JASMINE @BLUE NOTE PLACE(20240712)
笑いや涙を添えながら、魂の声を響かせた一夜。
3曲目の「BADASS」を歌った後、開口一番「デビューして15年経ちました!」とオーディエンスに語り掛ける。時の流れは早いもので、2009年のデビュー時には、自身も大いに影響されたという宇多田ヒカルと比較されるなど、次世代を担うR&Bシンガーとして注目されていたのも今は昔。1stアルバム『GOLD』の冒頭曲「PRIDE」で“I was born in the Heisei / First year of the Heisei”と歌っていたJASMINEも、ヴェテランの域となった。
2019年にソニーからEIGHT ENTERTAINMENTへ移籍して以降も、AK-69、5LACKなどのジャパニーズ・ヒップホップ勢と共演するなど幅を広げながら、しっかりとR&Bを歌い続けているのだが、近年は個人的に少し離れてしまっていた。そのなかでBLUE NOTE PLACEにて〈Sip & Sing〉なるライヴ・イヴェントが行なわれることを目にし、駆けつけた次第。2009年10月にニーヨのジャパンツアーのオープニングアクトに出演した後(ニーヨは、1月の日本武道館公演には行ったのだけど)、翌2010年の全国ワンマンツアーは完全招待制だったし(当たらず)、同年の『GOLD』ツアーはタイミング悪く行けなかったので、実は初の生JASMINEになるか(もしかしたら何かのイヴェントで観たかもしれないが)。このライヴへの期待と緊張でベッドでクルクルして眠れなかったり、終わってしまった先のことを考えて寂しくなったりしていたそうだが、“DAY 2”となるこの日は、初日よりはリラックスして臨めたそうだ。
ステージはBLUE NOTE PLACEのライヴのスタンダードともいえる各30分程度の2部構成。ミニライヴながらも、左からギターのSho Kamijo、ベースのIsamu Mori、ドラムのYoshiya Matsuura、DJのDJ DAISHIZENというフルバンドを配した嬉しい編成だ。楽曲も2022年リリースのアルバム『Re:Me』を軸に、2024年リリースの「Don't wanna go Back home」までを並べた現在進行形が味わえるリストは、旬のJASMINEのフィーリングに触れられるという意味でも、格好のセレクトとなった。
1stショウの序盤は「FALLIN'」を皮切りに、客演曲を並べていく。最新曲の「Don't wanna go Back home」は、冒頭からMISIA「sweetness」を想起させる90~00年代R&Bマナーのミディアムで、このあたりの作風はJASMINEと大いにフィットするのは必然。心地よいグルーヴに乗り、表情も和やかだ。
ブラウン/ベージュのジャケットを袖を通さず肩にかけながら歌う姿も堂に入る「YAMAHA」「アタシの負け」では、R&Bが輝くミディアム~ミディアムスローという王道ラインで、JASMINEのヴォーカルワークを堪能。「アタシの負け」ではやさぐれた佇まいをチラつかせながら、悲恋の痛みを吐露するなど、経験を経た深みのようなものも描出していた。EMI MARIAへの客演曲「Right Now」では、胸に宿る感情の炎をパッショネイトに歌い上げ、ヴォーカルのエナジーと豊潤な表現力を再認識した。
ジャケット・パンツにタンクトップスタイルから一変し、2ndショウでは深みあるグリーンのビキニトップにシースルー布というセクシーな衣装で登場。ディズニー映画『アラジン』の挿入曲として著名な「ア・ホール・ニュー・ワールド」のアレンジ・カヴァー「AWNW / A Whole New World」をスケール大きく、アダルト・テイストに趣き深く披露すると、「Come & Talk 2 me」では同曲で客演しているストローハット姿のB.I.G.JOEがステージイン。JASMINEのホットなヴォーカルとB.I.G.JOEのラップとの掛け合いで、パッとフロアを華やかに、心憎い演出で楽しませてくれた。
以降も褐色のグルーヴで身体を揺らせる「Neverland」、深い夜の時間へといざなうようなバラード「Eyes On Me」と続くが、「STAR」では涙を流し、嗚咽する姿も。直前の「(35歳くらいになると)健康が大切」という話の流れから、近しい人物が病を患ったことが思い出されてしまい、感極まってしまったようだ。歌い終わった後に「ティッシュない?」と語り掛け、涙を拭き、鼻をかみながら「(整うまでの間)ちょっと何か話してて!」とフロアに丸投げする茶目っ気も見せていた。
気を取り直しての終盤は、軽やかで煌めきあるメロディと粒立ちの良いヴァイブスが高揚をもたらす「Stay With Me」と、JASMINEの原点でもあるデビュー・シングル「sad to say」で本編は幕。自身の代表曲としてこれまで数えきれないくらい歌い繋いできただろう「sad to say」は、デビュー当時から魂を揺さぶるような力感で歌い上げていたが、15年の年輪を重ねての「sad to say」は、デビュー当時同様にもどかしさや切なさ、憎しみをぶつけていく歌い口が特色だが、インパクトの強さや鋭さへ重心を寄せるだけでなく、それらを包含しながらも微かに慈悲の感情も垣間見えるようにも感じた。
アンコールは、前日にリクエストがあったという2011年の東日本大震災直後に書いた「ONLY YOU」をSho Kamijoのギターとのアコースティック・セッションで。久しく歌ってなく歌詞が頭に入ってないのと、オリジナルと異なるアレンジということもあって、途中で自らストップをかけ、やり直す場面も。「本当はやり直しはしたくない」「さっきのは忘れてください」とこぼしながらも、2度目は別アレンジで完唱。ファンにとっては、ハプニングで2度聴くことが出来たと考えれば、これもまた嬉しいサプライズといえるかもしれない。
時間的に考えると、各ステージは30分と瞬時に終わってしまうように感じられるだろうが、JASMINEは濃密なヴォーカルワークで感情を揺さぶり、ズシリと響く訴求力の高いパフォーマンスを展開。腹に響く重量感と、喜怒哀楽の移ろいに長けた表現力、そしてそれを下支えする快活なグルーヴで、十二分に楽しませてくれた。
フルタイムセット、そして楽曲構成もオールタイム仕様となったら、どのようなステージを繰り広げてくれるのだろうか……と期待が膨らみながら、恵比寿の夜を後にしたのだった。
◇◇◇
<SET LSIT>
《1st show》
01 FALLIN' (original by JASMINE feat. 5lack)(*J2)(*RM)
02 Don't wanna go Back home (original by DaBook & JASMINE)
03 BADASS (original by JASMINE feat. KIRA)(*RM)
04 YAMAHA (*RM)
05 アタシの負け (*RM)
06 Right Now (original by EMI MARIA feat. JASMINE)
07 キミノヨコニ(acoustic version)(guitar with Sho Kamijo)
《2nd show》
01 AWNW / A Whole New World (original by Theme Song from Disney's film "Aladdin")(*RM)
02 Come & Talk 2 me(feat. B.I.G.JOE)(*RM)
03 Neverland (*RM)
04 Eyes On Me (original by JASMINE feat. Jinmenusagi)(*RM)
05 STAR (*J2)(*RM)
06 Stay With Me (original by JASMINE & DJ DEEQUITE)
07 sad to say
《ENCORE》
08 ONLY YOU (acoustic version)(guitar with Sho Kamijo)
(*J2):song from album "JASMINE2.0”
(*RM):song from album "Re:Me”
<MEMBERS>
JASMINE(vo)
Sho Kamijo(g)
Isamu Mori(b)
Yoshiya Matsuura(ds)
DJ DAISHIZEN(DJ)
guest:
B.I.G.JOE(vo)
MUSIC SELECTOR:
DJ AKIRA