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02 リオに到着

背中のほうから常時、大量の空気が金属の機体を擦る音がしています。床の下では、ゴウゴウと水が流れるような音、機体はゴトゴトと常時揺れて、こんな状態が8時間も続いていると、飛んでいるというよりは、空中に浮かんでいるだけという気がしてくるものです。
高度は1万メートル。機内では映画が上映されているので、窓のブラインドを下ろしていました。
「ご搭乗の皆様、お疲れさまでございました、当機は現在リオデジャネイロ国際空港まで、あと20分のところを飛行しております。当機はこれから徐々に高度を下げてまいります」
ブラインドを上げると、明るい光が眼を刺し、下界には緑の山がでこぼこに広がっています。ブラジルの大地はこのようなジャングルがまだまだ広大です。そのほんの一部に人が定着し、ジャングルが開拓されていくのですね。
しばらく緑の深い山の上を飛びながらも高度は下がります。
高度が下がるにつれて、耳が塞がる。唾を飲むと聴覚が戻り、しばらくするとまた耳が塞がるので、唾を飲む。この繰り返しをしているうちに、平地が広がり始め、街が眼下に姿を現しました。
これがリオ、まだ実感は湧きません。
飛行機は北から降りてくる。窓に顔を近づけてみると、遠くに山の稜線が見える。まだか……。その稜線を眼で辿ります。
まだ、まだ。顔をさらに窓に寄せて、ずーっと前方を見やると、見えたっ!切り立った山の頂上に、小さな鉛筆のような黒い影、あぁ、あれがコルコバード、キリストに見守られた街、リオデジャネイロ。

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これから先は、シュガーローフが視界に入り、乱雑な街のビル群が迫り、あとはもうあわただしい着陸を待つばかり。ここまでがリオデジャネイロ空港に降りるまでの興奮の一刻です。
リオデジャネイロ空港は、Antonio Carlos Jobim 空港と名づけられています。空港ロビーには、このブラジルを代表するボサノバ・サンバの音楽家の銘板があり、リオに対する思慕のことばが彫られています。
ジョビンについては稿を改めますが、ここでは、"Song of Jet"という曲があることを記しておきましょう。ブラジルの航空会社であるバリグ航空がテレビ・コマーシャル用としてジョビンに作曲を依頼したものですが、飛行機がこの空港へ下りていく様子を歌った名曲です。


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