なぜアダムズ方式を採用するのか?

升永英俊弁護士からの依頼で、1996年の第1回の小選挙区比例代表並立制選挙の小選挙区の定数配分1990年の国勢調査人口に基づいた「1+最大剰余方式(いわゆる一人別枠方式)」で行われ、比例ブロックの定数配分「最大剰余方式」で行われたこと、2000年の第2回に、減員された比例区ブロックの定数配分が1995年の国勢調査人口に基づいた「最大剰余方式」で行われたこと、2003年の第3回の小選挙区比例代表並立制選挙の小選挙区の定数配分が2000年の国勢調査人口に基づいた「1+最大剰余方式(いわゆる一人別枠方式)」で行われ、比例ブロックの定数配分が「最大剰余方式」で行われたことを確認した。

本来行われるべき2010年の国勢調査による定数是正は、人口を基準にしても、"日本人人口”を基準にしても、神奈川県と大阪府の間の小選挙区定数逆転配分が放置されるなど、長期にわたる安倍晋三(山口4区選出)内閣により蔑ろにされていたのは明らかであるが、小選挙区定数配分における「一人別枠方式」違憲判断の下、2020年の国勢調査による定数是正において、なぜ比例ブロックの定数配分までが「アダムズ方式(1+ドント方式)」を採用するのか、その正当性にはかなりの疑問がある。

Balinski-Young(1982, 2001)(邦訳(1987)は「一票の格差」訴訟を開始した越山康弁護士監訳による)が、その第12章で述べ、補論9節定理9.2で証明しているように、アダムズ方式は、常に「分裂を即す」(分裂するとそれぞれの議席数の和は分裂前の議席数以上になる)という唯一の除数方式である。逆に言えば、くっ付けられればくっ付けられるほど議席の和が合併前の議席以下になる唯一の除数方式である。

南関東という比例ブロックは、中国という比例ブロック以上の人口(あるいは日本人人口)を持つ神奈川県と、四国という比例ブロック以上の人口(あるいは日本人人口)を持つ千葉県に、山梨県をくっ付けたという、鉄道路線による直接的な結合にすら欠ける異様なブロックであるが、くっ付けられることにより、アダムズ方式が使われる限り、複数の連絡橋、鉄道により直接的に繋がれたのにもかかわらず別のブロックにしてもらった、山口県を含む中国ブロックや、四国ブロックより確実に貶められるように仕組まれたというわけである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?