終わりなき旅のはじまり第2章⑥
2011年3月11日、時刻は14時46分、突然グラッと揺れたかと思ったら、立ってられないほどの衝撃がやってきた。
ホールから厨房に入ろうとした時だった。ガス止めろ!と咄嗟に叫んだその直後、厨房のありとあらゆるものが倒壊し、グラスやお皿が割れる音が鳴り響いた。
両手で棚を押さえながら、ヤバい、ヤバいと呟いてたのを覚えてる。
ホールを見渡すと、食事をされてた何組かのお客さんが自発的にテーブルの下に潜り込んでるのが見えた。
出来たばかりの海外へ行く飛行機が飛び交う空の玄関は天井が激しく揺れて今でも崩れ落ちそうな恐怖を感じた。
何が起きたのか、何処がどうなってるか全く分からない状況で、周りを落ち着かせるとともに、自分も落ち着こうと深呼吸をしたのを今でも覚えてる。
東北地方で大きな地震があったらしい。
その情報だけが入ってきた。
空の玄関を繋ぐ電車は全て止まっていて、滞留者は1万人ほど、待つこと1時間、会社から出てきた指示は「厨房を修復して滞留者1万人に食事を提供しろ」だった。
倒壊した厨房を修復し終わったのが午後7時頃、ご飯を炊き、おにぎりと味噌汁を作る。
夜9時になると空の玄関内にあるコンビニは空っぽになっていて何も売ってなかった。
午後10時、場内アナウンスと共に、食を求めてお客さんが行列となり並び始めた。
ありがとう、ありがとうと言ってくれる言葉が何よりの励みになり、交代で休憩をとりながら朝の10時を迎えた。
僕は仮眠をとり電車が動くのを待った。
1日置いて帰宅、家族の無事を確認出来たこと、そしてその時初めて東北の状況をテレビで見ることになる。
10年目の今日の14時46分、場内アナウンスが流れ、空の玄関では10回目の黙祷が行われた。
卒業シーズンということもあり若い人々が沢山いたけど、和気あいあいと旅に出る楽しみで盛り上がる中、ふと足を止め、皆黙祷してる姿を見て、日本はきっとまだまだ大丈夫だなと思った、そんな1日だった。