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高木完 KAN暦記念イベント「東京 in the Flesh」@恵比寿リキッドルーム

2022年3月7日(月)

恵比寿リキッドルームで、高木完 KAN暦記念イベント「東京 in the Flesh」。

まん防のアレで当初より開場/開演時間が30分早まり、17時半の開場時間からDJがスタートして、18時にライブがスタート。ライブを観終わり、会場を出るときに時計を見たら21時47分だった。ライブスタートから約3時間45分。自分はライブ開始前のDJタイムからいたので実に4時間15分、前のほうでカラダ揺らして楽しんだことになる。なんか久々だったな、クラブのりであんなふうに立ちっぱで楽しむのは。

始めから主役の高木完がステージに出てきて注意事項など読み上げた上で挨拶。亡き中西俊夫とECDの写真が貼られたプラカードを高く挙げ、それを裏返すと「NO WAR」の文字が大きく書かれていた。

1日も早くロシアの侵攻が終わることを願う。今回のイベント、もし、収益がでたら、全て今回の侵攻で被った方面に役立てるようにしたい。

このイベントについて完さんがブログに書かれた文章はそう締められている。この「集会」には、そういう思いも多分に含まれていたということだ。

ライブは次々にゲストアーティストを迎えて進んでいった。完さんは主役でありながらも自身が進行役となり、(全員ではないが)ゲストとの関係性などもちらっと話しながらステージに呼び込む。自分よりもむしろゲストたちを引き立たせる。それは即ち、完さんのキャリアを貫くスタンスでもあったと思う。パフォーマーであると同時に、というかある意味ではそれ以上に、繋ぎ役(プロデューサーという言い方もできるだろう)として東京のあるミュージックシーンを面白くしてきた(している)ひとだということだ。

初めに呼び込まれたのは立花ハジメ。サックスを吹いて声を重ねる(1曲のみだった)。続いてバンドのラブホテルが数曲。途中でブラボー小松と中原信雄が加わり、さらに戸川純も加わって東京ブラボーの曲を2曲。

サブステージ(的な場所)での須永辰緒のDJに続いて、近田春夫&OMBがLUNASUNとしてオンステージ。続いてサブステージ(的な場所)で中原昌也のDJが始まり、途中でそこにZeebraが入ってラップで盛り上げる。中原昌也とZeebraとはまた珍しい組み合わせだなと思ったが、ふたりは同級生だそうな。さらに高木完もそこに加わる。完さんはふたりと同じ学校(文化学院)の先輩にあたるとのこと。ほぉ、なるほど。

続いてのメインステージは、いとうせいこうis the poet。音も朗読も引き締まっている。前に観たときよりも音に厚みが出た印象。戦争に関しての思いや意思も当然朗読のなかに入る。その言葉の力たるや。演奏が終わると、余韻に浸る間もなくすぐにサブステージ(的な場所)で始まったのがスチャダラパー(&ロボ宙)。さすがに華がある。ど初期の「スチャダランゲージ ~質問:アレは何だ?~」、それに「太陽にほえろ!」テーマ曲使いの「スチャダラパーのテーマpt.1」も久々にやったのは、デビュー前のあるイベントでそれをやったときに高木完が喜んで(絶賛して)、そこからデビューに繋がったから。Boseが「完ちゃん、僕たちもあなたの数多くの作品のひとつです」と、タモリによる赤塚不二夫の弔辞を引用して言っていたのがよかった。

そして雰囲気が大きく変わり、この夜の主役オンステージ。「高木完with Reck、シュガー吉永、吉村由加」。これが凄かった。Reckの圧倒的な存在感。シュガー吉永&吉村由加(METALCHICKS)の爆発的な躍動感。完さんは、ここに至るまでとは表情が変わり、声、言葉を、轟音に負けじと放ち、ギターもかき鳴らしていた。フリクションのカヴァーもあって、音の振動にカラダ丸ごとビリビリ痺れた。見どころだらけだったこのイベントのなかでも、これが抜きんでて凄かった。

続いて砂原良徳のDJ。高木完の「ヒップ,ヒップ,フォーク」もかけてたが、いま聴いてもかっこいい(『フルーツ・オブ・ザ・リズム』を久々に聴き直そう)。そしてメインステージ最後のゲストはヤン富田。モニターの返りがよくないのか、「音が出てないようだ」と言って同じ曲を3回やり直す(実際、音は出てたんだが)。やはり拘りのひと。高木完、いとうせいこうもそこに参加。ヤンさんの時間を気にしない進め方に、観ているこっちも少しハラハラした。そのあとは出演者ほぼ全員がステージに出てきて、Bose、Zeebra、ロボ宙、ANI、高木完とマイク・リレー。主役による一本締めでイベントが終わった。

多くのレジェンドと現役バリバリのミュージシャン(やラッパーやDJ)たちがそこにいた。パンク/ロックの兵(ツワモノ)もヒップホップの兵もごちゃっと混ざってそこにいた。パンク/ニューウェイブにヒップホップにと、いまステージにいるいろんなひとたちの音楽全てが高木完という表現の(あるいは人間の)構成要素であるのだなと思った。と同時に、それはまさしく東京の音楽の縮図のようだった。あの頃の懐かしき東京……ではない。少なくとも自分は2022年の東京がそこにあるように感じていた。

あと、加えるなら、会場全体にある種の背徳感というか、ノット品行方正、ワルい感じが終始漂ってたのもよかったな。いろんな方面のセンス良き不良音楽家たちの集まり、みたいな。そういうの、最近少ないし。ほんと、観に行ってよかったです。

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初となる単行本『東京 in the Flesh』は3/17発売。会場で先行発売してたので買いました。週末に読もう。

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