二年ぶりの東京遠征でひたすら新ガジェットを触って帰ってきた話(前編)

こんにちは。じゅんです。
Scientist/Developer Relationsとして実験系の自然科学研究者とxR/ITのコミュニティの接続を促すおじさんをやっています。ゆるーく技術導入の橋渡しを続けています。
11月24日~30日までの間、東京に滞在して今まで触れられなかったXR系ガジェットなどの体験イベントなどをはしごしてきました。私は2年ぶりの東京でした。展示勢の方々お疲れさまでした('ω')

後編(コミュニティマネジャー関係)

11/25 産業交流展で空間立体結像装置

 滞在二日目の昼は東京ビッグサイトにて行われていた産業交流展を見に行きました。"株式会社Spacial"の光輝さんのブース展示がありました。

↓光輝さん。


 私は上手く撮れなかったので、別の体験者さんの映像を使って説明したいと思います。奥に装置がありますが、そこに結像するのではなく、手前側の黒い台座の中央付近の空中に投影像が浮かびます。自分が左右方向に動くとほんのちょっと回り込めたりすることからもわかるように、角度が変わると異なる映像が受け取れるようになっています。両目で異なる像を受け取るので、人間の脳内では立体として処理できるような映像が空中に浮かんでいることになります。なので、空中立体結像装置といいます。体験しないとわからないシリーズぶっちぎりNo1です。
 ゴーグルを必要とせず、複数人が同時に見てもそれぞれで立体を感じられるところに特徴があるようです。

11/25 2D表現と3D表現のハイブリッドでの立体感提示

 目当ては光輝さんだけだったんですが、近くに出展されていた電駆ビジョンさん(@denqvision)の展示を見せてもらってなるほどと思いました(そいちろさんにもおススメされた)。

 こちらは2D画面を見て3Dを感じ取るための仕掛けです。被写体に向けていろいろな角度から写真を撮っておいて、順番に並べて画面遷移をスワイプ操作に対応させて視点操作にしています(これだけだとパラパラ漫画的)。視点操作の最中、点群3Dの表示に切り替わって自由視点のモードを経ることで、体験者は3Dの構造を捉えやすくなった状態で遷移先の2D画像を見ることができるようになります。
 博物館などで、表面のディテールを伝えたいのにフォトグラなどでは解像度が足りないというニーズに結構合っていて、ゴーグルも要らないのでマス向けという感じもしました(私が同様の相談を北海道でされたことがある)。現場では、ブースでまさに撮られたスタッフの様子をグリグリ回しながら説明してもらいました。
 私のレンチキュラー名刺に感動してくれたので、サンコーさん(@promotion_sanko)の紹介をしておきました。


11/26 XR Matsuri & ホロラボ体験会

いっこうさんのまとめも公開されています


①Varjo XR-3&Varjo Aero

#XRkaigi の後編で、11/25-26の間に行われた #XRMatsuri に参加してきました。今回の出張の最大の目的(ガジェットサイド)がこのVarjo XR-3でした。

 26日開店直後の10:00から予約済みだったエルザジャパンさんのブースに駆け込みました。札幌で体験することが久しくなかったVarjo社のヘッドセットがようやく体験できました。
 XR-3で体験できたのは①ビデオパススルーの様子、②Volvoの車のインテリア体験+ビデオパススルー、③ハンドトラッキング体験のための人体模型表示シーン。
 ①本体正面についている両目用のカメラの映像をゴーグル内に映し、ゴーグルをかけているんだけど外が普通に見える状態がビデオパススルーです。カメラ周りが非常に速く、自分の手の動きに対する表示遅れが全然気にならないくらいでした。ビデオシースルー対応の他社の機種では白黒だったり、中心で強い歪みがあったりしていくつか我慢する部分があるんですが、今回の体験では特に困難が見当たらない感じです。針の糸も本当に通せるかもしれない。
 ②車のシーンへの移行はちょっとMR的演出がありました。まず最外側の皮がレンダリングされ、機械部、インテリアと段階的にゴーグル視界内に現れました。フロント、サイドのガラス部分は①のパススルーのままになっており、運転席から往来が視えるシチュエーションのようです。Mixed Realityなので頭の位置を動かしても車はそのままの位置にあります。書き込まれたCGと視点の距離が常に計算されていて、たとえばハンドルまでの距離より近い位置に自分の手(これも前方に向いたデプスカメラで常時計測されている)が来た時に自分の手をパススルーにしてハンドルの手前に描きこむという処理をしています(オクルージョン)。手を認識するのではなく、距離で一律に会場側の映像を抜くので、ものを持っていても大丈夫です。
 ③ハンドトラッキングの様子をもう少し知りたいとわがままを言った結果、別のシーンにしてもらえました。またビデオシースルーがほとんどの空間にもどり、自分の手も普通に見えている状態です。空間に浮かんでいるユーザーインタフェースを操作するためにultraleapが動いています。手指を認識して、そこにグローブ状のテクスチャを貼り付けて表示されていたので、トラッキングが外れた時にはグローブがグネグネってなります。Questなどの画像認識ベースで私がうまく検出させれていないバイオリン演奏時の左手みたいな奇怪な姿勢も、粘って検出していました。親指の先端が隠れなければギリギリ残ってる感じです。
 約40分で自分の予約時間が過ぎたので、その後登場した @AKUZ3273 さんの体験タイムにも張り付いて一緒にあれこれ試して遊びましたw


 新しくリリースされたVarjo Aero(こちらは予約なしも可だった)も体験しました。マンションのモデルルーム的な空間を体験する形式のコンテンツでした。2019年にXRKaigiで体験できたVR-2 の進化&廉価版という感じでした。配線が簡略化されて、取り回しが良さそうになっていました。

② 溶接体験@イマクリエイトブース

 アーク溶接(多分溶極式)の職人技をプレ体験した後実際に同じ状況で自分で動作してフィードバックを得ることで技能が向上します。

 Qculus Quest2のコントローラに溶接の工具を模したアタッチメントがついていて(それなりに重い)、これを溶接棒に見立てて溶接チャレンジをします。水平にゆーっくり動きながら、溶接棒の消耗(速い)に合わせて上下もコントロールするのが難しいのですが、速度や距離などの数字が操作中に現れるので、そこを一定に保つなどの意識でやるとうまくいきます。
 実際の現場は遮光マスクをかぶって暗い視界の中作業を行うのでわかりにくいですが、溶接VRでは明るさも段階的に落としていけるため、実際の訓練以上に習得難度を下げれるような仕掛けを入れ込めるようです。


③HP Reverb G2 展示@日本HPブース

 前週XR kaigiの時にちょっと行ってみたこともあり、最近のWinMRの変化も調べてみました。コンテンツは、立て看板とタービンエンジンが配置されたワールドを自由に動くというものでした。解像度切り替えのギミックが仕込まれていて、Oculus Rift CV1時代の解像度を模した状態から現行の解像度の行き来をします。片目2Kくらいの解像度だと看板の文字が読めるようになりますね。音が良いと評判だったスピーカーの様子は、コンテンツがそもそも無音だったので試すことができず、残念でした。
 たまたま会場に機材を持ち込んでいたので、手持ちのOdyssey+のコントローラとの比較を撮りました。知らないうちにWinMRのコントローラからタッチパッドがなくなっているので、VRChatをやる時にどうやるんだろう?と思ったりしました。小さく軽くなっており、ボタン配置はQuestに寄ったように見えます。アテンドさんの「Xボタンを押してください」にどれがXかすぐわからない問題がありました。
 今回はOmnicept Editionの展示は無かったので、生体データを取得する仕組みを活かしたコンテンツなどが今後出てくるといいと思いました。

 ↑こんなこともあろうかとね('ω')

④WHITEROOM@南国アールスタジオ

 以前触覚MRを体験させていただいた南国さんのブースはHoloLensの体験は見送りで、iPadでの体験になっていました。遠隔コラボ用アプリケーションWHITEROOMで、在宅のアテンドさんと空間共有しながら会話することができました。

⑤NEUTRANS@Synamonブース

 VRの遠隔コラボツールのNEUTRANSも数年ぶりに体験しました。今回は足場建設現場の安全確認体験シーンということで、在宅のアテンドさんの指示に従って簡単なツアーとお絵描きツールでのコミュニケーションを試しました。HMDはRift Sだったと思います。札幌で実物を見かける前に販売終了になったので、こういう感じなのか~という印象でした。

⑥VIVE Flowは見ただけ(後述)@HTCブース

 開店直後からずっと行列になっていたHTCブースの終了間際に一瞬お邪魔して、実物を手に取ってみるところだけ体験しました。29日に別イベントで触れたので、そちらで書きます。

⑦OTOMIRU

 Matsuri会場の最奥にあって、存在に最初気づかなかったブースをお邪魔しました。

 たくさんのマイクである方向の音を集めて解析に回すと、方向の中でどの地点から音が発せられているのかが強度マップの形で得られます。この強度マップのリアルタイムデータをHoloLensなどのデバイスに渡して空間に表示することで、直観的に状況を把握できるようになっていました。


⑧ホロラボアプリ体験会@ホロラボの事務所

 レアガジェットなELF-SR1の展示も見れるらしいと聞きつけて、XRMatsuri終了後にホロラボアプリ体験会場に行きました。初めて一人用の裸眼立体視ディスプレイの中に高精細な建築3Dモデルが配置されている様子をいろんな角度から眺めてみました。マシンのカメラから顔が判別できないとフェイストラッキング&立体視が発動しないため、ちょっとだけマスクを下げる必要がありますが、ルッキンググラスではまだ実現してない密度感(光点の)を感じました。

コチラは複数人でも見れるルッキンググラスになります。モデルだけでなく影が動くことが立体感の提示に重要であることが示されていました。


11/29 HTC VIVE開発者交流会@Future Tech Hub

 VIVE Flowに触れるかもしれないと思って急遽参加登録して出発日の前日夜に駆け付けた交流会の様子です。

VIVE Flow

 皆さんが裸眼でつける事を試している中、私は自分のメガネとフレームが干渉するのか知りたかったので試させてもらいました。狭めのレトロフレーム(現代的な鼻当てのないやつ)であれば、つけたままでもキレイに見れる事がわかりました。目が悪すぎるので裸眼だと視力調整機構が不十分ですが、この方式であればピッタリ合わせこめるのでとても快適に感じました。
 コントローラはスマホを利用するタイプで、4ボタンくらいの役割をスマホ画面の上下左右に割り当てて操作する感じです。コントローラの3DoF具合と、Flow自体のお手軽さとが相まって、Oculus Goを思い出す製品でした。
 ゴーグルのバンドを締めこむ動作が無いので、女性も付けてくれやすいかもしれないですね。顔にも触れないようにできるので、その点も良さそう。
 前方カメラを使ったビデオシースルーモードも試しました。ボタン二回押しでサクッと移行して、前方カメラゆえの歪みの小さい映像を確認しました。単体で動くHMDの映像としては今まで一番違和感の少ない映像に思います。

VIVE Focus 3

 HTCのスタッフさんがFocus 3もゲリラ体験会してたので、そちらも初体験させてもらいました。遠隔コラボ用アプリをハンドトラッキングで試してみる事になり、Focus 3を被った私とスマホからログインのスタッフさんの間でのVR空間内通話をしました。絵も描けたり、音声入力での付箋生成・空間固定できるというもので、Microsoft Meshに似たものを感じました。Spatialとか、NEUTRUNSも用途が近そう。あと前鼻さんのコラボツールとか。
 ハンドトラッキングは数種のジェスチャが空間UIの操作に対応していて、Holo1のエアタップの操作に慣れていれば十分です。
 筐体に関していくつかQuest2との相違点があり、バッテリーが一体型じゃない点が展示会向きとのことでした。バッテリーパックを複数持って充電しておいて、一つが尽きた時にバッテリーだけ交換すればすぐ復帰できるシステム。

KAT VRに乗って、歩ける全天球動画の中を足で動き回る

 開発ライブデモを本編で桜花さんが行っていたスクリーンの裏に見慣れない装置があったので尋ねてみたら、わざわざセットアップをしてくれたので番外編としてこちらも体験できました。腰のベルトを締めると転ばなくなります(微妙に吊られている)。台の上を歩く動作がVR空間の中での移動に対応付けられます。丸い台自体は動かなくて、方向も自力で変える事が出来て、慣れると動きたい方向に歩くとその通り自分の視点も動くようです。私はちょっと慣れてないのでヘタクソでした。
 ごんびぃーくんがとてもスムーズに動いている様子を私が撮影係で残しましたのでこちらにも貼っておきます。タップダンス的な素養があるとなじみやすいようです。


まとめ

 XR Matsuriを中心に複数の体験会を回ることができました。帰ってきた直後にもELF-SR1の体験会イベントなんかも東京で予定されてたりもあって大変出発が心残りではあったものの、札幌で出来なかった新ガジェットの体験を二年分たっぷり得ることができて大満足でした。
 展示していたスタッフさんとのお話の中でも、札幌にはほとんど来れていないというお話をたくさん聞いたので、もし来る予定が出来たらDoMCNのコミュニティベースでお手伝いできる旨を伝えてみました。長年の地方DevRel活動で、地元のエンジニアand研究者にお知らせを届けるのは得意なので、機会があったら混ぜてもらえればうれしいですね。

(むかーし作った、交流会の雰囲気を伝えるチラシ。今回もだいぶ役に立ったきがします。)

3年後を見越してまたつよつよノートPCを買った

 さて、これに連なるアクションですが、ちょうど、東京滞在中にブラックフライデー→サイバーマンデーのセールが重なっており、その間ひたすらPCの情報を見比べていました。先ほど(12/1)、グラボ・メモリ・ストレージ共に良さそうなPCが見つかったので購入しました。
 多分体験会の自主開催などのため強いPCを必要とする生活をあと2年くらいはやってるんじゃないかということで、その時も十分動く出張デモ用母艦を一台増やしました。ちゃんとうちに届くといいんですけどw
 自分でもさわれて他の人にも触らせながら説明できる、というのが普及期のお知らせ係の理想だと思っているので、チャンスがまとまっている時は活かしていきたいですね。よく言われる「体験しないとわからない」は本当です。試行錯誤は続いていきます。

以上、前編のガジェット編でした。後編は人に会ったお話を予定しています。
(2021/12/2 240min 6104字 第一稿)

-ささやかな宣伝-
今年の #DevRelJP アドベントカレンダーに参加予定です。
技術を広める系の活動に興味のある方はこちらも参考になさってください('ω')ノ


-後編を公開しました-