがピークで、とりわけやっぱり「泪橋」が凄かった。これまで何度も何度もライブで聴いた「泪橋」。そのときどきの「泪橋」があったわけだが、昨夜の「泪橋」は紛れもなく2020年という特種で奇妙な1年の最後に歌われた、「2020年12月10日の泪橋」だった。すげえ曲だな、と、改めて実感。

そしてアンコールは「はじまりの物語」と「新しい町」。ここからの歌。希望しかない。

ダブルアンコールでの「愛の賛歌」もあるかと期待してたが、それはなかった。けど、「はじまりの物語」と「新しい町」で終わったことがいまのT字路sのメッセージにも思えたので、これでよかったのだろう。

静かだけど、恐らく観客ひとりひとりがそれぞれ内側で熱くたぎるものを感じていた、そういうライブだった。

あ、あと、「涙のナポリタン」など2曲で恥ずかしそうに人生初コーラスを入れる篠田さんに胸キュンでした♡

尚、このライブ、配信で13日まで見れるそうです。↓

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