後悔

以前に実家で猫を飼っていた。

父が亡くなって、お世話できる人がいなくなった。

わたしが大学に戻ってから、猫のことで悩んだ。

13歳くらいの子が2匹。

わたしが引き取りたかったけれど、ペット可のアパートに引っ越すお金も、引っ越す体力もなかった。

お母さんのことでクタクタだった。

引き取るとして、どうやって連れて行けばいいんだろう。

月に一度大阪に帰るたび、その間のお世話はどうすればいいんだろう。

仕方なく、実家の押し入れの襖を取っ払って、大きなケージに作り替えた。

兄とわたしで、実家に帰るたびに世話をしたけれど、可愛そうだった。

動物は可愛そうだ。

人間の都合で可愛がられたり、蔑ろにされてしまう。

精一杯やっても、猫たちが心地よく暮らせる環境を作ってやれなかった。

しばらくして、一匹が死んでしまった。

母のヘルパーさんから連絡が入って、いそいで鳥取から大阪に帰った。

ヘルパーさんはペットのお世話はできない。

それでも、ケージから出して、タオルを敷いた段ボールにどの子を寝かせてくれていた。

腎臓が弱って、ほとんどご飯を食べられなくなっていた。

そばにいてあげれば良かったのに。

息を引き取る瞬間くらい、抱っこしてあげられれば良かったのに。

そのあと必死で里親になってくれる団体を探して、受け入れてもらえる場所を見つけた。

もう一匹の子はそこでみてもらえる。

すごくほっとして、実家に迎えに行ったけれど、久しぶりにケージから出すと、その子はもうボロボロになっていた。

眼球が傷ついて、伸びた爪が肉球に突き刺さっている。

怖がりで人間嫌いのその子は、いつも寝床の箱から出てこない。

月に一度ではわたしのことも警戒するようになって、健康状態をチェックできなかった。

翌日病院で処置してもらったけれど、獣医さんの視線が痛くて、その子の姿が痛々しくて、辛かった。

引き取ってもらった施設でも、一月も経たないうちに死んでしまった。

わたしは、最悪だ。

兄の言う通り、早く保健所に連れていって殺処分してもらえばよかったの?

それがどうしてもできなかった。

最後まで方法を探したかった。

自己満足なんだ。

2匹とも、野良猫だった。

最後まで温かい場所で、のんびり気持ちよく過ごさせてあげたかった。

世話を投げ出す飼い主になりたくなかった。

もっと早く施設を見つけてあげられれば良かったのに。

もっと賢くて、いいアイデアを出せる才能があれば良かったのに。

引き取ってあげられる、いろんな余裕があれば良かったのに。

この状況ではもう無理だと・・・

手放すことが最善だと思ったけれど、受け皿がどこにあるのかわからなかった。

わたしがもっと賢ければ。

情報収集と行動力と判断力に優れていれば。

いい飼い主になれなかったことを責めている。

後悔と罪悪感と、、惨めさと。

ぐるぐる自分のなかで渦巻いている。

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