改訂版『事業をエンジニアリングする技術者たち』を読む

一度読んだ本でとても良かったが、昨日改訂版が公開されて、 @Wireworks に献本してもらいまた読んだ。エンジニアリングに関わる人なら誰でも楽しめるし、歯を食いしばって「わかる」と叫びたくなるような本なので全方位におすすめしたい。まだ読んでない人・初版だけ読んだ人向けにおすすめポイントを書いていく。

リアルってやっぱこうだよね。が読める

・大規模なレガシーシステムってリファクタリングすべきだよね
・管理画面っていつかなんとかしなきゃだよね
・新規事業を今の事業を止めずにうまいことスケジュール通りローンチしなきゃだよね

みたいな、よく聞く会話だし、耳にタコができる。夢に見る。こういったトピックに実際に最前線で向き合って解決してきている先人たちの苦悩や泥臭い話が読める。
今の自分がやっていることや、これまでしてきた意思決定に後悔したり悩んで、歩みが遅くなってしまう瞬間もあるのだけれど、同じような課題や状況に向き合い、またその中でも工夫し乗り越えている人たちがいるということだけでも、自分としてはやる気や勇気をもらえる。

この本にはコードの書き方や、実装の話は出てこないけど確実にエンジニアリングの本だ。リアルはコードや実装だけでなくエンジニアとして「在るべし」を常にイメージして、近づけるためにビジネスやテクノロジーと向き合うことはとても大事。組織や一緒に働く人達がどういう人達で、それも含めてどうすればプロダクトをよくできるか・プロジェクトを推進していけるかを登場する皆が考えており、とても読みごたえがある。

変化の中で意思決定がどうされてきたか。が読める

我々が扱うプロダクトやシステムは変化とは切り離せず、外的要因だけでなく時間の経過に寄る「劣化」という変化とも向き合う必要がある。そのためそもそも捨てる判断や、作り直す判断、切り替える判断などを断続的にしていく必要がある。
もちろんこれはCTOやテックリードが裁量を持つことが多いが、メンバーのレベルでも利用していないコードやライブラリなど常に意思決定は日々発生する。これが規模が大きくなるほど、中長期的な意思決定・予算・計画などが発生し複雑化していく中で本書では様々なケースが出てくる。その中で何を考え思い、意思決定して、その結果どうなったか、過程がどうであったかが読めるのはとても貴重。(本来はその場にいないと知れないようなことや、その人と直にそのプロジェクト中に会わないと知れないことだと思う)

改訂版では、さらにその後(現在)のことも補足されており、「事業面」「技術面」のセットで書いていてくれていることから、どちらの事情もセットで常に動くものだと気付かされる。

また事業が変わって起きた課題を解決する新章。が読める

今回より新たに
・7章 テレシー事業の立ち上げ
・8章 Holdings化による基盤統合PJ
の話が上記2つのおすすめポイントも色褪せることなく、生々しい話が読める。

特に8章はバックオフィス、社内システムの経営統合を発端としたシステム統合・アカウント統合の話で、経営統合を効果最大化するために運用や技術をいかにビジネスと統合するかなど、プロジェクトが完遂されること以上をゴールとしつつ、いかにそこを関係者を巻き込みながらすすめるかの苦労・苦悩が読める。@Wireworksから大変大変だと聞いてて、当時はニコニコしながらビール飲んでたけど、相当骨太なことやっていたんだと改めて認識した。おつです。

総じて

壮大な本に見えるようで、話者やインタビューの和田さんの喋り口がとても読み取りやすく書かれており、節々に登場する章でドメイン固有なワードも出てくるけど、しっかり説明も書いてくれているので、サクサク読める。
同じフォーマットでもっと沢山の人読みたいので改訂版どんどん出して欲しい。

ぜひこの週末のお供に

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