スーパーの食材でオシャレっぽい酒をつくる
一人暮らしをはじめた若者が、なんとなくイケてる趣味を作ろうとして手を出すものの一つに「カクテル」がある。
(なんか、友達とか家に呼んだときに、出せたらいいかなあって)
そしてAmazonでカクテルレシピ集的な本を探し、ハンズで器具を買い集めはじめる。こういった若者はだいたい形から入る。
わたしがそんな若者だったときに買った本だ。
ロマンチックな名前、オアシスに棲む鳥のように美しい色彩、ミステリーを呼ぶエピソード。
まるで読めるディズニーランドだった。
アンビリーバブルなワールドがそこには拓けていて、毎ページごとにインディスクライバブルなフィーリングにされる。
これをつくれたらすごいだろう。
こんな素敵っぽいものが。
その後、若者がぶつかる壁がこれだ。
誰?
架空の妖精の名前?
待って待って
何????????????
異世界の食材出してくるのやめてよ。
アンゴスチュラビターズって何?ハリーポッターに出てくる毒?
きわめつけはドンキの酒コーナーに立ってみたときの絶望。
カクテル一種類作ってみるために樋口一葉を対価にしなければならない。
たった30mlの材料のために、重たい瓶を抱えて帰るときの修行っぽさ。色即是空。
もっとさあ、なんかこう、ドランブイとかコアントローとかが買いたいんじゃなくてさあ。
なんかこう。もっと。
オレンジジュースとか。梅酒とか。
ドンキで修行してたら悟りを得た。
わたしはその辺で買える材料でオシャレっぽい酒が作りたいのだ。
あとできれば安く簡単に作れたい。酒を飲もうとしている時点でお気付きだろうが煩悩がたくさんあるのだ。
そんなわけで、今回はスーパーで買える材料で、できるだけオシャレめいた酒をつくる記事である。
ちなみに数年を経て成長した若者は、ガチのバーで働きはじめることになった。ピザを焼いているとウォッカのショットが回ってくる店だったから辞めた。
〜スーパーカクテルのルール〜
・最寄りのスーパーで買える材料で作る
・レシピは自分で考える (基本的に一人で楽しむものだから、既出の可能性や発想の突飛さを気にせず自由に作る)
・難しい器具は使わない
・完成したらそれっぽい名前と嘘のエピソードを考えて一人で楽しむ
・味がうまいと気持ちがうれしい
もしかしたら、ここまで読んで「簡単な材料でかわいいカクテル♡」のような本は既にありますよ、と教えてくれようとしている優しい人がいるかもしれない。
一応知ってはいるのだ。
買って読んでみたことがあるが、
「透明なお酒にアイスの実をたくさん入れるとキュート☆」
「苺のリキュールでスイーツ風♪」
ちげえのよ。
そんな飲むサンリオピューロランドみたいなものを摂取したら感性の老いた部分が悲鳴を上げるわよ。
「甘すぎなくて美味しい」に気付いたあたりで人は大人になって、「甘いものがつらい」はほとんど老化である。
わたしはもうフラペチーノが飲める身体じゃない。
だからベースはジン、ウォッカ、ラムなどの”ガチの酒”でやる。
それではさっそくはじめよう。
1. ジン
ジンとは、蒸留酒にジュニパーベリーをはじめとしたスパイスとハーブで香りをつけたものだ。
爽やかな風味で、柑橘全般に間違いなく合う。
材料
・ジン…大さじ2
・ミントの葉…1つかみ
・マーマレードジャム…大さじ3
・炭酸…いい感じの量
・柑橘の皮…なんか寂しかったから飾り
今回はカクテル用のメジャーもシェイカーも使わない。スーパーに売っていないからだ。
あとブレンダーやミキサーも使わない。洗うのがだるいからだ。
つくりかた
①グラスの底にマーマレードジャム、ジンを入れて混ぜる。
あらかじめジャムをゆるくしておくことで、無味でこんにちは→激甘でさようなら を防ぐことができる。
②その上にミントを敷き詰めていく。氷といい感じに混ざるようにするといい感じになる。この記事において「感じ」以上の尺度は存在しない。
③炭酸を優しく注ぎ、適当に柑橘の皮を飾ったら完成である。
「イマジナリー・サマー」
嘘エピソード: 80年代のとある夏、フロリダの多くのカフェで自然発生的に広まったカクテル。誰が考案したものかついに分からなかったため、イマジナリー・サマー(架空の夏) という名を付けられた。
この進行に慣れてほしい。
次に進もう。
2. ウォッカ
無色で香りがほとんどないのが特徴のウォッカは、どんな材料と混ぜても主張してこない。
よく「アルコール度数上げアイテム」として使われている可哀想な酒だ。
せっかくベースが無色透明なのだから、とんでもない色を足そう。
材料
Aウォッカ…大さじ2
Aかき氷シロップ ブルーハワイ…好きな色味になるまで
A炭酸水…グラス2/3くらい
・ヨーグルト…大さじ5
・レモン汁…小さじ1
・バニラアイス…好きな銘柄のやつ
つくりかた
①ヨーグルトにレモン汁を軽く搾り、よく混ぜたものをグラスの底に敷く。
②Aを混ぜ、スプーンやマドラーを伝わせながら静かに注ぐ。
③アイスクリームを浮かべて完成。
「北極海」
嘘エピソード: 某水族館のイベントドリンクとして考案された。
当時は大人気ペンギン「ポンちゃん」を模した、微妙なクオリティのピックが付いていた。
ウォッカを抜けば、子どもも飲めるフローズンヨーグルト風に (実際にヨーグルトちょっと凍らせておくと暑い日うまい)。
3.ラム
ラムなんかスーパーに売ってる?と思われるかもしれないが、酒コーナーになくても製菓コーナーにあったりする。
さとうきびで造られただけあって、甘い香りが芳しい。苦味×甘味であわせたらいい感じになりそうだ。
材料
・ダークラム…大さじ2
・コーヒー…グラス半分くらい
・メープルシロップ…好きなだけ
・生クリーム…グラス1/4くらい
・牛乳…グラス1/4くらい
・シナモンパウダー…好きなだけ
もし最寄りのスーパーに、希釈して使うタイプのコーヒーポーションがあればそちらを使用してほしい。味が濃いとうまい気がする。
全部混ぜて最後にシナモンパウダーを振れば終わりなのだが、もう少し見た目に洒落臭さがほしい。
ここでオシャレっぽい技を使用する。
牛乳+クリームをグラス半分弱入れ、頭が少し出るくらいの大きさの氷を置く。
ティースプーン→氷の順に伝い落ちるように、アイスコーヒーをゆっくりと流し入れる。
すると、2層になる。
ラムとメープルシロップの混合液をかけると自動的にきれいに混ざる。
昔のTumblrによく流れてきたgifっぽい。
「オールドタンブラージフ」
マジのエピソード: このあと大理石のボードの上にパンケーキと謎の木の実がばら撒かれた画像がリブログされる。
カクテルのクレオパトラあたりに近い気がする。苦甘くておいしい。寝る前に飲んで眠れなくなりたい。
4. ワイン
難しいのはウォッカ、ラムなどと違い、銘柄ごとに味が大きく異なることだ。
今回は南仏のシャルドネ(オーガニック) を使用する。
ワインが好きな人にはおそらく伝わるが、「スーパーで売ってる南仏のシャルドネ(オーガニック)」には典型的な香りがある。
見つからなければ自分が好きな銘柄を使用して構わない。
材料
・ワイン…200cc
・カモミールティー…2ティーバッグ
・カルピス原液…大さじ1くらい
・ローズマリー…真に必要なものなどない
つくりかた
①まずワインにティーバッグを浸して少々おく。フレーバードワインができる。
②グラスにカルピス原液と氷を入れ、フレーバードワインをそっと注ぎ、軽く炙ったローズマリーを添えたら完成。
「ガーデナーズエイド」
嘘エピソード: お腹が弱い庭師が発案した。
当時のレシピには彼の庭で育てた11種の草花と、発酵飲料が使用されていた。その中の多くが現在は違法であるため、後にカモミールとカルピスのレシピに改変された。
甘いの苦手な人はカルピス抜いて炭酸水などを入れてね。
5. 梅酒
タイトルにも「食材」と入っているし、スーパーで買いがちな食品を使用してみよう。
材料
・梅酒…ワンカップの1/2
・絹豆腐…1/2丁
・マスカルポーネチーズ…大さじ2
・アプリコットジャム…大さじ3
・有塩ピーナッツ…1粒
・梅の実…ワンカップに入ってるやつ
つくりかた
①よく冷やした絹豆腐に梅酒とマスカルポーネチーズを加え、滑らかになるまで泡立て器で混ぜる。
③グラスの底にアプリコットジャムを敷き、その上に②を乗せる。
④砕いたピーナッツと梅の実を乗せて完成。スプーンを添える。
「スムージーゲイシャ」
嘘エピソード: 日本文化が大好きな海外のブロガーが開発した。曰く、「Its calories should be zero since tofu cancels them. (豆腐が入ればカロリーは相殺されてゼロになるはずだ)」。
豆腐のつぶつぶ感が残ってスムージーっぽい。
面倒な人はふつうに豆乳で作っても問題ない。
まだまだ作れる!!自由工作カクテル
ビール+レモン汁+蜂蜜+すりおろし生姜
「はちみつレモンビア」などはオシャレっぽいダイナーでよく見るが、生姜を入れるとやや大人の味わいになる。
レモンでなくパイナップルなどを使用してもよい。蜂蜜がわりに缶のシロップ入れたりして。
おしるこ(冷)+バーボンウイスキー+バニラアイス
ホットでもアイスでもうまい。おしるこは濃い目でつくると良い。
❒
以上、スーパーの食材でつくるオシャレっぽいカクテル 、略してスーパーカクテルの一例である。
永久に終わらないかと思われた会議の帰りの電車で発案したレシピであるため、まだまだ発想の視野が狭いようだ。
そびえ立つ棚に各産地の食材がひしめき合い、見て回りはじめれば終わりなどはない (終わらせることはできる) スーパーである。
作れる酒のレシピは無限に違いない。
野菜はすりおろして絞れば液体になるし、肉だってどうにかすればきっと。
もしスーパーカクテルに挑戦したら、ぜひそのレシピと結果をシェアしてほしい。
もちろん酒を抜けばスーパーモクテルもつくれるし、「スーパーの食材縛りで可能な限り美しく美味しいカクテルをつくる」というフレーズから滲み出る創造性は、大きな可能性を秘めている。
まずは、ラムをコーヒー牛乳で割るところから。
Let’s try!
JUNERAYでした。
(お酒は20歳になってから).