英放送制度見直しについての白書

Executive Summary仮訳(というか理解のための急訳、内容保証せず。
太字部分が個人的に関心、その他の部分はよく理解していないところも)

 英国のクリエーティブな経済は世界的な成功物語である。そして我が公共サービス放送事業者がその担い手である。彼らは英国で、そして世界中で愛される英国的コンテンツを作っている。政府はそれが継続することを求めている。

 ラジオとテレビが、英国において重要な公的な価値をもたらす強く価値のあるメディアであり続けている。人口の89%が毎週ラジオを聴いている。この数字は過去10年全く変わっていない。2022年3月における1日のリニアテレビ視聴時間は2時間33分で、視聴者は公共放送サービス事業者の信頼できるニュースと高品質なオリジナル番組を視聴し続けている。

 政府はこのことが今後10年間も変わらないと信じている。最近のDigital Radio and Audio Reviewのために用意された将来の聴取予想では今後少なくとも10−15年ラジオが英メディアで中心的な位置を保つということが示されている。今や英成人の半数近くがネット配信ビデオサービスをテレビ番組や映画を見る主な方法と考えるようになっているが、なお1730万世帯がアンテナを使って地上デジタルテレビにアクセスしており、840万世帯が衛星テレビに加入し、390万世帯がケーブルテレビに加入している。

 しかし、我がラジオ・テレビ放送事業者に対する逆風は力を強めている。競争は激化し、視聴者の習慣と技術は変化を続け、グローバルな巨大企業が迫っている。

 そこで政府は、英国にとって最も良い形の規制の枠組を新たな立法により実現し、我が国の公共サービス放送のシステムを支援することを意図する。必要な改革を「compact」(公共サービス放送事業者に与えられる便益と課せられる義務の組み合わせ)にもたらし、公共サービス放送事業者が英国中の視聴者に利益をもたらし続けることを確保しなければならない。

 

 この白書は以下の点についての政府のアクションを述べる。

・テレビ受信料を2年間159ポンドに据え置く。以後はインフレ率に応じて引き上げる。政府はこの措置によって、BBCがその使命と公的な目的を効率的に果たすのに必要な資金をもたらし、一方で困難な時期にある家計を支えることができると信じる。

 

・BBCの資本へのアクセスと意欲的な成長プランに投資することを支援するため、BBCの商業的な借入限度を3億5千万ポンドから7億5千万ポンドに引き上げる。適当な監視メカニズムについて合意することを条件とする。

 

・Channel4の所有者の変更を実現する。それによりChannel4が、より広い英国の公共サービス放送エコロージーの中で今後何年にもわたり繁栄し、インパクトを強め続けることを確実にする。Channel4は、他のすでに民間に所有され成功を納めている公共サービス放送事業者ーITV、STV、Channel5ー同様に公共サービス放送事業者であり続ける。

 

・テレビの公共サービス義務に加えることで、英国の土着の地方言語、少数言語により放送される番組の重要性を法律に明記する。地方言語、少数言語による放送は、英国の放送エコロジーの中で重要な役割があると信じる。その言語の話者に親しみのある言語のコンテンツへのアクセスの機会を与えるだけでなく、英国中のコミュニティに文化的表現の機会を与えることになるだろう。

 

・S4C(ウェールズ向け公共放送)の公共サービス義務にインターネット配信サービスを加える。また現在の放送の地域限定を廃止する。これによりS4Cは、リーチを広げ、コンテンツを英国全体、さらに英国を超えて様々なプラットフォームに提供できるようになる。またBBCが一定時間のテレビ番組をS4Cに提供することを求める現在の硬直した枠組を、変化する放送環境や人々のコンテンツへのアクセスの方法にふさわしい別の枠組に両者が合意する形に改めるよう立法措置をとる。

 

時代遅れの重複のある14の公共サービス放送事業者のpurposesやobjectivesを新しい短いものに改正する。彼らでなければできないこと、実現されなければ我が国を文化的、経済的、民主主義的に貧しくすることに焦点を当てる。公共サービス放送事業者はこれらの義務を果たさなければならないことを明確にし、また貢献の度合いについて責任を明らかにさせる。

 

・義務を果たす方法については、公共サービス放送事業者に大きな自由度を与える。介入が必要な場合の効果的な権限も確保しておく。これにより、より幅広い無料のプラットフォームにコンテンツを提供することができるようになるだろう。

 

オンデマンドテレビに新たに「目立たせる」制度を導入する。これにより指定されたテレビのプラットフォームで公共サービスコンテンツが視聴でき、見つけやすくなるだろう。STV(スコットランドの民放)とS4Cの製作した公共サービスコンテンツが英国の特定の地域で特別の重要性を持つことも適切に配慮する。新たなオンデマンドサービスの「目立たさせる」制度は、比例的、柔軟なものとする。すなわち、不必要な負担をもたらさず、視聴者の選択や経験に否定的に働かず、市場の違いや、時間による変化に対応できるものとする。Ofcomは新たに必要な規制権限を与えられる。

 

・ローカルテレビマルチプレックス免許の有効期間を2034年まで延長できるようローカルテレビ免許制度に変更を加える。全国地上デジタルマルチプレックスに適用されるのと同様の条件を適用する。同時に個々のローカルテレビサービスの免許更新または再免許についてのオプションについて検討する。

 

・英国の番組取引制度を守る。同時に技術と公共サービス放送のを視聴者のコンテンツ視聴方法の変化を反映する現行化も行う。この制度をBBCの番組を制作するラジオ・音声番組制作者にも適用する必要があるか検討する。

 

現在英国で規制の対象になっていない大手のテレビ同様のサービスを提供するVOD事業者をOfcomの規制下におく。またテレビのようなコンテンツに視聴者の視聴方法の如何を問わずテレビ類似の基準が適用されるよう、放送コードに類似した新たなVODコードを作定し適用する権限をOfcomに与える。これにより、英視聴者は有害なコンテンツから一層守られ、懸念する内容があればOfcomに苦情を申し立てやすくなる。言論の自由と比例の原則により、英国のより小規模でリスクの低いオンデマンドサービスは引き続き現在のルールの下におかれる。

 

規制を受けないインターネットによるサービスが英国のテレビ受像機で視聴できる抜け道をふさぐため規制された電子番組ガイドを追加指定する。このガイドに掲載されるインターネットにより提供されるサービスはOfcomの規制下におかれることになる。この領域でのOfcomの情報収集と執行の権限を常に見直していく。

 

(中長期の課題)

政府は、英国の放送の中長期の課題も強く認識している。この白書では英国の放送の将来についてのビジョンと政府がそれをどのように実現するか、という考えを示している。

 

次のチャーター期間を前にBBCの受信料による資金調達モデルの見直しを行う。今後数か月のうちに詳細な見直しの計画を明らかにする。BBCチャーターの中期レビューを補足するものとなる。 

注:本文2.3 BBC Funding Reviewで、受信料の持続性に強く疑問を呈す。1)ネット配信サービスで受信料支払いを必要としないサービスの利用者が増えると、受信料を支払い続ける人の負担が増す。2)罰則で担保されているが、近代的公共サービス放送システムとしてバランスを失し、不公正。3)75歳以上の有料化で高齢者が罰則の対象となるケースの増加が予想され、2019年には不支払いで有罪となった者の74%が女性(!)。

 

・アイルランド島における越境放送を支援するとの長期的なコミットメントを支持するし、2012年以来RTEとTG4(いずれもアイルランドのテレビ局)を搭載する北アイルランドの地上デジタルテレビマルチプレックスへの資金提供を継続する。また、どの範囲で地方言語及び少数言語の放送サービスを「目立たせる」かについて検討する。

 

クオータ制度に「明確に英国的」なコンテンツの重要性を直接的に織り込むか検討する。英国の各地の生活と関心事を反映した番組を含むということをはっきりさせておく。立法に当たっては、バランスがとれたものであることを十分考慮し、英国の視聴者のためにしか作られなかったであろうコンテンツの制作が継続されることを確保するとの目的の実現を図る。

 

・「リスト掲載イベント」の制度を公共サービス放送事業者だけの特典であることを明確にすることをめざす。既に彼らは「明確に英国的」で英国の視聴者が関心を持つコンテンツの放送で重要な役割を果たしており、現在の「リスト掲載イベント」はすべて公共サービス放送事業者が放送している。「リスト掲載イベント」の制度をインターネットによる配信権にも適用すべきか検討する。

 

・競争的資金パイロットの評価を実施する。競争的資金モデルが、英国で制作され、視聴者のニーズに答える公共サービスコンテンツの幅と量に長期的に追加的な価値を加えることができるかを実績をもとに詳細に検討する。

 

・「独立制作事業者」の資格に売上の上限を導入するかについて見直しを開始する。この資格がこの分野の成長を促進するための効果的なきっかけであり続けるようにするため。

 

・クリエーティブ分野減税により高いスキルをもちイノベーティブなクリエーティブ産業の支援を継続する。最近の調査は、1ポンドの高品質テレビ減税ごとに6.44ポンドのリターンがあるとの驚くべき効果があることを示している。この減税の支援を受けた制作は2017年の12億ポンドから2021年の41億ドルに増加している。

 

・7つ(各ネーション1つを含む)の地方制作ハブと英国各地のスタジオの発展を促進するため英国映画委員会を支援する。各地方には既にどの産業よりも創造面、商業面で優れた人材が存在しており、それを活用していかなければならない。

 

・2023年初めにコミュニティラジオの育成をはかるための提案を検討する。必要があれば、2004年のコミュティラジオ令の改正により免許要件の変更を行う。政府は合わせて2017年のラジオ規制緩和についての調査の結論を実現するための立法を議会の時間が取れるときに行うことに引き続きコミットする。

 

・幅広い広告エコシステムを変えることにより英国の放送事業者を支援するための方法を探求する。例えばOnline Advertising Programにより、説明責任や透明性を改善する方法を検討し、いかにプラットフォームの責任など放送とインターネットの広告の競争条件をそろえるかについて検討するつもりである。

 

・英国の通商政策が英国の視聴覚政策の枠組を補足し保護することを確保する。越境テレビに関する欧州評議会条約締約国の地位を維持し、英国作品のヨーロッパ作品としての地位を守る。これにより引き続きヨーロッパ各国の文化的な豊かさへの貢献を続け、近隣各国と協力し,ヨーロッパ各国に文化的に重要な作品の提供を行うことができる。

 

・デジタル市場についての新たな競争促進のための枠組を設立する。これにより英国中により活気のあるイノベーティブなデジタル経済をもたらし、現在の競争政策やOfcomのような分野ごとの規制機関の持つ規制権限を補完する。

 

・Ofcomとともに放送とオンデマンドサービスの間のアクセスサービスの提供の格差について検討を行い、立法措置の提案を作成する。法律が明確でバランスが取れ、目的に合致したものとなるよう関係者と協議を行う。

 

・2034年までのDTTマルチプレックス免許の長期の更新を可能にする。さらに政府はOfcomに対し地上デジタルテレビの視聴状況の変化を引き続きフォーローし、2025年末までにコンテンツ配信の将来に影響のあるような市場の変化について初期レビューを行うよう指示する。

 

・ラジオが将来にわたって聴取者にリーチできる最良の制度を実現するためラジオ業界との接触を強化するとともに、スマートスピーカープラットフォームの戦略と実態についての理解を深める。

 

野心的な政策プログラムは実現に時間がかかる。しかし、英国が活気があり成功を収める放送のエコシステムを享受するためには不可欠なものである。

Broadcasting reforms to create new golden age of British TV and help nation’s public service broadcasters thrive - GOV.UK (www.gov.uk)

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