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Jun Fukunagaの2023年ディグ曲TOP 30

新年明けましておめでとうございます。

2023年は例年以上に自分がディグった曲をSNSでご紹介するということをさせていただきました。

そこで本稿では、Jun Fukunagaが2023年にディグった膨大な曲の中から特に印象に残ったヤバい曲やアガる曲30曲をランキング形式でご紹介したいと思います。

*なお、この記事は全文無料で公開しますが、投げ銭的に課金していただけると嬉しいです。その分の収益はBandcampでの音源購入など、今後のライター/ディガー活動に役立てたいと思っております。
サポートよろしくお願いいたします。

『Jun Fukunaga's 30 Best Dig Music of 2023』


30位〜21位

30:Baby B3ns - Baby Blizzard

00年代に活躍したノルウェー出身の"エレクトロポップの歌姫"Annieを彷彿とさせるシルキーなウィスパーボイス x エレクトロポップなサウンドが非常に印象的だったBaby B3nsの「Baby Blizzard」。こうしたY2Kエレクトロ×ウィスパーボイス・リバイバルな楽曲スタイルに対して、今のところ明確なジャンル名は見当たりませんが、Baby B3ns本人は自身の音楽性を“Mausipop”と称しています。

ちなみにBaby B3nsは、以前からファッションアイコン/インフルエンサーとしてオンライン上では有名だった人物(一説によればKanye Westからも注目されているとか)だそうですが、現在はミュージシャンとしての活動に注力。そのガチDTMerぶりがうかがい知れるのが、「Baby Blizzard」にリリースされた「Herzcrash」のMV。そちらでは自宅のベッドルームを360°映像で撮影して、室内でDTMやギターを演奏するBaby B3nsの姿を確認することができます。

29:MATT OX - DOLO

ジャストこの年末も年末に発見してブチアガったのがMATT OXというRage系USラッパーの「DOLO」。シンセにディストーション(むしろビットクラッシュ系)かけたRageの破壊力たるや...。かつてフレンチエレクトロの代表的アーティストのJusticeらがそれまではスタンダードではなかったシンセにディストーションをかけて歪ませるという手法を流行させましたが、その衝撃に近いものを感じました。

あまりUSのラップシーンはSoundCloud Rap/Emo Trap以降は熱心に追いかけていなかったのでRageシーンの現状は詳しくないのですが、この曲を知ったことで俄然興味が湧きました。2024年はそちらにもアンテナを貼っていこうと思います。ちなみにMATT OXは現在、19歳でローティーンの頃からラップを開始。2018年のXXXTentacionのアルバム『?』にも参加したり、日本人ラッパーのLEXともコラボしているそう(調べたところ「Heartz」という曲でした)。ちなみにこの曲は『Teenrage』というモロなタイトルの2023年のミックステープに収録されていますが、これだけ歪んだシンセ使いのものはこの曲でした。本人的にも挑戦的な曲だったのかな?気になります。

28:Eliza Rose - Better Love

2022年はUKシングルチャート1位をハウス曲(UKG系プロデューサー Interplanetary Criminalがプロデュース)で獲得したEliza Roseですが、「Better Love」のプロデューサーはMura Masa。良い意味でY2Kの"パーティーすぎる"と揶揄されたUKGが帰ってきた感があるチャラさが香るUKG曲です。

2023年はsaluteの甘くて良い意味でチャラいUKG曲もヒットしましたし、やっぱりある意味メインストリームのヒットチャートに刺さるUKGはチャラさが正義だと思いました(UKGも他のジャンル同様そこはアンダーグラウンドなシーンと対照的)。「Better Love」については記事も書きましたので詳細はそちらで!

27:SWIM - Kylie(Unreleased)

2023年は最新アルバム『Tension』からの先行曲「Padam Padam」がバイラルヒットし、アルバム自体もヒット。00年代の代表作アルバム『Fever』ばりにエレクトロ・ダンスポップ色を全開したKylie Minogue。その地元オーストラリアのメルボルンでは、どうやら若いDJ/プロデューサーの間でトランスを通過したハウスやテクノが流行っているっぽいです。

その中心的なDJ/プロデューサーの思われるSWIMが、最近公開されたBoiler Room DJセットの最後にプレイしていたのが、先述した『Fever』収録曲のKylie流フィルターハウス「Love at First Sight」をネタにした「Kylie(Unreleased)」というこの曲。原曲のエモフィルターハウスをエナジー全開に爆発させました的な力技リミックス?、エディット?なのかちょっとわかりませんが、最近はブートがバイラルヒットして正規リリース(日本でいえば最近の槇原ドリル)されることも珍しくないのでこの曲もそのうちそうなってほしいです。個人的に来年は00sのフィルターハウスを取り入れたエレクトロ・ダンスポップ復権が来ると思っているのですが、今、SWIMのやっている要素とマッチするのが00年代の片瀬那奈の音楽性だったことに気がついて震えました。2024年には"00s片瀬那奈の音楽"再評価の機運が高まることにも期待...。

26:SuperJazzClub - Too Early

2023年はディグっているとやたらとナイジェリアのアフロビーツ系ラッパーやシンガーがリリースしている良い曲が見つかるのですが、この「Too Early」はガーナの6人組クリエイティブコレクティブ・SuperJazzClubの曲です。スムースなファルセットボーカルとイケてるビート、あとラップが絡むこの曲は刺さりました。

他にも超洒落たフットワーク系の「Cameras」、2010年代に流行ったアンビエントR&B/ニューR&B系の「Bordeaux」など、センスが良くて良い曲多数あり。

25:MEZZ – Soul buddy feat. yoxen

2023年、仕事を除くとおそらく1番聴いた日本のアーティストであろうMEZZ。「Gyal Drill」という曲がおもしろいなーと思っていたのですが、この曲は00年代の加藤ミリヤがジャージクラブの曲出したらこんな感じになるんだろうなみたいな曲。端的にいってエモヤバいです。

他にも00年代J-R&Bテイストを彷彿とさせる曲がありますが、個人的にはSharda, That Fancy Iとのコラボ曲「New Connection」が"あの頃のm-flo"感たっぷりで最高だと思っています。

24:Yoofee - Lost Papers

その昔、デトロイトテクノはジャズをテクノにしたという言葉があったと聞きます。その意味でこの「Lost Papers」は、まさに
「デトロイトテクノの先人たちがやりたかったことの延長線上にあるもの、これやろ!」みたいな曲です。デトロイトなシンセ使いに絡むブロークンビーツがカッコ良すぎるこちらですが、作り手のYoofeeはガチのジャズマンだそう。その文脈ならではのクオリティの高さにやられました。

ちなみにこの曲が収録されているEP『Lost Papers』は4曲入りですが、全曲捨て曲なし。Y2Kリバイバルの後には00sブロークンビーツリバイバルも起きるんじゃないかな?と期待させてくれる2020sモダン・ブロークンビーツな曲です。

23:80KIDZ - RARE feat. Wez Atlas

2023年3月頃はちょうどPinkPantheress以降の"インディ x ドラムンベース"なアーティストの曲を特に熱心にディグっていて、備忘録としてそういうプレイリストも公開しました。奇しくもそのタイミングでリリースされたのが日本の音楽シーンにおけるインディ x クラブ"の第一人者の80KIDZの「RARE feat. Wez Atlas」。

自分のモード的にこの曲の後半のドラムンベースパートがバッチリハマったので一時鬼リピしてました。東京拠点で多文化なスタイルを取り入れたラップで注目を集めるWez Atlasのラップもシティな空気感漂う洒落たトラックとの相性バッチリで良きです。

22:Funk Assault - That's The Funk Assault

現在、テクノシーンではFJAAKが人気と聞きますが、そんな彼らに続く存在になれるんじゃないかなと思っているのがドイツのテクノユニット・Funk Assault。あまりまだ情報がないのですが、色々調べていると”Primal Instinct”という人力テクノ(要はハード機材を使って作るテクノ)とAIなど前衛的なツールで生成した音を融合させた"未来的クラブサウンド"をウリとするレーベルを主宰しているようです。

この「That's The Funk Assault」は、文字通り彼らにとっての名刺的な1曲なのかな?硬くて速いマシンライクなテクノビートにBeastie Boysっぽいラップが乗っかるヒップハウスならぬヒップテクノになっています。かっこいい。

21:Bib Sama - Baefriend

見つけた時は、なんかエキゾチックなゲーム音を使ったアフロスウィングなのか?と思ったのですが、よくよく調べていくとアーティスト本人は”nu-grime”と定義していることがわかった曲、それがこのUKラッパーBib Samaによる「Baefriend」です。

ちなみにこの曲はゲームやアニメの影響を強く受けているとのことですが、実はグライム自体がゲームの影響を受けているジャンルなので、そういうものであるなら、確かにその定義の仕方もありなのかと思わされました。既存のグライムとはまた違った新感覚のUKラップ曲です。

20位〜11位

20:£MONZO, Lamsi - S.I.T

UKのラッパー£MONZOとオランダのプロデューサーLamsiによるUKベース感あるラップ曲「S.I.T」。その昔、CRZKNYのアルバム『MERIDIAN』のリリースパーティーが今はなき、東京のBuenosで開催されたのですが、その時にオーガナイザーだったGoodweatherのEriさんによる提案のひとつが"サウンドシステムで聴くラップ"(その時は仙人掌とCampanellaがヒップホップ枠で出演)。そのことを思い出させてくれたまさに”サウンドシステムで聴くUKラップ”という感じの曲です。ぜひ、低音が鳴る環境で聴いてみてください。

19:MoStack - Weekend

UKのラッパー/シンガー、MoStackによる流麗かつエモいUKラップ曲。00年代に流行った日本のジャジーヒップホップのようなピアノサンプルカットアップとアフロビーツが合体したトラック、加えてラガなフロウの歌とラップが絡むところが素晴らしい。このトラックのピアノカットアップを聴いてると、往年の日本のジャジーヒップホップの名曲Noma「Anger the of the earth」が頭に浮かびました。

18:Muddyoush & aerodynamisme - Datura + Trust Issues

フランスのプロデューサー、Muddyoushを発見できたのも2023年のディグにおいて大きなポイントでした。超高速スピードガラージ、ジャングル、デトロイトテクノまでを飲み込んだ音楽性を持つMuddyoush。まじ「ダンスミュージックの天才か!」の一言です。

ちなみにMuddyoushは、NYCガラージシーンの中心人物のSwami Soundもリスペクトする"インターネットで繋がった海外の音楽仲間"のひとりとして名前を挙げていました。

17:SYCLES - FLOATER

古くは日本のグリッチホップで存在感を放ち、その後もベースミュージックにアプローチしたNERDZ ERA、インダストリアル〜エクスペリメンタルテクノ系のBETAPACKといった時代のクラブサウンドを絶妙のバランスで取り入れてきたBROKEN HAZEとDALLJUB STEP CLUBのメンバーであり、ソロ・プロジェクトWOZNIAKとしても活動するHoshi Yutaらによる新プロジェクト「SYCLES」。

その1st EP『FLOATER』に収録されたタイトルトラックは、今年フジロックにも出演したUKのOvermonoに対する日本からの解答的なレイヴィーなエクスペリメンタルなブレイクビーツ曲。日本人特有の切ないメロディーセンスがキラリと光る2023年国産ダンスミュージック最高曲のひとつでした。

16:Swami Sound, CVMILLE - Back In The Day (Soulecta Dub)

たまたまThe Lot RadioのX(旧Twitter)を見ているときに発見したのがこのSwami Sound, CVMILLE - Back In The Day (Soulecta Dub)。最初はエモいUKガラージだなぁと思っていたのですが、気になって調べていくとこれが"NYCガラージ"というSwami Soundが現在、NYで牽引しているジャンルの曲だということに気がつきました。

その後、XでDMをやりとりする中になり、2023年は彼の来日公演にも遊びにいきました。余談ですがシークレットで下北沢で行われたイベントで彼は僕が好きなKylie Minogue「Love At First Sight」をプレイしていたのですが、そのことをSNSで知ったであろう彼はわざわざ「君のためにプレイした」とあとでサラッと口にするくらいユーモアセンスに長けたナイスな人でした。00年代の某テック企業のデバイス風のこの曲のMVも必見です。

15:TSU NAMI - Sanctuary

mau5trap、Anjunabeatsといったダンスミュージックシーンの人気レーベルからもリリースするLA拠点のプロデューサー、TSU NAMIによるキングダムハーツ2の宇多田ヒカル某曲のカバー曲。

Joy Orbison「Hyph Mango」やBurial、最近でいえばOvermono系のベースミュージックにアンビエントの要素が加わった心地よいエクスペリメンタル・ベースミュージックに仕上げられているところが良きです。

14:DJ Taye - 2Simple & 2Clean

TSU NAMI「Sanctuary」に続き、宇多田ヒカルネタ曲をもう一丁。シカゴのTeklifeクルーの一員であり、UKの名門ベースミュージック系レーベルからもリリースするDJ Tayeによるこちらは宇多田ヒカルの某曲ネタのやばいジューク/フットワークに仕上げられています。今やJ-POPの歌姫というだけでなく、ゲーム/アニメ文脈では世界的に知られる宇多田ヒカルがダンスミュージックにおける大ネタ化しているところに2020年代を感じます。

余談ですが日本にもジューク/フットワークの素晴らしいプロデューサーは沢山います。その第一人者であるD.J. Fulltonoさんによる国内ジューク/フットワーク紹介記事は必見です。

13:The Dare - Good Time

Baby B3ns「Baby Blizzard」も含めて、2023年注目していたのが、自分が勝手に"Neo Electroclush"と呼んでいる00sエレクトロクラッシュ/ニューレイヴのリバイバル的な音楽です。その中で特に注目しているひとりがNY拠点のアーティスト、The Dare。元々はTurtleneckedというインディーロックバンドで活動していたHarrison Patrick Smithが2022年8月に始動させたThe Dareは、00sエレクトロクラッシュの牽引役Fischerspoonerを彷彿とさせます。

The Dareのデビュー曲「Girls」のMVは、2000年代ニューヨーク・パーティーシーンのノスタルジアを感じさせつつも、現在の同地でのパーティー事情を反映したクィアでファッショナブルなバイブスにアップデートしたものと海外メディアが評しています。気になった方はそちらもぜひ。

12:Daft Punk - Technologic (Ekzander's Groove Bass Mix)

2023年は4thアルバム『Random Access Memories』がリリースから10周年を迎え、デラックス盤はおろかドラムレスバージョンという謎記念盤までリリースされていたDaft Punk。一方で同年ソロアルバムをリリースしたメンバーのThomas BangalterがDaft Punkの解散理由を語ったり、もうひとりのメンバーの"Guy-Man"ことGuy Manuel de Homem-ChristoがTravis Scottの最新アルバム『Utopia』に参加するなど、2021年のDaft Punk解散前後という括りで見ると元メンバーたちの動きが最もアクティブな1年だったと思います。

そういった本家の動きとは全く関係ないのですが、Boiler RoomのDJセット動画で見つけてぶちアガったのがこちらのリミックス。Daft Punkの3rdアルバム『Human After All』収録の人気曲「Technologic」を異常にバウンシーかつベーシーにしたフロアボムな1曲です。ブート感満載のうさんくさいカバーアートも味があって良き。

11:Destiny's Child - Survivor(Sancho & Pancho Bouyon Remix)

こちらはMixmagのThe Lab LDNのDJセットで見つけてぶちアガったデスチャの代表曲「Survivor」のリミックス。最初は速いUKファンキーなのかなと思っていたのですが、調べていたらこういう音楽はドミニカ発祥の"Bouyon"というジャンルだそうな。しかもソカと掛け合わせた"Bouyon Soca"、レゲエ/ダンスホールと掛け合わせた"Bouyon-muffin"など派生ジャンルもいくつかあるそうです。

ちなみにこの曲を知るきっかけになったロンドンのクィアコレクティブ「Boko! Boko!」クルーによるThe Lab LDNのDJセットは、マジで全部キラーチューン。正月の休暇期間中に全曲調べてプレイリスト化したいくらいです。

10位〜1位

10:Jonathan Costa - De segunda à sexta (RealM & Lazy Flow soca funk edit)

2023年はロシア出身でイタリア・ナポリ拠点のDJ/プロデューサーのAnfisa Letyago(アンフィサ・レチャゴ)がDJプレイする曲をかなり熱心に追いかけていました。なぜならすごく良いテクノばっかりかけてるから。そのうちのひとつがこのブラジル発祥のジャンル"バイレファンキ"のクラシック「Jonathan Costa - De segunda à sexta」ネタのこちらです(厳密にはこれをエディットかミックスしてるのかわからないけど若干展開が違うという意見もありますが...。そこはご愛嬌ということで)。

バイレファンキは、近年ブラジルでも新たなフェーズに入っており、度々海外音楽メディアで最近のシーンの動向を紹介する記事を見かけます。ちなみにモダンなバイレファンキシーンも結構面白くて、超サグいアングラなラッパーもいれば、コーチェラ2023に出演していたブラジルのポップスター、Anittaのようにメインストリーム系のポップ・バイレファンキの人もいます。余談ですがこの曲は元々は2000年頃にリリースされた曲のようですが、聴いているとDiploがプロデュースしたM.I.A.のデビューアルバムが頭に浮かびます。それくらい当時のDiploに大きな影響をバイレファンキは与えたと思います。ということでY2Kリバイバルの今、NewJeansがボルチモアブレイクスを取り入れるなら他のグループは、あえてバイレファンキを取り入れてみれば"〇〇おじさん"を発生させることができるのではないでしょうか?

9:Frank Ekwa - Ko Banga Te

UKのアフロビーツアーティストのFrank Ekwaによる「Ko Banga Te」はトラックが超抒情的でエモいアフロスウィング曲でした。ですが、調べてみるとこの曲、実は2023年にヒットしたジャマイカ生まれでセントクリストファー・ネイビス拠点のダンスホールアーティスト、Byron Messiaの「Talibans」をアレンジしたもの。ちなみに「Talibans」にはナイジェリア出身のアフロビーツスター、Burna Boyを迎えたリミックス「Talibans」も存在します。

この曲をきっかけにFrank Ekwaを知りましたが、哀愁漂うギターリフが印象的な「365 Days」も良曲だったので、そちらもおすすめです。

8:Cruel Santino - FTR

ナイジェリアのシンガーソングライター/ラッパー、Cruel Santinoによるこの曲は、Rageとアフロビーツを融合させたありそうでなかった発想の曲です。Rageシンセのせいもあって近未来のマシンアフロビーツ感満載。アフロフューチャーリズムの影響がある映画『ブラックパンサー』のサントラにピッタリだと思いました。

ちなみにCruel Santinoは、R&B、ソウル、ラップからアフロビート、インディロックまで、さまざまなサウンドをブレンドし、融合させることで知られているそうで、かつてThe Faderにアフロポップの未来と称されたこともあるそうな。こういった折衷的な音楽性が背景にあれば、「FTR」のような曲が生まれるのも納得がいきますね。余談ですが2019年のアルバム『Mandy & The Jungle』は本国ナイジェリアでは高く評価されており、その収録曲「Rapid Fire」は特に有名な曲だそうです。そちらの曲調は「FTR」とはまた違ったエクスペリメンタルなオルタナ・ダンスホール/アフロビーツという感じです。

7:Ragz Originale - Pay Ur Bills

UKのソウルシンガー、Ragz OriginaleによるめちゃチルくてセクシーなUKソウル。海辺のサンセットとかエモい情景によく似合う洒落た曲です。90年代っぽいフィルム的な質感のMVも曲調とマッチしていて良き。個人的には"今Craig David"と呼びたいです。

あとRagz Originaleは、COLORSでも公開されている「troublin」も同様のUKソウルで超良いです。あわせてチェックされたし。

6:DJ Seinfeld & Confidence Man - Now U DO

ローファイハウス、レイヴを通過したDJ Seinfeldの次の一手が絶妙に甘くてチャラいハウスだったことには驚きました。オーストラリアのエレクトロポップバンド、Confidence Manとのコラボ曲は2023年の夏を代表するクラブアンセムとなりましたが、個人的には2020年代を代表するハンドバッグハウス(ディーヴァ・ハウス)になった感すらありますね。あとこの曲は下の動画のフリ付きで聴けばさらに気分がアガります。

余談ですが、Confidence Man単体の曲は00sのScissor Sistersっぽいノリの「Holiday」や90sユーロハウス調でリリース前から現場ではめちゃめちゃ支持されていたという「Now U DO」に続く曲となった「Firebreak」、そのドラムンリミックスの「Firebreak(1991 Remix)」もハッピーなバイヴスに溢れた曲になっているので、気分をアゲたい時におすすめです。

5:BENEE - Green Honda

The Dare「Good Time」の時にも触れた、現在Jun Fukunagaが提唱する"Neo Electroclash"。そういう今が2000年代なのか2020年代なのかわからなくなるような音楽をディグり始めるきっかけになったのが、2023年はコーチェラやフジロックにも出演したニュージーランド出身のBENEEのこの曲です。よくUKドリルのアーティストのMVを見ているとグリーンの高級車が出てくるのですが、こちらのMVではグリーンのホンダ車が登場します。オマージュなのかな?

ちなみにBENEEは2023年9月に「Green Honda」のリミックス盤をリリースしているのですが、そちらにはFlowers Remixというリミックスも同郷のUnknown Mortal Orchestraによるサイケなリミックスのほか、まさかの00sエレクトロの匂いがぷんぷんするオーストラリアのアーティストと思われるFlowersによるリミックスも収録されています。ちなみにFlowersは、フレンチエレクトロの歌姫Uffieをフィーチャーした「Hypnotic」という曲もリリースしていますが、こちらは往年のBang Gang作品風なので、絶対に確信犯的にエレクトロノスタルジーをやっていると僕は思っています。

4:KODAT - Get Ready For This 2023

Boiler Room動画で発見したヤンキーすぎるバイヴスがビンビンに伝わってくるヤバい曲がこちら。アーリー90sユーロダンスの名曲「2 UNLIMITED - Get Ready For This」ネタの爆アゲ曲です。もうね、90sヤンキー漫画の金字塔『特攻の拓』の大名言「俺らァ死んでも狂乱麗舞」が頭に浮かんで仕方ないガチのフロアキラーです。DJの人はDJセットの飛び道具的に仕込んでおくと心強いのではないでしょうか?(ただ、早い時間のDJだとちょっと使いづらいかも)

余談ですが最近、King Gnuの常田大希氏の影響や古着ブームのおかげでリアム・ギャラガーがよく着ていた90年代のUmbroが若い人の間で流行っているようですが、この曲を聴く時は古式ゆかしいUKのヤンキー御用達ブランド・Lonsdaleを着てスクワットパーティーに行くような気構えで聴くことをおすすめしたいです。まあ、Umbroもadidasも言ってみればUKのヤンキーに愛されてきたブランドですが(最近は特にNikeとStone Islandが好まれています。Netflixドラマ『トップボーイ』でご確認ください)。
以下はUKヤンキー(Chav)の解説動画(日本語字幕もあり)。興味がある人はぜひ。

3:FiFi ZHANG - So Beautiful So Lonely

ニューヨークを拠点に活動する中国出身のアーティスト、FiFi ZHANGによる現代版"テイ・トウワ「Butterfly feat.田辺あゆみ」"曲がこちら。こういうひたすらオシャレさを追求した往年のテイ・トウワ感のある2step/ドラムンベースは本当に最高。その言葉に尽きます。しかもMVも当然のごとくオシャレ。ホントに時代がひと回りしたように思います。

ちなみに僕は2023年に"Y2K~00年代期のテイ・トウワがDJでかけそうな曲"を"NEO TOWA TEI"というコンセプトでディグっていたのですが、それがコラムになり、そのコラムを読んでくれた高感度なカルチャーメディア・TOKIONの編集者さんからのオファーでテイさんの最新作に関するインタビューを担当させていただきました。NEO TOWA TEIは、プレイリストDJミックスも公開しているのでそちらもあわせてチェックしていただけると嬉しいです。

2:Avelino - ACCEPTANCE

ノースロンドン・トッテナム出身のUKラッパー、Avelinoが2023年にリリースしたデビューアルバム『God Save the Streets』収録曲でもトップクラスに流麗なピアノ系UKラップ曲がこちら。トラックもさることながらMVの映像もエモい描写が多いところがポイント高し。

『God Save the Streets』は、これまでミックステープをいくつかリリースしてきたAvelinoにとって長きにわたってリリースを待望されていたデビューアルバム。ちなみにAvelinoは、現在UKラップシーンにおいて"最高のラッパーのひとり"と呼ばれるほど高く評価されています。アルバムタイトルからわかるようにSex Pistolsのアレをオマージュしたカバーアートも英国感があって良きです。

1:Daft Punk - One More Time(Swami Sound Remix)

説明不要のDaft Punkアンセム「One More Time」をSwami Soundが自身のシグネチャーサウンドのNYCガラージにリミックスしたこちらが2023年の『Jun Fukunaga's 30 Best Dig Music』優勝です。というか“2023年の全人類のアンセム"でした。

Swami Soundは割と自分が手がけたリミックスをSoundCloudやBandcampで公開していますが、こちらは未公開のレア音源でマジで自分のDJセットの必殺曲として用いている模様。2023年の来日公演時も会場がこの曲で爆アガりしていました。2024年はぜひとも音源として公開してほしいものです...。

次点

上記30曲以外に次点として以下の曲を選出しました。こちらを含めたSpotifyプレイリストも公開中です。

次点:
Q - NOT ALONE
Rudimental,charlotte Plank - Dancing is Heling
DJ Hybrid - Warehouse
Miles from Kinshasa - On Display
Kamakaze, Massappeals - Last Night
Amadeezy - Tales Of Glory(Bianca Oblivion Remix)
MoStack – Cap 2 Da Side
namebliss,Parkland - stage
Leah Music - Lately
Stefflon Don,BNXN - What's Poppin
Unusual Demont - NIGHTTIME
That Fancy I & Shunji Fujii - Alloy
ELKKA - BABE
SWIM - Out There
Tyla - Been Thinking
The Janapnese House - Touching Yourself
Art School Girlfriend - Out There
Lotu5 - How Many?
KOYANMUSIC - 深南相模 -孔-
AshZone - Me & You
The Hellp - California Dream Girl
Nia Archives - Off Wiv Ya Headz
Dazegxd - way 2 good(idc)
Flava D,Paige Eliza - Miss Dopamine
Troye Sivan - Got Me Started
Risa Taniguchi - Insomnia
Homixide Gang - TF!
Sharda, That Fancy I, MEZZ - New Connection
ItoShin - Your Love
Offica - Plugged In W/Fumez The Engineer
HOME - Lucy


最後に

2023年は自分がディグった曲をX(旧Twitter)で紹介させていただいたことで、多くの方に公開しているプレイリストや自分のXに注目していただけることになり、本当にありがたく思っています。

2024年も引き続き、みなさんに楽しんでいただける音楽を紹介していくとともに推しの音源を使ったDJ Mixも定期的にSoundCloudで公開していくつもりです。

あと、2024年は新たに去年からかなりハマっているナイジェリアのアフロビーツに特化したプレイリスト公開のほか、日本のダンスミュージックに特化したプレイリストも公開したいと思っています。

ディグった日本のダンスミュージック良曲に関してはレギュラー出演しているbay.fmの番組「i-cocoon」での僕のDJ MixをOAするコーナーでもドシドシ紹介していきたいです。

もし、プレイリストにピッチしたいという方がおられましたら、以下の点を踏まえた上でjunfukunaga.comのコンタクトフォームからご連絡ください。

・すでにリリース済みの音源は各配信プラットフォームのまとめリンクを送っていただいても結構です。
・未発表音源はSoundCloudにアップした楽曲のリンクを必ず明記してください。
・バイオやプロモ音源を格納したストレージ(Dropbox、Google Drive)のリンクを添えていただけると幸いです。


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