古代の薩摩940年 #38

第二部 弥生時代 段小五の戦さ自慢
それから2日後、お昼過ぎに馬軍団10名が凱旋した。先頭は段3兄弟の末弟小七、次は小五、長兄の小二、続くは馬好き5人衆、順に呼延譲(こえんじょう)、張麟(ちょうりん)、馬永(ばえい)、赫大堅(かくだいけん)、董雲(とううん)、それに定六、殿(しんがり=最後尾)が史進だ。広場では船で帰還した70人が待ち受け、多くの村人も歓迎に加わった。茜や八重、謹言など若い女たちはごちそう運びに大忙しだ。最近作られ始めた弥生土器の茶碗がみんなに配られ、男たちは酒を女には甘い果実汁が注がれ、孟達の音頭で祝勝会が始まった。しばらく楽しい談笑が続いた中、突然、健が大声で言う。
「まだ戦いの報告が足りない。誰か、詳しく話してくれ。」
すると、やおら段小五が立ち上がり、「この戦いの一番の手柄はこの俺様小五よ。」と大見えを切る。やんやの喝采(かっさい)の中自慢話が始まった。(つづく)

段小五の戦さ自慢(つづき)
戦いは早朝に始まった。広大な草原に敵は横一列に100人が剣を構えて俺たちを威嚇(いかく)してくる。こちらは80人。剣は持たず、竹の棒を持ち、みんなでおびえたふりをしていた。敵に「倭人は戦いを知らない。武器もない。いくじなしだ。」と思わせるために。さらに市松殿が前日奇妙な果たし状を敵の大将趙高に送っていた。そして夜更けには我々3兄弟が敵の陣屋に忍び込み、馬3頭を頂いてきた。
さて、戦う前に市松殿が趙高に向かって戦うのは止めようと呼びかけることから始まった。馬に乗っているのはこちらが市松殿と史進隊長、魏応副隊長の3人、敵は張高を真ん中に強そうな武将2人が脇を固めていた。敵はますます我々が戦闘意欲がないと感じただろう。こちらはそこで戦う前に8つの陣形を見せて、よく訓練されている。本当は強いのではないかと疑心暗鬼にさせるような戦法で臨んだ。敵は予想通り、これをお遊びと見て、あなどった。敵にスキありである。史進隊長が9の陣を指示。まだ敵には見せていない秘密の戦法である。何回も何回も訓練した陣である。
隊長と副隊長が最前列に二人並び我々はその後ろに5列縦隊で戦闘開始である。史進殿の号令がかかった瞬間に先頭2頭の馬が全速力で趙高の直前に到達。身柄を確保してしまった。敵はあっさり降参。武器と馬以外はそのまま返して船に乗り込ませた。双方一人の損傷もなく平和裏に問題は解決した。「どうだ、すごいだろう!」と小五が胸を張ると、健が「お前、馬を盗んだだけじゃないか?」と茶々を入れたが、小五は全く動ぜず。小五の勝ち。
みんなの「やんや」の喝采の後は食事が続けられた。本当にいい一日だった。

この物語は、薩摩の古代の歴史をドキュメンタリー風にしてみました。
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いつか映像にしてくださる方がいると嬉しいです。 吉峯盾

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