心を交えるのは…『まいまいつぶろ』著者:村木嵐 さん
こちらの作品は
直木賞候補作、日本歴史時代作家協会賞作品賞等を受賞の歴史小説です。
私はあまり歴史小説は手に取らないのですが、作名の『まいまいつぶろ』が気になりすぎて購入に至りました。
第九代将軍・徳川家重を描いている内容なんですが、恥ずかしながらほぼ知らなかった私...
先代の八代将軍は時代劇ドラマ「暴れん坊将軍」で有名なので辛うじて知っていますが、その他はあまり知りません。
作中に吉宗が出てくるのですが、松平健さんが白馬に乗って浜辺を走る情景が頭の中でぐ~るぐる(笑)最後まで松平さんが登場していました。
口がまわらず、誰にも言葉が届かない家重。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれた君主がいた。ただ一人彼の言葉を理解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫。廃嫡を噂されていた若君が如何にして将軍になったのか、という内容です。
作品の中には沢山の美しい表現がありました。兵庫の遠縁の叔父に「私とそなたは、もはや死なば諸共ではないか。...」こんなことを言われたら、とても心強く嬉しいけれど、もう自分ひとりの人生ではなくなる凄く重い言葉です。将軍に仕えるということはもの凄く重いものなんだということが分かります。
家重の正室、比宮とのやりとりも初めはぎくしゃくしながらも、哀しい別れがあるとはいえ、言葉でなくとも真心で二人が心を交える場面など、涙なくしては読めませんでした。
そして何より、小姓・忠光(兵庫)と家重との掛け合い。作中では「ーーー」と表現される言葉。忠光が口にしている言葉が、将軍の本当の言葉なのか、それは最後の最後まで周囲に疑われる。忠光がいなければ家重は将軍にはなっていない。まさに運命の二人。
二人が別れる場面では、もう涙が出すぎて嗚咽してしまいました。ここにはその表現は書きませんが、是非作品を読んで号泣してみてください。
一つ難点を申しますと、やはり漢字、名前の読みが難しいです。歴史小説に慣れていないので、いちいち引っかかってしまい進みませんでした。それでも漢字の勉強にはなりましたけれどね。
読了するとあまり読み返すことをしない私ですが、この作品は手元に置いて、何度も読み返そうかと思っています。
これは映画化などされるのでは?と思っています。上映されれば絶対に見に行きますよ~!!
キャストは誰がいいかなぁ~と想像しながら本を閉じました。
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