殺人は舞踏会にて.1
集合
毒
声
帰宅
1. 集合
8人。皆、説明が始まるのを待っている。早朝特有の真っ白な清々しさは皆無。静寂の中、重苦しい雰囲気が倉庫中に広がっている。
ベテランの男が「前みたいな失敗は許されない。特にあの女だけは…」と横にいる知り合いらしきメンバーに告げていた。その台詞を言うベテランは眉間の皺をより一層深くして小刻みに震えていた。ベテランの言う女はメンバーの中にはいない。前回のゲームで、女によってメンバーが殺られたのか。或いは先にターゲットを仕留められたのか。そんな推測が皆の頭によぎった。
俺は怖くて、とりあえず下を向いていた。
6:15。倉庫の出入り口が軽々しく開く。紳士風の男が入ってきた。
「えー、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。本日のご依頼は舞踏大会の賞金を盗んでいただくことです。その賞金は総額1,000万円。この場に8名の方々がいらっしゃいますので、1人につき100万円を報酬としてお渡しし、200万円は私共の取り分とさせていただきたいです。」
(盗むだけならそれほど難しくはない。問題は他にも狙ってる連中がいるかどうか…)
「武器は何を使用しても構いません。銃やナイフ、金属バットなど。なんでも構いません。」
(えー、こーわ。俺そういう経験ないからなー。人の弱点とかよくわかんねぇし、そもそも武器なんか持ってねぇわ。)
「期限は本日の舞踏大会終了の20時までとなります。また、今朝入った情報によりますとオレンジ色のジャケットを着た連中が同じように賞金を狙っているそうです。どうか彼らよりも先に賞金を手にしていただきたいです。以上。」
(ほらいるじゃん。他にも…。怖いから隙を見て逃げよっと。死にたくないもん。)
紳士風の男は再び軽々しく倉庫の扉を開けて出て行った。
俺以外の7人はやる気に満ちているのがわかった。これを殺気というのか、危ないオーラというのか。
とにかく冷たくて硬い、さらには酷く乾いているような。そんな非常識な反社会だった。
さて、どうやって逃げようかな。顔を上げて出入り口を見ると、親友のマサトがいた。アイツも俺に気がついた。
マサトとは中学と高校の時によく遊んだ。市民プールに遊びに行くときは俺の家の前まで海パン一丁で現れたり、高速で走っている自転車のサドルに乗って仮面ライダーの真似をしたりしているような、そんなヤツだ。その後自転車から落ちて、その日の記憶を飛ばしてしまったらしい。
高校では一緒に軽音学部に入り、一緒にバンドもしていた。
当然のようにマサトは俺の前に来て
「なんでお前がいんのー!?」
(いや、こっちが聞きてぇわ笑。)
昔の思い出話や高校の時に組んでいたバンドの話や、最近付き合ってる女性関係の話などで会話が弾んだ。
俺はこのゲームもコイツと組むと決めた。
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