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2021年の振り返りとなんで開発者コミュニティやってるのかの話

こんにちは、じゅんです('ω')
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

年末なので活動をざっくり振り返ってみることにしました。
後半の本題では、なんでコミュニティを続けているのかを現時点でまとめてみたので、主に技術者コミュニティを運営する人に読んでもらえればと思います。継続のモチベーションを発見してくれればうれしいです。

コミュニティとしてのイベント運営

 2021年のconnpassページを見ると、#DoMCN の冠のついた運営イベントは計14回行いました。内訳は、毎月第三水曜日開催の XRミーティングが12か月分、VRChat Meetupが一回、#AR_Fukuoka のハンズオンのサテライト会場設置が1件です。2020年も13件だったので、自力運営でのイベント開催のペースは同じという感じです。

#DoMCN は札幌HoloLens Meetupの開催をきっかけに生まれた開発者コミュニティですが、今年も一度も地元開催を行いませんでした。xR系の領域においては、この領域に踏み出すための駆動力の大半は体験会での体験・交流であるだろうと私は考えており、現在の感染予防対策の環境では十分な機会を提供できないと判断して休止しています。
 一方で、以前からオンラインで協力体制を敷けていた勉強会運営については、コロナ前より密接な交流が出来るようになりつつあったので、別の地方で行われる勉強会・ハンズオン・ハッカソンにリモートでサポートする活動を増やしました(後述)。
 11月にようやく少人数ながらもオフラインの現場でのハンズオン・体験会を開催することもでき、対面で新しい人と知り合う場もオープンにできつつあります。

コミュニティとしてのイベント運営支援

 同じ技術ジャンルで活動されている #大阪駆動開発 , #AR_Fukuoka のイベント中心に支援させていただいています。

 3月のハッカソンでは札幌にもサテライト開発拠点を設置し、HoloLens 2の実機を参加者に触ってもらえる様にしました。ハッカソン参加者にのみアナウンスしたので非公開イベントになりました。SNSでの広報も一部受け持つ形をとり、私がワーワー騒いでいる様子もイベントの一部として残っています。

 11月のハンズオンにおいても、この方式を採用して、今度はQuest 2, HoloLens 2を供出しました。ここではオープンに募集することが出来ました。

 来年2月に決勝が開催される神戸のアプリコンテストにも協力を表明しています。アプコン応募予定者に対し、XR系機材を札幌に調達するor私の私物機材でサポートする予定です。

個人としてのイベント運営支援

 こちらが激増した方のパートで、関わり方も様々ながらたくさんのイベントをお手伝いしに行きました。

 毎週(最近は火曜日の17:30-18:30)行われるようになったDevRel Radioでは、毎回決められたテーマでお便りを書くとDJのあつしさんが読んでコメントをくれます。思い出したら書くようにしています。

 Developer Relations界隈の方が始めた、発信技法に関する情報共有会です。オンラインならではの工夫を探索する会です。

 裸眼立体視ディスプレイ The looking Glassのコミュニティ勉強会です。コロナ前はハッカソン開催にあわせて東京に飛んだりして現地スタッフをやったりもしていましたがそれが出来ないので配信先からにぎやかしを勝手にやっています。

 とある学会のポスターセッションの実施を相談されて、プラットフォームの事業者と学会運営の間を繋ぐ活動をやっていました。運営メンバーへの体験会実施までをサポートしてみましたが、この案件については実現しませんでした。残念。

 2021年 第82回 応用物理学会 秋季学術講演会VRセッションです。私の所属学会で初めて年次大会でのVR会場が採用されました。KOSEN Chapterの中山さんが2020年から模索を続けていたものが日の目を見ました。いつもどおり現地応援とSNSでアウトプットして痕跡残したり、ブログ記事で痕跡残したりしました。現役の学者さんがやらない(やれない)サポートをやります。

 国内Developer Relationsコミュニティの総本山 #DevRelJP の全国大会をサポートしました。14あったパネルセッションのうち、XRセッションのセッションオーナーとして運営参加し、メンバー集めとコンセプト決め、予告動画の案内、StreamYardの配信画面制御、Microsoft Meshを使ったリアルタイムデモ映りこみ(!)などなど経験しました。記事もあります。

 DoMCNコミュニティの運営を一緒にやっているさって~さん(@s_haya_0820)が独自に始めたハンズオンです。社内で業務展開できるようになったARネタに関するコンテンツ作成技術を一般にも広める試みです。遠く離れた地域コミュニティ同士の縁から発展してきているプロジェクトなので応援しています。

個人としてのイベント登壇・参加

 connpassページに残っている参加イベントの数は83回でした。これにpeatix, EventRegist, confit, 各種学会, 海外のイベント, 企業主催イベントなどが加わるので、多分110-120回くらいは出ているのでしょう。去年のconnpassが56回なので、1.6倍の活動量になったようです。登壇は11回くらいです(去年は15)。

https://www.slideshare.net/JunyaIshioka/presentations

 基本方針としては”xR外の領域の人にxRの技術・文化を知ってもらう"を継続していた感じです。なのでxRではない領域によく出かけていて、その過程でお呼ばれした際にはLTを提供して活動紹介をしていくという流れが多かったように思います。去年はコミュニティマーケティングコミュニティ(#CMC_Meetup)の隣接領域としてDeveloper Relations(#DevRelJP)のイベントに参加してましたが今年は逆転して、#DevRelJP の隣接領域として #CMC_Meetup 、コミュニティリーダーズサミット(#CLS高知)、コミュニティマネージャーの勉強会(#CMXConnect)、カスタマーサクセスカレッジ(#CSカレッジ)などの知見を吸収して回りました。
 参加した会についてはハッシュタグで実況を残すことを忘れないため、あらゆる会のtogetterまとめに私のツイートが残っており、謎の存在感を醸し出しています(後で自分が検索するときも便利)。

①ガジェット系

②ハンズオン系

③北海道に関連するITコミュニティ(登壇もした)

④文化に関する情報収集

⑤ややテクニカルな話題の勉強会

⑥アカデミック系

 私の主な活動区域である学会方面では、割と早い段階でハイブリッド形式に戻るなどの動きもありました。ITのコミュニティに先行してハイブリッド形式のメリットデメリットなども体験することが出来ました。

コミュニティイベントまとめ

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 前回のnoteでもこの絵がありましたが、まさにその通りの感じになった1年だったように思います。

本題:技術コミュニティをなんでやってるのか

 最近、行く先々で出会う人に、「事業をやった方がもうかりそうですよ。なんでわざわざコミュニティをやるんですか?」と質問されることが増えてきました。↓の独り言にもわりかし多めの反応が付いていて、気になっているフォロワーさんも多いようです。なのであまり一般の方が意識されない開発者コミュニティの効能をまとめた方がいいかもしれません。

効能が発展して波及していく

i)個人で参加してよかった事
・気になる技術に触れる機会が得られた
・体験してみたいガジェットを触ることが出来た
・技術に関心のある他のプレイヤーと知り合うことが出来た
・技術を深掘りしたい場合に誰を追いかければいいのかなんとなくわかった
・開発者イベント主催者を知ることが出来た

 一般的に語られるのはこのあたりかなと思います。出来た事からそれぞれの学びが派生します。
これを、運営サイドで書くとこのようになります。

ii)運営サイドで開催してよかった事
・気になる技術に触れる機会が得られた
・気になる技術をふれたいプレイヤーを知ることが出来た
・体験してみたいガジェットを触らせることが出来た
・ガジェットを触りたいプレイヤー・開発者の分布を知ることが出来た
・テーマで扱った技術に詳しい開発者と直でやり取りが出来るきっかけが出来た
・開発者イベント主催者も参加者で来たので、コラボイベントの可能性が出来た
・発信者の分布を知ることが出来た

 つまり単発のイベント参加に比べて単純に情報量が多いです。ガジェット・技術に+人の情報が加わる感じです。そしてこれを継続すると以下の状況に派生します。

iii)運営もする参加者として継続活動してよかった事
・「いつもいますね」といろんなところで言われる
・開催記録が信用の担保代わりに機能し始める
・その結果、自分の活動への協力者が個人→企業へと変遷し始める
・自分が新しく参加したイベントで見たネタを、過去の参加者の誰が好きそうかわかる
・直で伝えて即つなぐと喜ばれる
・つなぎ先が企業だったりすると雇用が生まれる

 このあたりから、「体験させる人」というイメージが付いてることによる様々なことが起きました。機材をお借り出来たり、アプリの体験機会がちょっと早かったりします。そしてこの段階をベースに、他分野の運営を助けると異世界転生モノになります。

iv)他の分野の勉強会に参加してみて良かった事
・単純に勉強になる
・別分野の共通言語を得て自分の言語化の精度が上がった
・文化をインストールできれば、(i)→(iii)までのステップアップが爆速
・交友関係が(i)-(iii)を理解している運営者だらけになる
・他分野から、xRといえば○○さん好きだったなと思われる
・急に呼ばれる
・うまく期待に応えられれば更に面白い場面にも入り込めるように
・元の分野からは、△△の分野にも話ができる○○さんと思われる

 このようにして、xRの内外に無二の特殊なポジションを作ることが出来て、更なる機会が降ってくることになります。xR × □□、の□□の掛け持ちを複数やると効果が累乗で効いてくるイメージです。そしてここまでの活動はすべて趣味です。収益性0。マネすると死にます。ここに来るまでにわりと丁寧に試行錯誤を積み重ねているので、多分他の人の再現性はないです。

目的は好奇心の伝播、強みはフットワークの速度

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 私の当面の目標は好奇心の伝播をうまくつくることです。なのでそれに付随することを日々考えています。↑の二枚のスライド画像は私がHoloLens Meetupにおいて発表した、コロナ環境下でのプロモーション施策案です。開発者コミュニティ活動の良さは、関係者の少なさによるフットワークの軽さとネットワークの独自さなので、それを活かすことでHoloLens 2の世界を拡げる形を提案しました。もしこれが実現されていれば、属性と目的の異なる6方面のプレイヤーがそれぞれ幸せになっていたのではないかと思っています(余談ですが2週間インターバルルールに基づいた被せ人活動は個人で現在も継続しています。これなら公開してもリスクはコントロールできるので楽)。

 関係者の少なさと、一瞬の判断の速さはコミュニティ周りで私がいま最も大事にしている要素です。個人戦略として、これらが鈍りそうな状況からは距離を置いています。やらないと自分が決めていることは結構あります。

1万人に1人の人を見つける趣味活動

 経験上、「VRをやるといいですよ」と無目的に他の人に言ったときに、その人が実際にVRを始めるのは100人に1人くらいだと思います。高いし。実際、自分がかつての職場で体験会場常設までして面白さをアピールしても誰の行動も変えることはありませんでした。
 また、コミュニティで勉強会を開催した時に「運営側はいいぞ」といった時に実際に運営を手伝ってみるという人も100人に1人くらいのオーダーだと思います。10人に1人とかはまずいません。やると大変だし。さらに今はオンライン視聴というカジュアルな参加方式が出来ちゃってるので、そこから姿のみえない運営サイドに飛び移るにはなおさらハードルが高いだろうと想像します。
 つまり、VR領域かつ運営サイドという人は1万人に1人くらいしかいません。1日1人とランダムに会うなりして資質を持つ人を探すとしたら最大30年くらいかかりますね。この人をもし意識的に見つけられるとしたら、それこそ業務になりえてしまうわけですが、そんなうまい方法はありません。
 ところで、運営者属性とVR属性を両方持った人が自然発生的に生まれた時に早い段階で見つけられる方法があります。イベントに参加するエンジニアは、出来上がった運営者を見つけることが出来ますが、なる前の運営者を見つけることはありません。一方で、運営者は自己の経験からコミュニティイベント参加者の中に運営者属性が居るかどうかはなんとなく分かります。その人をそれとなく引っ張り上げることで、希少な運営者を増やすことが出来ます。なお声をかけるにはタイミングが最重要です。
 2020年にはKOSEN Chapterの中山さんを発見し、2021年はiPhone LiDARのいわまさんを発見しました。それぞれの場面に適した発信の場があることを遠くから伝えてみた結果、うまく活用してもらえて現在は立派な運営者になっていきました。年に1人ずつなので我ながら打率は結構いいと思います。
 勉強会の運営をすると、技術に関する知見が得られて仲間が見つかるだけでなく、うまくやると次の世代の運営者も見つけることができます。技術コミュニティ運営者の大事な機能は実はこれなんじゃないかとうっすら思っています。初めての登壇から初めての運営まで自分が通ってきた中から手助けができますからね。

 コミュニティの性質上、技術を扱う”個人”に焦点を当てることが出来て、また逆に自分自身も個人として認識されるのが多いのが、自分に向いていると感じるもう一つの側面でもあります。


運営者が増えると伝播速度が上がる

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 ちょっと目先の違うお話に移ります。文化が出来るまでの過程に着目します。
 ①から④の状態を目指したときに、その実現のスピードや可能性を決めるのはそのネットワークの構造です。②は交流の経路が少なめの人がゴーグルを被っている場合で、③は情報ハブみたいな人がゴーグルを被っている場合です。②の人はその友達に濃ゆい説得でもって隣の人にゴーグルを被せるかもしれませんが、そこで伝播が止まる可能性があります。なにより時間がかかりそう。③は1個1個の縁は薄いものの、未VRユーザの人の周りに複数人のVRユーザが居たりして場の雰囲気に作用する力があるので、条件が揃えば大規模に文化がひっくり返る可能性があります。
 普段運営者がやっていることは、いかにして③の人を増やすかです。技術を楽しんでいる様子を積極的に各人に発信してもらうことで、その周りに仲間を増やして次の面白い事を思いついてくれれば新しい企画がうまれます。そして勉強会運営者が増えた分だけ、③の人が増える可能性を持った枠組みがさらに産まれるということです。どんな方法でネタを広めてくれるのかは、毎回私の想像を超えていたりするので大変勉強になります。
 その様子をみているのが楽しいので私はこちらを特に応援することにしています。文化が変わる様子がみられればそこから教訓を抽出して、将来、古巣のアカデミック分野の変革がサポートできたらいいなぁくらいに考えています。

一種のバクチなので事業にならない・しようがない

 最初の問いに戻ると、「事業をやった方がもうかりそうですよ。なんでわざわざコミュニティをやるんですか?」でしたが、答えの一つは事業にならないです。
 私個人の楽しみを追求するためにいろんなことを試していますが、いずれも短期の利益に結びつかないものばかりです。やればやるほど損をします。
 たまたま先述の10,000人に1人の逸材を見つけた時には文化変更するきっかけレベルの何かが起こる感じです。しかしその時も利益は手元には発生しません。こんな不確実な事柄に投資する人はいませんね。企業としての調達は不可能です。

 そうはいっても、人生を通じて得た現在の私の手持ちカードでは、楽しい事を拡げてくれる人を見つける手段がたまたまコミュニティ運営しかないという状況なので続けています。

 こちらの路線で面白い人を見つけたり、面白い人に見つけられたりするためには、常時ヒマである必要があります。これが既存の事業(商売相手を必要とするようなやつ)とか事業計画とかと極めて相性が悪いので、負担を非同期に分散させられる仕組みを作っています。とはいえそんな危ない私みたいな人に仕事を頼んでくれる人も少数派なので、結果的にすごいヒマです。なのでコミュニティ活動が継続できている中から、なにか新しい価値を探していこうと模索して今に至っています。

まとめ

 いちおうTop絵に書いたことは伝えられる文になったのではないかと思います。自分に課した/課せられた目標をクリアしていく過程でちょっとずつみなさんに手伝っていただいて今年も年を越せそうです。ありがとうございました。自分が面白みを感じているから続けてこれていて、これからもゆるゆると続くとは思いますので、今後ともよろしくお願いします。
 もし、自然科学の分野にフィードバックをかけるような機会がたくさん巡ってきたらそっち最優先なので忙しくなると思いますが、当分来ないかもしれません。

 そして万が一、このスタイルの活動が既存業務のどこにも抵触せずに認められるなんていう珍しい会社がありましたらご一報ください。見学に行くかもしれません。

 それではよい年末をお過ごしください。

(2021/12/24 初稿 8160字 600 min
 2021/12/26 修正 7573字)


noteの2021年の記録という報告も公開されたのでつけてみますね。

DevRel Advent Calendar 2021も二件書きました。