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花ざかりの校庭 第14回『白い手』

【梗概】
震災で母を失った麻里。彼女の名古屋での暮らしは進学を境にして終わりをつげる。
義理の母との確執……。
それは微妙に彼女が愛している田畑との関係に影響していた。
しかし、彼には浅子という恋人がいた。

麻里は岡倉があまりに身近だったので、かえって分からなかった。

ふいに、それまで流れていた音楽が聴こえなくなった。

しおんはベランダからその部屋を見た。

「やっぱ、さっきの声、大きすぎ」

しおんは言った。

麻里は少し赤くなっていた。

ピンク色のカーテンの隙間から、ブックシェリフが見えた。

教科書みたいだ。

白い手がカーテンの裾を引いた。

驚いたのだろう。

「医学生かな、あの人……」

「音楽流してた人?」

しおんは麻里をみていた。

麻里は頷いた。

バーキンの彼女だ。


       ★


新学期が始まって、少ししたとき麻里に父から電話が入った。

「……どうだ?」

麻里は返答に困った。

だいたい、うちのオヤジは大雑把すぎる。

実直な感想である。

「わたし、寝袋で寝てたからさ」

麻里は抗議した。

「ああ、布団送っとくわ。ただ、食事ぐらいは自分でつくれよ」

「わかってますよ」

「今週の土曜日に京都に来てほしいんだ」

やれやれ、今度は京都ですか。

麻里は皮肉っぽい気分で言った。

「会わせたい人がいてな」

「知り合い?」

「静岡県民会の副会長の人だよ」

麻里は怪訝な顔になっていた。

「俺の会社のクライアントでさ、とにかく面白い女性だ」

「彼女?」

「残念なことにそうじゃない」

「意味がわからないわ」

「新幹線のチケットは送ったから、それで来てくれ」

静岡県民会と自分がどういう関係があるのか、わからなかったがとにかくまた、旅支度を整えた。


       ★


翌日、麻里は放課後、部室に行った。

エンテツの探険部である。

探険部というのは日陰者の集まりである。

これはエンテツと彼女が実感した事実である。

探険という二文字が抽象的すぎる。

何を探険するのか?

実はなんでもテーマになるのが探険なのだ。


すでにエンテツは丸い背中をみせて、パソコンを睨み付けていた。

「ねえ」

麻里はエンテツの背中を叩いた。

一瞬、感電したように彼は背中をのけ反らした。

「なに?」

「福山くん、冷蔵庫とか余ってないかな?」

エンテツはメガネをフレームを指でずり上げた。

「ここに持ってくるのか?岡倉さんうるさいぞ。とりあえず学校の敷地内だから」

「違う、わたしにくれないかな」

エンテツは意外な顔をした。

「ないことはないけど」

「あるわけよね?」

麻里はスポンジが少しはみ出している部室のソファーに腰かけた。

そして、微笑んでいた。

「何かんがえてるわけ?」と、エンテツ。

「家を出たの」

麻里は言う。

麻里は岡倉があまりに身近だったので、かえって分からなかった。

ふいに、それまで流れていた音楽が聴こえなくなった。

しおんはベランダからその部屋を見た。

「やっぱ、さっきの声、大きすぎ」

しおんは言った。

麻里は少し赤くなっていた。

ピンク色のカーテンの隙間から、ブックシェリフが見えた。

教科書みたいだ。

白い手がカーテンの裾を引いた。

驚いたのだろう。

「医学生かな、あの人……」

「音楽流してた人?」

しおんは麻里をみていた。

麻里は頷いた。

バーキンの彼女だ。


       ★


新学期が始まって、少ししたとき麻里に父から電話が入った。

「……どうだ?」

麻里は返答に困った。

だいたい、うちのオヤジは大雑把すぎる。

実直な感想である。

「わたし、寝袋で寝てたからさ」

麻里は抗議した。

「ああ、布団送っとくわ。ただ、食事ぐらいは自分でつくれよ」

「わかってますよ」

「今週の土曜日に京都に来てほしいんだ」

やれやれ、今度は京都ですか。

麻里は皮肉っぽい気分で言った。

「会わせたい人がいてな」

「知り合い?」

「静岡県民会の副会長の人だよ」

麻里は怪訝な顔になっていた。

「俺の会社のクライアントでさ、とにかく面白い女性だ」

「彼女?」

「残念なことにそうじゃない」

「意味がわからないわ」

「新幹線のチケットは送ったから、それで来てくれ」

静岡県民会と自分がどういう関係があるのか、わからなかったがとにかくまた、旅支度を整えた。


       ★


翌日、麻里は放課後、部室に行った。

エンテツの探険部である。

探険部というのは日陰者の集まりである。

これはエンテツと彼女が実感した事実である。

探険という二文字が抽象的すぎる。

何を探険するのか?

実はなんでもテーマになるのが探険なのだ。


すでにエンテツは丸い背中をみせて、パソコンを睨み付けていた。

「ねえ」

麻里はエンテツの背中を叩いた。

一瞬、感電したように彼は背中をのけ反らした。

「なに?」

「福山くん、冷蔵庫とか余ってないかな?」

エンテツはメガネをフレームを指でずり上げた。

「ここに持ってくるのか?岡倉さんうるさいぞ。とりあえず学校の敷地内だから」

「違う、わたしにくれないかな」

エンテツは意外な顔をした。

「ないことはないけど」

「あるわけよね?」

麻里はスポンジが少しはみ出している部室のソファーに腰かけた。

そして、微笑んでいた。

「何かんがえてるわけ?」と、エンテツ。

「家を出たの」

麻里は言う。

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