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昔の風景《45》外出自粛でも旅の気分

休日でも旅のできない昨今なので、昨秋に手に入れたフィルムスキャナーでネガやポジフィルムをデジタル化しています。私の場合は2001年まではフィルムを使っていました。フィルムは36枚撮りで1本。旅の目的や長さで、フィルム本数と感度を決めます。36枚の写真を撮るだけのフィルム1本でも結構かさばります。今のSDカードに1,000枚以上入るとして、36枚だけのための体積は何十倍にもなります。

そのフィルムをスキャナーで1枚1枚デジタル化します。退色は多少コンピューターで補正できますが、フィルムに付いた傷やホコリも一緒にデータ化されてしまいます。そしてそれ以上に困るのは、写真フィルムは合成樹脂のベースに化学薬品を塗布したものなので劣化が進みます。製造時期により使用材料が違いますが、酢酸によるビネガーシンドロームが現れ、フィルムが歪んだり丸まってしまったりするものも出てきます。再生不能になるものもあり、私の場合も多少発生しています。

とはいえ、1コマに3分くらいずつかかるスキャニングからパソコンの画面に現れる昔見た景色には感動を覚えます。かつて一度だけ旅したモロッコやバルセロナの数少ない写真を見て思うのは、その後自分と同じだけ年月を数えてこの景色は変わっているのだろうか、と。何回も行っている香港も変化がどんどん進んでいてもう見られないビルやフェリー、もはや無くなってしまった日本国有鉄道の古くて茶色の急行列車。ああ、こんな場所だったんだ、これは今ではもう大きく変わってしまっているなあ、などとひとり呟きながらの作業は楽しくもあります。

フィルムは高価でかさばるため、1枚シャッターを切るにも慎重でしたし、1日に10枚くらいしか撮らないこともよくありました。そんな時期の写真を再生していると、1枚ずつの時間間隔が今よりずっと長く、旅時間の空白があるのです。でも、そういった写真を見ていると不思議と旅の流れが思い出せて、脳のメモリーが記憶していたものが甦る気がします。

#いま自分にできること #写真フィルム #外出自粛

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