またまた、岸田首相の思い付き施策炸裂!

 原子力利用について政府方針の大転換だ。
 8月24日、岸田首相はGX実行会議で次世代型の原子力発電所の開発・建設を検討するように指示した。新増設は想定していないというこれまでの方針を転換し、中長期で電力確保を目指す。来夏以降に最大で17基の原発を再稼働させるということだ。
詳細には次の3点だ。
(1) 福島事故後に稼働した10基に加え、7基を追加で再稼働する
(2)次世代革新炉を新増設する
(3) 原則40年、最長60年と定められている既存原発の稼働期間の延長
しかし、福島原発の廃炉作業は一向に進まない。本来なら今年原子炉内のデブリを試験的に取り出す予定だったが、それも延期になった。わずか数グラムのデブリさえ取り出せないのだ。それなのに、廃炉の期限は変わらない。(2041~2051年)
 さらに核燃料サイクルの拠点である青森県六ケ所村での核燃料の再処理工場が全く完成していない。それを手掛ける日本原燃は2022年度上期としていた施設の完成を延期した。これで26回目の延期だ。
放射性廃棄物の最終処分場も全く確定せず、いわば日本の原子力政策は、トイレのない状態で生活しているような状態なのだ。
 加えて、ウクライナ戦争では、原子力発電所がミサイルの標的になっているのだ。ヨーロッパ最大の原子力発電所が、連日の攻撃によって、外部電源がすべて失われてしまうような状況になっている。
日本では、非友好国である北朝鮮が常にミサイルを発射して挑発しているのだ。かの国では、核ボタンを押す権限は、ただ一人の手に委ねられている。彼の気持ち次第で、日本にも発射される可能性があることを考えるなら、今更、恐ろしくて原発の新増設など計画できるはずがない。
 
 これまで日本では、福島原発事故以来、原子力利用は縮小の方向で施策は進んでいたが、原子力ムラ勢力などが、それに抵抗を示していたのが、これまでの日本の原子力状況だった。それが、ウクライナ戦争以降のエネルギー問題に乗じて突如顔を出したという唐突さだ。
 しかし、日本全体の原子力利用については、国民感情として消極的になってきたし、国の方向も何となくそちらに傾いていたようだ。それに符合するように、大学の学部に原子力をメインに研究するセクションが減ってきて、原発の廃炉に向けた研究者の不足が喧伝されているのだ。福島原発の廃炉作業に当たっても、熟練した技術者が定年になり、現場から離れ、その継承が問題となっている今、急に原子力政策を変更するのは、拙速に過ぎる。
 
 岸田首相は、思い付きと世論の動向だけが、彼の行動の原動力になっているのかもしれない。
 故安倍首相の国葬問題はその典型だ。事件後、直ちに国葬にすることを打ち出した。多分、周りから入れ知恵されて、すぐに飛びついたのだろう。しかし、旧統一教会問題が安倍氏の死去に付随する形で現れ、世論は、国葬に反対の姿勢を知るや、おたおたしだしている。
 この人が「衰退途上国」と揶揄されている日本を再び浮上させることができるだろうか?
 

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