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日本顕微鏡学会第65回シンポジウム(倉敷・現地開催のみ)に現地参加してみた話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

 11/5-6に開催された、日本顕微鏡学会第65回シンポジウムという学会イベントに参加してきました。大会関係者のみなさま運営お疲れ様でした。所属学会のカンファレンスで遠隔・リモートの観察支援のセッションが初めて組まれた会でした。かつて自分の実験環境でリモート支援の実装をした私の出番かな?と思って様子を見に行くことにしました。結果的には新しい出会いがたくさんあって、質問を起点にしたネットワークづくりがうまくできた回だったかなと思っています。

春に開催された福島での年次大会の参加の様子は↓のリンクで紹介しています。


オフライン会場の様子

 会場の川﨑祐宣記念講堂では二か所の講演会場と、その会場を結ぶ廊下部分の企業ブースが設置されていました。朝から夕方まで講演セッションが続き、その合間に来場者が展示を見て回る形式でした。入り口にアルコール消毒コーナーと体温測定ゾーン(手首の非接触タイプ)がある以外は特に行動制限はない感じでした。会場へは岡山駅の電車に乗って西に行き中庄駅から徒歩15分くらいの距離でした。オンライン配信は無し。

シンポジウムと前回の年次大会の違い

 普段参加している年次大会と比較すると参加者数の規模が違いました。春はセッショントラックが5つありましたが今回は2つでした。もともと顕微鏡学会はマテリアル・装置系の集団と医学系の集団がくっついていますので、この文化での最小単位という感じがします。年次大会は主要な電顕メーカの巨大ブースが数か所設置されますが、このシンポジウムでは一律の大きさの小ブースが並んでいる感じでした。気楽。
 人数規模が減っているからか行動には多少の自由度が復活し、懇親会イベント(美術館ツアー)が設置されました。ただし私は、全国に先駆けて危険ゾーンになっている札幌から来たので不参加です。

2日間の過ごし方

 今回はオンライン配信が無いのでホテルにいる意味は無く、最初のセッションから現地入りしておいて、セッション参加して質疑などにも積極的に手をあげたりしていました。


Network Tele-Microscopy セッション

 シスコシステムズの高田さんは、TEMの映像を遠隔地と共有しながら実験を進めるWeb会議システムの裏側・運用面のお話をしていました。日本電子の奥西さんはアメリカで20年前から提唱・実装されてきた遠隔運用の需要が日本でも急に出てきて対応を進めているお話をしていました。川崎医療福祉大学の清蔭先生は、阪大が送信する映像を受信する側の運用体制のお話でした。阪大の竹田先生は送信する側の運用体制と、それを顕微鏡法の教育に活かすお話でした。加藤さんは自身の趣味として実体顕微鏡のデータをツイッターなどのSNSに積極的にアップして自身の繋がりをどんどん広げて機会に繋げるお話でした。
 すべてのお話に共感が出来るなか、個人的に一番驚いたのがSNS活用のお話でした。SNS活用は、顕微鏡学会がもっともやっていない(やれない)領域のテーマと考えています。開会直後の合同セッションのトリでこのテーマが扱われることは異常事態と言えると思いました。

 講演者に許可を頂いて写真を上げました(講演の録画・撮影禁止ですがSNS活用の講演なのでこれは大目に見て頂きたい)


残りの日程は普通に顕微鏡学会での振る舞い

 出禁にされたらイヤなので、セッションのテーマに合わせた質問をしたり、展示ブースでの雑談も展示に合わせたものにしてお互いの親睦を深めました。恰好はHoloLensつけてましたが、これがHoloLensであることを突っ込んでくれる人もいなかったため、大きな荷物を引いて移動する以外普通の学会員しぐさだったと思います。ポスターセッションでも真面目に質問して、ナノテク領域での知見も得られてとても良かったです。


成果

 まずは質問を通じて講演者の方々と連絡先を交換できました。開幕セッション終了後、講演者に突撃ディスカッションタイムをしたので、セッション座長の先生方とも挨拶することが出来ました。次に展示の会社とフレネルレンズネタで盛り上がり、関係を作ることが出来ました(後日北大の技師を展示物の文脈で紹介させてもらった)。また、初日の様子をひたすらつぶやいていたので、そのつぶやきを見て下さった運営の先生や学生さんから二日目に挨拶していただけました(HoloLensが目印なのですぐ見つかったらしい)。
 前世で研究者やってた時は、出展者・ポスター発表者と仲良くなれることはあっても運営と仲良くなれる機会がものすごく薄かったので、辞めちゃってる今の方がいろんな人と仲良くなれる方法を取り揃えている実感があります。

 例によって求職中と表明する機会を逸したので、また次回がんばります。

出張で得たネタを、すごさの分かる知人に持って行く。


オフラインの関係の作り方(現在)と、今後の関係の作り方の展望

 現在は、講演の後に質問をちゃんとやって情報交換を出来ることが関係づくりの第一歩という感じの、コロナ蔓延前の標準スタイルに戻ったと思います。オンラインオンリーの学会では、zoomの質問欄に来たものを答えてもらってもその後に続かなかったりしました。またハイブリッド形式の時には、オンライン側から質問されてても質問した個人の印象は会場に残ってないみたいなのもたくさんありました(これは学会に限らずDevRel領域とかもそう)。そんな事情もあり、会場に行くことが必要なのは変わらないので私は毎回現場に顔を出している状況です。
 SNSの発信は弊領域ではこれまで完全に無駄(もしくはマイナス)でしたが、今回の会場では一日目の発信が二日目に活きたりしたので、もしかしたらツイッター発信がキャリアに役立つような時代が来るのか?(半信半疑)と思っています。とはいえ、最先端のデータを扱う領域では発信できる素材も文化もまだないので、解決するべき課題はたくさんあるなと感じます(つぶやいてた人4人くらいだったし)。

児島地域へ一日訪問して、協力先の会社さんでスキャンデモ

 さて、6日までに主要な予定を終えましたが7日には倉敷の南部地域に行き、かねてから協力させていただいている会社さん(株式会社金星さま)の岡山事業所を見学させて頂きました。
 今回、こちらからはHoloLens 2を使った遠隔支援ネタを中心に見せてみようと思っていましたが、私が持ち込み機材をネットにつなぐためのWiMAXルータを学会会場に忘れて帰ったため予定のネタが全滅し(悪夢)、別のネタと入れ替えることにしました。
 観光スポットに連れて行ってもらったタイミングでiPadで3Dスキャンを実演して、会社所有のコワーキングスペースでも短時間でスキャンをさせてもらいました(セクション最後に掲載)。それらを事業所の若手社員さん達との場で一緒に見てから、3Dスキャンアプリで応接室もスキャンして結果を一緒に見て盛り上がりました。
 HoloLens 2の操作も未体験であるとの事でしたので、持ち込んだHoloLens 2のMixed Reality Tool Kitデモ集のアプリを動かして、基本的なハンドジェスチャー操作と、視線検出を活かした操作を試してもらい、活用イメージのフィードバックを頂きました。
 今回の使用アプリは、Metascan(Abound Labs)、MRTK Examples Hub(MS)、HoloRemote(ホロラボ)でした。#AR_Fukuoka 吉永さんの空間ポータルアプリ(Quest 2用)も準備したけどこちらは今回は話の流れで出番が来ず、Remote Field(RICOH)はデモ用ライセンスの準備間に合わずで未発動に終わりました。Looking Glassネタも次回以降に持ちこし。今回の目的を、手を動かしてやってみてもらうという事に換えたので、なるべく試しやすい素材(iPhoneあればとりあえずスキャンできる)ものにしてハードルを下げました。
 一通り、お互いの情報交換が済んだ後は、中国地方でのxR体験機会の無さをお伝えして(直近開催が広島だった)、もし岡山で体験会を開くことが出来ればまだまだ希少なポジションになることを知ってもらいました。コワーキングスペースを見学したのも、体験会場としてどのくらい向いていそうかを実際に確かめに行くことが目的の一つでした(バッチリ過ぎる施設でした)。出張費が無い以外は基本的にヒマなので、体験デモ実施に多少の経験のある我々を活かしてもらえるといいなと思います。

(追記:公開OKになりましたので、株式会社金星ブリリアントスクエアの様子がこちら)

 10分程度時間をもらって4部屋連結のイベントスペースをスキャンさせて頂きました。交流用のスペースですので、将来的にはこちらでHoloLensなどの体験会も開催できれば面白いかなと思っています。3Dスキャンデータは↓のリンク参照です。

https://metascan.ai/s/d2wznp

周囲に知ってもらうために工夫が必要

 オフライン会場にある程度人が戻ってきた時に感じる問題の一つに、「マスクしてると誰が誰か分からない問題」があります。薄暗い空間にいる登壇者がどんな顔をしているかを時間が経つとすぐ忘れてしまい、私が冒頭セッションで質問したかった人の顔も分からなくなりました。その時は、登壇の5名全員とお話したかったのですが、セッション直後には3名までしかお話しできず、シスコのWebexのネタとか川崎医科大のユーザー話とか深められなかったのが残念でした。(国立情報学研究所のサイバーシンポジウムみたいに、質疑応答用のSlackとかを併設して置いてもらえると交流機会が講演前後も広がって良いのにと思っています)。
 見わけが付かない問題がのちのち来ると分かっていたため、私自身は2018年から継続して出席学会ですべてHoloLensを首掛けしています。遠くからでも存在が分かるようにしていて話しかけてもらえる確率を少しでも上げています。
 現環境ではその場で質問をすることが最強の関心表示の方法なので、この機会はフルに活用するようにしています。質問用マイクを取る先生方の中に、一切名乗らず質問パートを長い間話す方が居らっしゃいましたが、隣の研究領域の若手とかからしたら誰か分からないですし(著名な先生でも)、下手をすると講演者からも誰か分からないので、人間関係づくりの観点からはあまり好ましくないと思いました(課題解決の観点からは省時間という意見もあるかもしれないけど)。生身のコミュニケーションが最大の強みとなるオフライン会場において、その人が何に関心ある誰なのかという情報は交流する上で重要性が高いというふうに認識していると、振る舞いに変化をつけられてよいと思います。

出張中に参加した他のイベント

 IT系のイベントはオンライン運営のものがまだまだあり、出張中であっても自由に参加することが出来ます。自分の興味ある活動にオフラインで出たいからその他がオンラインになっている様にしたいとシステムを構築した当時思っていた状況が図らずもいま実現しているので、こういう機会にはどんどん出て発信もしています。

JAWS DAYS 2022ふりかえり

10月に行われた #jawsdays2022 イベントについて後から舞台裏などを開設する会が4日に行われました。全国に参加者が居たので今回はオンラインに集約されて、oViceの特設会場を再利用して行われました。


エンジニアカフェトーク in Workrooms vol.4「xRとの出会い」

#福岡XR部 などでおなじみのそいちろさんがゲストで、エンジニアのキャリアからXRを仕事にし始めるまでのストーリーが共有されました。対談の場はHorizon WorkroomsというVR空間内の会議場が使われ、その様子をYoutube配信と組み合わせて一般参加者との質疑のチャンネルが用意されました。司会は #エンジニアカフェ 福岡に居たようです。



#大阪駆動開発 やまじさんと3年ぶり再会(なぜか神戸)

 毎月のXRミーティング(#XRMTG)で一緒に運営させてもらっている大阪・神戸・東京コミュニティのメンバーがたまたま三宮に用事で、私はそのちょっと北の新神戸駅に居たので、まっすぐ空港に向かわずに寄り道して一瞬だけ会ってきました。普段札幌と大阪なので遠いですが、20分圏内にいると分かればちょっと行ってみようかな、となるのが出張の良さでもありますね。

まとめ

 5月に続いて今年2回目となった出張をまとめました。新しい出会いがあったり、既存の関係を少し深めたり、いろいろ出来た気がするので、出張としてはとても良かったと思います。来年も、いい感じの時期を見つけて色んな方面の関係をつくるための旅をしたいなと思っています。札幌から現地に行きたくなるセッションテーマを設定してくれた運営の方々ありがとうございました。

最初のシンポジウム案内が来た時の発信。

(2022/11/17 初稿公開 5960字 240 min
 2022/11/19 3Dスキャンデータ公開 追記)

おまけ

・相変わらず旅が下手

・出張費はざっくりで飛行機20000円、宿4泊20000円、新幹線10000、岡山県内での電車移動など計10000弱、学会参加費10000(不課税)、食費5000くらい

行こうかどうかを直前まで悩み続け、月末にようやく決めたため、旅費支援やクーポンなどは一切もらえませんでした(多分)。宿はざっくり一泊ずつ確保した後、毎日宿予約サイトを見て、より安い宿が出てきたら予約し直すみたいな事をしてましたが、時間の無駄なのでさっさと4泊でとってしまえばよかった。

・機材は必要そうなものは大体持ち込んでいる
HoloLens 2, Quest 2, Odyssey+, Looking Glassなどのビューア、RICOH THETA V, KanDao QooCAM, Azure Kinectなどのカメラ系、スピーカマイク、ルータ、モバイルバッテリー、ゲーミングノートPC、顕微鏡学会誌など。


・ホテルスキャンは今回も役に立った

・食生活(コンビニ飯とカウンター席のたこ焼き、ホテルメシ)
人混みの中での食事をすべて避け、あとは終業間際のホテル夕食などでした。

・オフラインイベントが集中していろいろ取りこぼしている

・いつもの空港HoloLensおじさん

・荷物を連れて歩きまくった4日間だった