刑訴法②警察24時じゃなく48!

前回は刑訴法の大枠で終わってしまったのでここからがいよいよ本題です。

まず前回、刑訴法のステージとして、①警察官が逮捕する、②検察官が訴える(起訴)、③裁判所で裁判、という3つがあるとしました。このうち①を今回はとりあげます。

①警察官による逮捕

逮捕とは犯人の身体を拘束することで、刑罰に懲役(ちょうえき)があることからも分かるように、人の身体の自由を奪うのは人権侵害のなかでもかなり重大です。そこで逮捕には原則として裁判所の発行する令状(許可状)が必要で、これが「通常逮捕」(刑訴法199条1項)というものです。警察が令状をもらうには逮捕の理由と必要性がなければならず、理由とは「犯罪をしたっぽい」という疑いのあることなど、必要性とは逃亡や証拠隠滅のおそれがあることなど、逮捕しなければ不都合だという事情がこれに当たります。

なお令状というのは「逮捕令状」のほかに「差押え令状」などもありますが、実はここにはあの「三権分立」があらわれているのです。すなわち、内閣をトップに置く「行政」が警察を指揮していますが、その国家権力が暴走しないように「司法」を担う裁判所が令状の発行権限をもつことでバランスをとっているのです。この構図は刑訴法を理解する上で結構重要な前提となっていきます。

さて便宜上、逮捕についてから話し始めましたが、逮捕に踏み切るまでにはまさに容疑がシロからクロへとグレーが濃くなっていくように、事実が発覚するにつれて容疑が強まったり弱まったりという段階があります。この時の活動がいわゆる「捜査」です。聞き込みや証拠集めなどでウラをとり、一定程度に容疑が高まった場合に逮捕に至ります。また不審者を立ち止まらせる「職務質問」などもその1つです。

例外的に事前の捜査を必要としない逮捕もあります。それが「現行犯逮捕」で、犯罪が行われたこと、そいつが犯人であることが明らかであって誤認逮捕の疑いがないというのがその理由です。そして「現行犯人は、何人(なんぴと)でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」(213条)と規定されている通り、この逮捕は一般市民が行うことも可能なのです(但し、その場合には速やかに警察官に引き渡す)。

さて、逮捕が実行されたあとはどうなるのか。

よくドラマなどでも逮捕時に刑事さんらが腕時計を見て時間を確認するシーンがあったりします。実は、逮捕の時から「48時間」以内に、次の手続きに移らなければならないのです。その1つが「送検」といい、検察官に引き継ぐというものです。これが基本で、あまりにも軽微な犯罪の時は警察の厳重注意だけで帰す「微罪(びざい)処分」という方法もあります。いずれにしても、この時間を超えて警察の元に犯人を引き留めておくことはできないのです。

そしてこの時間制限の厳しいルールのもとで実務で活用されているのが「任意同行」というものです。強制的に身柄をおさえる逮捕と違い、「あくまで」自由意思で警察に協力しているというタテマエなので、任意の間はこのタイマーが進まず、何時間でも話を聞くことが可能です。もちろん、これが悪用され、度を越せば、実質的に逮捕だろうと評価されることもあります。

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