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-アルベルト・ベナイジェスという男-

今回は、アルベルト・ベナイジェス氏について少し書きたいなと思います。

アルベルトといえば、あのアンドレス・イニエスタを見出した恩師ということでも有名で、FC バルセロナのカンテラ(育成組織)において約20年間監督・コーディネーターとして活躍した人物です。その後、UAE(アラブ首長国連邦)やドミニカ共和国のクラブでも指導者として活躍した後、昨シーズンは日本のヴィッセル神戸にてアカデミーディレクターを務めました。

そんな彼と運が良いことに2019年の夏、神戸でお話する機会がありました。

短い時間でしたが、彼の人柄の良さ・圧倒的な知識や経験値を肌で感じることができ私にとってはかけがいのない時間となりました。

神戸のヨットハーバーで夕食をご馳走になりその帰り道、なんと彼の車で私の家まで約30分かけて運転をして送ってくださいました。。自分は助手席、彼が運転席。あの時の緊張感は今でも忘れません、笑 

今回の記事ではその時に、彼と話した内容・私が感じたことを少しまとめてみました。

①日本の育成年代の現場を見て最初に驚いた事



まず初めに、彼が今の仕事のために初めて日本に来日され、日本の育成現場を見た時に一番ビックリしたことが、「グラウンドにロッカールームとシャワー室がない」です。
日本のサッカーの世界で育った我々からすると、グラウンドの空いたスペースで荷物をまとめ、裸になって着替えをし、練習・試合後には家に帰ってシャワーをするような環境というのは当たり前な認識ですが、スペインの育成現場しか見てこなかった彼からするとそういったことも初めて見た時はビックリし、衝撃を受けたそうです。
たしかに、スペイン人の子供達は各チームにロッカールームが用意され(時間帯によって入れ替わり)、そこで着替えをし、荷物を管理し、そこで指導者とのミーティングが行われます。
練習・試合後にはシャワーをして家に帰ります。
要するに、プロが行うようなルーティンを小学生2.3年生くらいから行うわけです。
小学生から贅沢だなと少し思ったりもするかもしれないですが、環境の違いとして1つ、このようなこともスペイン人からするとビックリすることなんだなと思いました。

②小学生年代に優先して指導したい点

次に、彼がもし小学生年代の指導者ならば何を優先して取り組むかという質問をしました。
そこで返ってきた答えが「1対1の局面」です。
すごく意外な回答でした。
向こうに行ってどんだけ小さな学年のチームでもいわゆる「ダンゴサッカー」というものを見たことがなかったし、正直言ってポジショニングの話やグループ戦術のテーマが返ってくると思っていたので正直なところ想定外な答えでした。
彼曰く、小学生年代の時期は試合中もコート全体に一対一のようなシチュエーションを構築し、攻撃側ならそれを外す動き(デスマルケ)や、テクニックアクションでいうと相手を抜くドリブル(レガテ)、守備側ですとマークにつくという個人戦術などが重要視されるべきという考え方です。
より深いところまで聞き出すことはできなかったのですが、私の見解では1対1のシチュエーションとは言いつつも、ある程度のグループとしての規律・ポジショニングがチームの中でありきの話で話されていたのだとは思います。

③プレーモデルの必要性

三つ目が、プレーモデルは小学生年代において必要なのか?という問いです。
彼の答えは「NO」でした。
先ほどの話にもあったように、この学年ではより1対1のシチュエーションに特化した内容を優先すべきという考えですので、深く細かいプレーモデルは必要性がないとの考え方です。
ただし、1つ言っていたのはスペインでは指導者の上の立場、「コーディネーター」という役職が発達しています。
最終的には、そこがクラブが持つベースとなるプレイモデルというのを提示してくるケースというのがほとんどですので、実際問題 プレーモデルを無視して このようなアルベルト氏のような考え方でサッカーをさせるというのは複雑なテーマではあるとおっしゃっていました。
私が実際所属するクラブでも、11人制に上がる前までには、個人戦術アクションとテクニックアクションは子供達に最低限として身につけさせましょうということをコーディネーターから強く要求されます。
しかし、アルベルト氏がおっしゃるほど1対1の局面にフォーカスしてお話をされるスペイン人は初めてでしたので少し新鮮な感ででした。
何が正解かはありません。
大事なことは、各指導者が自分の中でサッカーにおいて発生する要素に対しての定義付けを個人の見解で行うことです。

④その国の文化を知ることの重要性

最後にこれは私が彼とこの期間に一緒にいて最も感じたことです。それは日本の文化にとても詳しいということです。正直、かなり衝撃でした。神戸の街はもちろんの事、日本人の特性・日本サッカーの歴史・日本史などなど、、なんでこんな事知ってるんだってことを彼は流暢に話していました。彼に聞くと、日本に上陸する前にかなり日本のことを勉強してきたと言っていました。大きなリスペクトと共に自分に対してすごく恥ずかしい気持ちになりました。明らかに日本人の自分より自分の国の文化を熟知している外国人の方が目の前にいることに、、、

異国の地で、指導の現場に立つ際に、その国の文化を知るということはとても大座なことだとコーチングスクールでも習っていたはずなのに、自国の文化すら知らない自分に情けない気持ちになりました。これは、アルベルトだけではなく、ヨーロッパ人は自国の文化を非常に熟知しています。

スペインで学んだことが全て日本に帰った時に通用するってことじゃ無い。「日本人」を学ぶことからがスタートラインだなと改めて感じさせられました。


まだまだたくさんのことを話させてもらいましたが、重要なポイントを4つ話させていただいました。

それでは、また〜〜!!


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