「コミュニティ」と「セミナー」の違いと使い分けについて

本記事は、DevRel Advent Calendar 2020 の12/10日担当分の記事として公開しております。8日目も空いていたので勝手に埋めました。参照先が14日とかだったりして時空がねじれますが気にしないでいただければと思います。

今年のオンラインイベントを振り返る

 コロナ感染拡大予防のためオフラインイベントを多くのコミュニティが諦め、オンラインの運営方式をそれぞれ模索する決定的な年になりました。当初はzoomの配信をどうしたらいいのかなどが中心に議論され、#mvsmjp コミュニティなど配信技術のコミュニティも生まれ、配信方法が確立していきました。ツイッターの即時フィードバックが配信画面に同居するようなスタイルが人気になってきたのは夏~秋ごろだったように思います。うまく言えませんが、画面がテレビ番組化してきているという印象があります。

最近のコミュニティマーケティングコミュニティでの話題の一つ「コミュニティのセミナー化」

 12/14に #cmc_meetup vol.18が開催されました。

 2つ目のセッションでの高橋さんの問題提起に皆さんがうーんてなる場面が来ます。コミュニティのセミナー化を防ぐには?というタイトルでした。

そもそも「イベント」と「コミュニティ」の違いを明確に答えられるか?という質問から始まりました。だいたいあの瞬間の私の答えで、概形についての認識は合っているようでした。

議論に関連するnote記事も挙げられたので参考に並べておきます。

配信についてのMitzさんの記事も。

 議論をはしょると、オンラインイベントが成熟するにつれて、いろいろな形で1対n人のコミュニケーション方式が優位になってきて、それに伴って昔「セミナー」と言われていた形に近づいているのでは?という問題提起と、参加者間で持続的なコミュニケーションが作り出せないとコミュニティというには無理があるよね!という結論だったかと思います。(途中音声が小さかったのでよくわからなかったけど多分そんな感じ)
 それを踏まえたうえで、あんまりその場で出てこなかった観点が今回の記事の中身になります。

「コミュニティ」:発信者ファースト&参加者ファースト「イベント」:参加者ファースト

 基本的には前段で議論されていた「コミュニティは持続的な場」「セミナーは一方的」な感じで大体同じ認識です。じゃあそれを続けるためにはどうやるのか?という話になるはずですが、私は上のように考えています。
 基本的にコミュニティは大小のイベントの連接で形が見えてきます。イベントの前後で参加者がおのおの教えあえる関係を見つける機能が作れれば、コミュニティとしての機能を持ち始めると思います。
 発信者(登壇者、ツイ廃、ブログ主、運営)が「この場で発信して良かったな」と強く思うような体験をみんなで作り出すことが出来れば、コミュニティイベントとしての3回目が出来ます(2回目は半自動的に出来ますが初回でミスっていると、初回の発信者が応援してくれません)。発信者が楽しかった、という描像が残った場合、その場で参加者側だった人ももしかしたらその場に立ってみたいと思ってくれるかもしれません。あるいは初回の発信者が関心軸の近いお友達にその場を勧めてくれるかもしれません。そういう意味で発信者の新陳代謝か規模拡大が起きると嬉しいですよね。
 もちろん発信者だけが楽しいという形は、参加者おいてけぼりの状態も考えられるわけですが(いわゆる内輪ウケ状態)、そうなってしまった時は参加者がリピーターでいてくれなくなってしまうので、コミュニティとしての存続は難しいんじゃないかと思います。

 なので、「コミュニティの運営」として(広報だけど)、私が考える条件としては、発信者・参加者それぞれの幸せがその場にある状態、と言ってみます。これをそれぞれのコミュニティの特性に合わせて設計するのが、コミュニティをコミュニティの形に保つ秘訣なのではないかなと思います。それぞれの幸せの部分が本当に難しくて、人の集まり方によって全然違ってくるので、集まった人に直接聞いてみるしかないだろうと思います。

 そして例えば、参加者の願望が、「なれ合いは要らないので知識だけください('ω')」で占められていた場合は、問答無用で「セミナー」に移行できます。いわゆる1対nの情報発信におけるセミナー配信は、固定した知識を教えるのには効率的で、学校の授業みたいな感じですよね。とくに参加者からの質問はないかもしれないけど、何らかの知識が参加者に注入された状態で終わってみんなハッピー、という形になります。実はかなり楽です。(「セミナー」になった場合はコミュニティには戻れないんじゃないかなと思います)

 ただ、固定の知識でよい分野においてはそれでいいのですが、日進月歩で情報が更新されていくVRとかARの分野においては、それではあっさり浦島太郎状態になってしまうので、継続的な教えあいが出来そうなコミュニティ形式を取るのが合理的かなと思っています。

「セミナー」における「コミュニティ」文化の逆注入の試み

 12/14日、北海道立総合研究機構主催 AR/VR活用オンラインセミナーにて講演を行いました。#DoMCN の各メンバーで講演をそれぞれ引き受けました。

 かなり早い段階から開催の協力を相談されており、オフライン開催の現在の問題点を共有してオンラインのみに移行し、運営のアドバイスなどもさせて頂きました。

 自治体の公開イベントとしては相当柔軟な対応をしていただき、以下の要素を開催までに混ぜ込んでくれました。去年開催と全然違います。

・主催の組織のイベント担当さんが、xRのコミュニティイベント #XRMTG で告知トークをする。
・告知ポスターにDoMCNコミュニティハッシュタグが載っている。
・なんならSNSアカウント表示の欄がある。
・こちらの勉強会へのルートが分かるQRコードがついている。
・togetter公開OK(関係者の確認のあと公開)。

 結果としては、コミュニティの発信文化を持った方が「セミナー」に来てくれ、運営だけでなく参加者側にも発信者が居た形になりました。togetterの記事としてそれなりにまとまる形になりました。ありがたいです。

 残念な点としては、上5つの工夫によって、「セミナー」として参加した人がうっかりSNSで発信してしまう仕掛けを作りこめなかったことです。実はアウトプットを通じてコミュニティに関わると継続的な学びを得るのに近道ですよ、という講演を私のブースで用意していたのですが、みんなARのブースに行ったためにそのことを伝えそびれました('ω')
 ただポスターとかで痕跡は残ったかな?という感じになりました。
 #XRMTG の参加者の皆さんは本イベントの事を憶えてくれると思います。

 もしかしたら、今回の発信をどこかで見かけてくれた方がコミュニティの勉強会に顔を出してくれたらいいなと思っていますが、これは次回の課題にしようと思います。
 「セミナー」しか体験したことがない運営の文化に、明確すぎる「コミュニティ」のやり方が混ざった場合に、全体がどうなるのかという実験を実はしていた、というのが今回のARセミナーでした。どうなるんでしょうね。

DelRelの観点でのコミュニティ体験設計

 イベントに関しては、発信者が一番得な気分をするべきだと個人的に考えています。現象として、登壇すると情報が集まってくる、同じことをしている仲間が得られる、お仕事的なチャンスがふわっとやってくるみたいな状況が起きるようには常に工夫を続けています。
 たまたまそういう事を考えていると同じような事に取り組んでいる集団がxRの文化のそとに居て、#cmc_meetup の文脈で考えた方が言語化の精度が高そうだなぁとか、むしろ開発者ファーストの体験設計を考えている #DevRel という分野があると知ったりしたのが今年1年でした。

 去年も #cmc_meetup Beginnersの場でお話したことではありますが、開発者が楽しめる形に持っていかないと発信は途絶えてしまうと思うので、これがオンラインになった時になんの体験が望まれているのかをうまく反映させていきたいところではあります。


元・学者の観点でのコミュニティ体験設計が実は…

 身の丈に合わなさそうな事をいろいろ書きましたが、今までの議論って実は「研究室のゼミをうまく運営する方法」にそっくりそのまま転用できるんじゃないかと思っています。
 開発者同士の教えあいの部分って、普段の雑誌会で行われていたことだし、ブログを使った発信って、論文発表周りのスキームに似ていると常々感じています。査読があるかないかくらいの違いです。

まとめ

 今年1年は地方・趣味コミュニティの運営経験が非常に役に立った1年でした。今後、オフ開催への揺り戻しが必ず起きて、その場合にオンラインメインの参加者が置き去りになって離れる事が予想できる状況なので、みんなが楽しめる形を先に脳内シミュレーションしておこうと思います。

 とりあえず不発に終わった地方コミュニティ論のパワポを供養するために書きました(動機がひどい)↓これ


(2020/12/16 120分 3845字)


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