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柄の布の魔力

 物心ついたときから、布が好きだった。私が育った名古屋では、大塚屋という大きな布屋さんが君臨していて、おそらく名古屋中の人が布を買う必要があれば大塚屋に来ていた(と思う)。昔はビル2棟分(現在は縮小されていると思います)、渡り廊下で行き来出来て、洋服の生地、カーテン生地、副資材などなどフロアごとに分かれていて、それはそれは品揃えが良くて、きちんと管理された生地たちが整然と並べられていた。働いている方も同じ制服を着て、若手からベテランまで知識豊富で、1番気持ちいいのは、布をカットして包装紙に包むまでの手際が半端じゃないこと。下町のお饅頭屋さん並みに素早く布を包んでくれる。またリボンなどのヒモ類に関しては、広げた片手を土台に、八の字にきれいに巻き付けて、あっという間に袋に詰められている。

 そんな魅力ある大塚屋は、子供のころは親に連れられてよく通ったし、高校生になると、予備校の帰りなどに一人で通い詰めた。ここに来ると存分に創作意欲を刺激されて、そんなにミシンをやる時間も無いのに、ついつい大量に買い込んでしまったものだった。

 布の何がそんなに私を魅了するのかなと考えると、やっぱり「柄」なのかなと思う。作りやすさ使いやすさで言ったら確実に無地なのだけれど、繰り返しの模様を描かなければならないテキスタイルの柄は、ただ平面の絵画とは意味が違い、それが加工されて洋服やカーテン、カバンになると、柄が全く別物になって服に表情を与えてくれる。そしてそれを身に付けた時、自分の心が華やいでいるのがわかる。派手過ぎる柄を大塚屋で見つけると、なんだか果敢に挑戦してみたくなってしまうのです。

 そんな柄物に憑りつかれている私は、人物画を描く時には、絶対に柄の服を着せたくなります。こちらは人物のスカーフとスカートに柄物を取り入れています。

「くるむ」2020春の院展 奨励賞受賞作品

こちらは、かなり前の作品ですが、植物や爬虫類に混ざって人物が右側に横たわっています。そのお腹の上にチェック柄のスカーフを描きました。

「浸食」2011院展出品作品

話は変わるけど、柄物のスカーフって、絵を描くには素敵なのでよく使うけど、日常に使っていたら、ツルンと滑り落ちて、気づいたら無くなってそうでならないんです。


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