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jumping islanders 35

1.特別な日

"9月21日中秋の名月。

1年でもっとも綺麗な月が見れる夜に

満月が見られるのは8年ぶりだそうです!"

9時過ぎに顔を洗いながら、

女性アナウンサーのキンキンした声で

今日は十五夜だということを知った。

人中に白いニキビ。まばらに伸びた髭。

バイト先のロンTを着て準備を済ませたころ

「昨日は夜遅くまで、ご苦労さん」

鏡越しに父が声をかけてくれた。

どうやら学校に送ってくれるらしい。

急な提案だったが、父と一緒にいる時間は

普段から多くないので、

学校に送ってもらうことにした。

2.無意味

すっかり月曜だと思っていたため、

早く家に帰ってレポートを作るつもりでいた。

しかし、実際は火曜。

研究をしなければならない。

そのことに気づいたころには、

すでに学校からは、遠い場所まで歩いていて

あぁ…という声が漏れた。

到底、研究室に戻るつもりはない。

なんの葛藤もないまま、決断。

今日は研究をサボろう。

レポートも、課題も、テスト勉強もやらないことにした。

やらなきゃいけないことは山積みだけど

今日くらいは忙しい日々から逃げたかった。

3.斜陽

サボるという言葉の語源は

フランス語の”サボタージュ”から

きていることを思い出しながら田んぼ道を歩いていると

無意識のうちに、祖父母の家についていた。

ばあちゃんが入院して

しばらく会えなくなってどれくらいたつんだろ。

“ほれ、100円けぇる。

100円玉ねがら、50円玉2枚。”

人と話すことが好きで

話す内容に大きい意味はなくて

大半の内容は1日どう過ごしたか。

散歩行ったら

綺麗な花を見つけたとか、

じいちゃんとカワチニ行ってアイスを買ってきたとか。

のんびりした暮らしの中で

生きてる。

4 思い返せない出来事だってあるし

小さい頃好きだった

トムとジェリーは事細かく説明できるのに

最近面白いなって思った映画の

主人公の名前さえ思い出せないこともある。

あいつ誰だったっけなっていうやつもいれば

いまだに連絡とる友達もいる。

じいちゃんばあちゃんには

“そんなにバイトしてどうすんなや”って

めっちゃ言われるけど

なんとなく察して

5000円札を握らせてくれたじいちゃんの

ゴツい手はこの先忘れないと思うし。

50円玉を見るたびにばあちゃんを思い出すと思う。

久しぶりあげたnoteが

誰も見なくても、

もう戻らない思い出があったとしても

それでいいと思う。









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