「岩大数物→東北大応物」 院試体験


はじめに

私は岩手大学数理物理コースの2期生で、現在大学院で博士課程にいます。情報は古いかもしれませんが、何かのお役に立てればと思います。「です・ます」が混同していますが、悪しからず。
私の頃は数物から応物に行こうとした先輩がいなくて、情報が全くなく、本当に苦労しました。だから体験記というより苦労譚に近いと思います。
当時相談に乗ってくれた先輩方、サマチャレや数物の同期、ゼミの仲間たちには一生感謝してます。

ゼミを始めたきっかけ

学部1年の頃から大学院進学を考えていたが、学部2年の時に筑波大学への編入試験で失敗したことがあったので、どうやって受験勉強すればいいか、何から始めたらいいかわからなくて悩んでいた。そこで、高エネルギー加速器研究所(KEK)に合宿(サマーチャレンジ2019)に行って他大学の学生と交流して取材することにした。

サマチャレでは、本当に物理が好きで研究が面白いと思える人たちがたくさんいて、宿舎でも学生が毎晩遅くまで物理について議論していた。その様子を見て、普段自分が物理について議論をしたことも熱く語ったこともなかったことに気づかされた。そして、もっとも研究者に必要な要素は学問に対する好奇心なのだと痛感した。

それをきっかけに、普段から物理や数学を議論する場を作って、思考量を増やし、知識の熟成に努めない限り、院試で勝つことができないと思うようになった。そこで実験や合宿などを通して外部入試を希望する仲間を探して、院試ゼミを始めた。

読み方
① 時期
② 勉強内容
③ 教材(正確な書籍名ではないが)
④ その時期の進め方

手探り期

最初は、ゼミのやり方もわからなかったので、とりあえず、東北大学応用物理学コースのホームページを見て履修内容を比較したり、授業で扱わなかった内容を勉強したりすることで、院試に必要な知識を補充していくことにした。とにかく僕たちには時間が足りなかった。そこで、過去問を研究する院試対策ゼミと、教科書を自分たちで買って授業外の内容を読み進めていく物理ゼミを融合して、物理を勉強しながら院試対策をするゼミを目指した。

1
① 2019年11月
② 力学;二体問題、剛体
③ マセマ力学、マセマ力学演習、サイエンス社 演習力学
④ 足りてない所をリストアップして順番に潰していくことにした。まだ手探りだったが、年末までに終わらせられそうな分野だと思って、力学から進めることにした。

2
① 2020年1月
② 解析力学;ラグランジアン、ハミルトニアンなど
③ 物理数学演習2の演習問題(数理物理3年後期履修科目、N崎先生担当分)、マセマ 解析力学
④ 授業の課題だったが、一応院試に出るので理解しておこうと思った。

3
① 2020年1~3月
② 熱力学;分配関数、速度分布など、熱力学第2、第3法則、熱力学的関数
③ 熱力学の講義資料(N山先生)、統計物理学の講義資料(N西先生)、授業で使った教科書、マセマ熱力学
④ この頃はまだ、授業資料を復習していれば院試の問題にも対応できると考えていた。熱・統計力学を最も早く理解するなら、授業の復習がいいと考えていた。

4ヶ月計画期

3月末に東北大某A研(当時)の先輩方から、過去問・授業資料・演習問題をたくさんいただいた。そこをきっかけに、方針を転換した。東北大では講義と演習の二種類の授業があって、それぞれに講義資料がある。この資料を使って統計力学、量子力学、電磁気学をマスターして、残り1〜2ヵ月を院試の過去問に当てることができれば、十分に院試対策が可能と判断した。そこで「1ヶ月で1科目」を目標に設定した。また、各科目の演習問題をできるかぎり全て解きたかったので、毎週の進度を設定して各自解いてくることにした。これまでゼミでは教科書の内容や問題の解き方を説明する、という定番なやり方だったが、これでは時間が足りない。そこで、不明点や気づいた点だけを持ち込んで議論するやり方に変更した。また、逐一過去問と照らし合わせて、院試に必要な内容なのか、飛ばしてもいい内容なのか、毎週話し合って調整した。

4.
① 2020年3月末~4月
② 統計力学;量子統計、古典統計、フェルミ、ボーズアインシュタイン凝縮
③ 統計力学演習の資料、田崎統計力学1,2、久保統計力学演習
④ これまで熱力学をやっていたので、統計力学から始めた。ゴールデンウィークを目標に演習を進めた。とりあえずボーズアインシュタイン凝縮まで。4月末に一度、みんなで院試の過去問を解いたことがあったが、みんな解けるようになっていた。そこでようやく実力と自信がついたので、岩大で習ったことは一旦置いておいて、一から勉強する気持ちで進めた。

5.
① 2020年5月〜6月上旬
② 量子力学;1次元〜摂動まで、一部飛ばした。
③ 量子力学演習の資料、量子力学1,2講義資料、KS量子力学、小出量子力学
④ 時間がかかりそうだったので、電磁気学より先に始めた。院試で摂動が出題されるので、とりあえず「時間に依存しない摂動」までやっておいた。

6.
① 2020年6月上旬〜7月上旬
② 電磁気学1 ; 電気、磁気(磁性体、ルジャンドル多項式、マックスウェルの応力、自発分極を除く)
③ 電磁気学1の講義資料と演習問題
④ 磁気まで総復習した。多重極展開、鏡像法、ポインティングベクトルなど習ってない分野も補充。

7.
① 2020年7月上旬〜下旬
② 電磁気学2;電磁波(自由空間中、プラズマ中、誘電体中、導体中)
③ 電磁気学2の講義資料と演習問題、砂川電磁気学
④ この年から電磁気学の範囲に電磁波が追加されたので、電磁気1を早めに切り上げて電磁気2に移り、8月中は院試の直前対策ができるように、7月中に終わらせることにした。とにかく残り時間が少なかったし、対策の方法もわからなかったので、とりあえず、期末試験の過去問と演習問題を繰り返し復習することにした。磁性体中・導波管内の電磁波の伝搬はやらないことにした。

8.
① 2020年8月〜本番前日
② 今までの復習
③ 院試過去問、詳解電磁気学、久保統統計力学演習、小出量子力学演習
④ 初見の問題を時間内に解く訓練を毎日やった。時間内に解けなくても、問題を理解して、もう一度解くときに見ないでできるようにした。

院試本番

・教室に受験者30~40人くらい。僕は2回ほど東北大へ研究室訪問に行ってて、応物のB4と会話したことがあったので、そのせいか、応物の学生が僕のことを「満点とるつもりで勉強してる奴がいるぞ」と噂していたらしい。僕としては、みんな優秀だと思って院試対策を入念に取り組んでいた。東北大の学生は院試の1ヶ月くらい前から対策をしていたので、そう思うのも当然だと思う。お互いに「こいつは優秀なんだろうな」と思い込んだ状態だったので、多少緊張感のある試験会場だったと思う。

・全く初見の問題だったので、試験開始直後はとにかく焦った。問題をよく読み込んだら今まで学んだ知識で十分解ける問題だったことに気づいたので、冷静に解くことができた。院試って、どれだけ勉強してきたか、よりも、どれだけ思考力があるか、を問う試験だと思う。学部のうちは初見の問題を解く訓練をしたり、授業の内容をよく復習したり、とにかくたくさん思考するべきだと思う。

・僕の時はコロナのせいもあって、TOEICの提出がなく英語面接があった。卒論でやっている内容の研究目的や実験内容について英語で説明するだけだったので、Google翻訳とか使って作った文章を覚えて、それをそのまま話した。

・研究内容についての質問は特になくて、「なんで応物を選んだのか」「なんでうちの研究室を選んだか」「昨日の筆記試験の出来はどうだったか」など聞かれた。

・当時の院試だと、外部生は科目数が少なくて済んだので早く終わった。だから次の日の英語面接に向けた対策をするのに十分時間があったので、余裕を持って面接ができた。

最後に

大学院に行く理由はなんでもいいと思います。仙台で遊びたい、ロンダリングしたい、いろんな理由があっていいと思います。しかし実際に入ってみると、いつしか「もっと研究したい」と思うようになります。そこが東北大の魅力だと思います。


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