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明晰夢で空を飛ぶこと - インヘイル / エクスヘイル

この日記は、頻繁に明晰夢を見る筆者が、これから眠る自分のために書き残すメモである。

夢の中で夢だと気づくためのテクニックは、昔からインターネットで散見するが、ご自身の快適な眠りを妨げることに他ならないから推奨はしない。


筆者においては、自ら進んで明晰夢を見ようとしたことは1度もないが、週に数回、ふと夢の中で自意識と視点を取り戻す瞬間がある。そこからむやみに動き回ったり、覚醒しようとしたりすると「目覚めた先もその先も、現実の世界に似せた夢の世界である」という非常に疲れる悪夢に捕まる場合がある。
その回避方法として、現実世界ではとうていできない、たとえば飛行などで脳に負荷をかけ、ゆるやかな起床をうながすのが安全である(もちろん万人に該当するものではない)。


明晰夢で空を飛ぶ方法について。

まず、空を飛ぶ原理や論理を考えてはいけない。自分の座標を空中に移動させ、さらに前方や上方に移動する。ただこれだけに集中する。
この運動はカメラワークの移動を伴うため、座標が地面から上空に移動することにより、可視の範囲が広くなる。ここでワールドの生成のために脳に負荷がかかりすぎると、意識レベルが上がりすぎて強制的に起床してしまう。街並みを生成するというよりは、同じパターンの繰り返しでごまかせる森や草原を作ることを推奨する。また、空中高く浮上しすぎても、視界が広くなりワールドの同時生成が困難になるため、ある程度の低空を飛行することを推奨する。
(念のため書いておくが、夢の中のワールド生成をしているのは、他でもなく夢を見ている脳である。どんな地形を再現することも可能だが、未生成のワールドが灰色に塗りつぶされた無となっている様は、脳の隙間を見ているようであまり気持ちがいいものではない。)

前方に移動する際も、鳥が飛ぶ道理を我々が瞬間的に会得するのは無理な話である。とにかく座標のスムーズな移動に精神を集中する。風を生成するのも有効な手段だが、あまり速い風にのると脳のワールド生成が追いつかず、やはり虚無に身を投げることになる。

どうしても落下する場合は、「息を大きく吸って体積あたりの重量を軽くする」などの適当な理論で浮上すると良い。上空から透明な糸を垂らし、それをたぐるのも良いが、一度空中に足場を作ろうものなら、その後に待ち構える夢の展開として有名なものは「落下」である。
また、建物が乱立するマップの中で飛行する際は、あらかじめ電線を消しておく必要がある。浮上する際に邪魔になるからだ。

浮上に成功した後に、移動が困難な場合は、ワールドの方を後方に動かしても良い。その場合はカメラワークの移動がなく、可視範囲のワールド生成のみに集中すれば良いため、最初から意識レベルの高い明晰夢ではこの手法をとると強制起床の不安がなくなる。

明晰夢からの強制起床は不快なものだ。乗り物に酔っているような吐き気に襲われることもある。また、失敗すると前述した「現実に似た別な夢」に起床してしまう可能性もある。

ここまで読んでいただいてお気づきのことだろうが、明晰夢の中で空を飛ぶということは「存在しない物理をでっちあげて脳に緩やかな負荷をかけ、スムーズな起床をうながす」ことであり、鳥のように羽ばたいたり、シャボン玉に入って浮いたりする気持ちのいい行為からはやや遠い。もちろん明晰夢中に巨大な鳥を登場させたり、頑丈なシャボン玉を生成することができ、それを自在に操れるなら話は別であるが、そのためには多くの経験と訓練が必要になるだろう。


明晰夢中で空を飛ぶ方法についてのメモは以上である。
これは筆者が自身の夢中で会得した技術であるため、筆者の夢以外でこの理論が適用できるかと言われたら、そんなはずはないだろう。
夢の中で空を飛びたい方は、各自の体質に合った手法を模索していただきたい。
(また、万が一このメモの手法を試してなんらかの不調をきたしたとしても、筆者は責任を負えないものである。)

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